歯医者でがんや生活習慣病が見つかる?大人の健康管理と医科歯科連携の現状

大人の予防と生活習慣──個人に合わせた提案の重要性
予防歯科という言葉が広がりつつあるものの、まだ「歯医者はトラブルが起きたら行くところ」という認識を持つ人も少なくないそうです。
子どもの虫歯は、長期的に減少傾向にあると言います。虫歯予防効果のあるフッ素配合の歯磨き粉の普及や予防意識の高まりが影響していると考えられていますが、子どもの予防より大人の予防の方が難しいと横石先生は言います。
「子どもに比べると、長年身体に染み付いた生活習慣がある分、大人の予防歯科に関する意識を変えることは非常に難しいです。ただ、生活習慣を変える必要性を自覚したときには、子どもよりも大人の方が行動変容が早いのも事実です。行動を変えるためのスイッチをどう入れるかが私たち歯科医師の課題だと思っています。」
さらに、大人の場合は生活リズムが人によって異なる点も行動変容を難しくしていると横石先生は言います。そこで、にじいろマイクロスコープセラミック歯科医院では、大人の歯の健康を守るため、患者さんのライフステージやライフスタイルに合わせたアドバイスを行っているそう。
「寝ている間は唾液の量が減るため、細菌の量が増えやすいんです。だから、虫歯や歯周病の予防には夜の歯磨きが重要になります。しかし、夜勤のある人に夜の歯磨きをおすすめしても、寝るのが朝だと重要になるのは朝の歯磨きの方です。これは一つの例ですが、ライフスタイルを把握していないと、的外れなアドバイスになってしまうことになります。そこで当院では、なかなか生活習慣を変えられない人には、これだけはしてほしいということをライフスタイルに合わせて伝えるように工夫しています。」
生活習慣を大きく変えることは難しいものです。しかし、最低限のポイントだけクリアできればよしとするスタイルであればハードルが下がるため、患者さんもアドバイスを受け入れやすくなるのではないでしょうか。
「お口の状態によって、歯医者でメンテナンスを受ける頻度や必要なケアも変わります。大人だからという一律の対応ではなく、一人ひとりの患者さんのライフスタイルや口腔状態に合わせた適切なケアを提供しています。」
お口の状態が良い人であれば、無理に今の習慣を変えさせる必要はないと横石先生は言います。患者さんに合わせた細やかな配慮こそが大人の予防歯科を定着させるポイントなのかもしれません。
歯科で見つかる病気のサイン──ドライマウスは要注意
お口は健康の入り口とも言われるように、口腔環境は全身の健康と密接に関係していることが分かっています。歯周病の原因菌が血管に入り込むと、動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や狭心症のリスクを高める恐れがあります。また、糖尿病と歯周病は相互に悪い影響を及ぼし合う関係であることも分かっています。
歯周病の原因となる細菌は小さく、肉眼で見ることはできません。しかし、お口の中を見るだけで、病気に気付くことがあるそうです。特に横石先生は「口腔乾燥症(ドライマウス)」に注目していると言います。
口腔乾燥症とは、唾液の分泌量が低下して、お口の中が慢性的に乾燥する症状です。
「口腔乾燥症の場合、唾液の自浄作用が働かないために、お口の中がすごく汚れているんです。また、お口の中で細菌が繁殖するため、口臭もきつくなります。もし、口腔乾燥症の症状が見られた場合は、糖尿病など、何らかの病気が隠れている可能性が高いです。」
さらに、自己免疫疾患(膠原病など)は口の中に症状が出やすいことも知られています。唾液の分泌が極端に減少するほか、口内炎や水ぶくれができるケースが多いのです。
歯科だけでは完結しない──専門外は「迷わず送る」

明らかな異常が認められる場合は、医科に紹介するケースもあるそうです。しかし、お口と全身の病気の関係についての認知は広がっているものの、歯科医院で虫歯や歯周病ではなく、身体の病気を指摘されるとは思っていない患者さんも多いでしょう。そのため、横石先生は何らかのサインが見られた場合は「病院に行ってください」と紹介状を渡すのではなく、「病気の可能性もあるから医科に相談してみた方が良いかもしれません」とソフトに伝えると言います。
「専門分野でなければ、確実なことは言い切れません。当院では、インプラント治療でも専門性の高い処置が必要になる場合は、確実性の高い治療が行える歯科医師に紹介しているほどです。できないことや分からないことについては、うちではできない、確実なことは分からないとはっきり伝える勇気も歯科医師には必要だと思っています。
医科のことは正直、知識があやふやな部分もあります。だからこそ、全身の健康についてのサインを見つけたときには曖昧なことを伝えるのではなく、医科への通院をおすすめしています。」
口腔がんや舌がんの早期発見経験も
内科の疾患などは専門外であるため、医科の紹介よりも健診や通院を促すことが多いものの、口腔がんや舌がんは、歯科医師として学んできた領域であり、異変を感じたときにはすぐに口腔外科を紹介すると言います。
「これまで何人かの患者さんを口腔外科に紹介し、がんの早期発見につながったこともあります。患者さんから発見が早かったおかげで無事に治療ができましたとお礼を言われたときには、患者さんの健康を守るために役に立つことができたという実感がわいて、本当にうれしかったですね。」
医科から歯科への連携の現状と課題
お口の中を見て医科の受診を勧めるケースはあるものの、医科から歯科へ患者さんを紹介されるケースはほとんどなく、ある場合も入院前の周術期口腔機能管理に限られていると言います。
周術期口腔機能管理とは、がんの治療や大きな手術の前後に、術後感染症の予防や全身麻酔時の歯の破損防止などのため、歯科で虫歯や歯周病の治療、クリーニング、マウスピースの作成などを行う処置のことです。
「医科からもっと紹介を受けたいという気持ちは正直あります。患者さんの紹介を受ければ、私たちも全身疾患と口腔内の症状の関連を学べますし、患者さんの健康管理にも貢献できると思うんです。
医科の先生の視点を学べれば、より診療に役立てることができます。また、歯科からも医科に情報を発信し、互いに理解を深め合っていけば医科歯科連携の精度も高まるのではと考えています。」
医科歯科連携によって、お口の環境と全身の健康を一元管理することは、患者さんの健康を管理するうえで大きなメリットとなります。しかしながら、医科から歯科への連携の壁はまだ高く、医科歯科連携体制の確立にはもう少し時間がかかるのかもしれません。
「かかりつけ」が意味するものとは

厚生労働省は「かかりつけ医」を持つことの大切さを訴えています。日本医師会では、かかりつけ医について「健康に関することを何でも相談でき、必要なときには専門の医療機関を紹介してくれる身近で頼りになる医師」と定義しています。
しかし「かかりつけ医」と「かかりつけ歯科医」の連携はそれほどうまく進んでいるわけではありません。
「かかりつけ医やかかりつけ歯科医の定義は、実はまだ曖昧ではっきりとはしていないんです。歯科医師会と医師会が縦割りの構造になっていることも関係していると思います。これからは、医師会や歯科医師会の枠を超え、地域というくくりで連携を進めていくことが大切なんじゃないかと考えています。」
地域連携、医科歯科連携を進めるうえでは制度上の課題も残っていますが、一方で、ここ数年で変化が見られる部分もあると言います。
実は、横石先生のお父様も歯科医師であり、先生はお父様の背中を見ながら歯科医師としての姿勢を学んだそうです。
「父は、ずっと昔から子どもの虫歯予防に力を入れてきました。当時はまだ予防歯科が広く知られていない時代でしたが、歯科医師として子どもの歯の健康を守りたいという思いから、予防歯科に特に力を注ぎ、時間をかけて取り組んできたんです。
そして、今、やっと国が動いてきました。予防歯科を目的とした定期検診も診療報酬の対象になってきているんです。先を見据えて予防歯科に取り組んできた父のような先生たちが、やっと報われてきたという感じがしています。また、今、予防歯科に志のある若手の先生や仲間が増えているのも事実です。その思いが引き継がれ、広がっていることを実感しています。」
医科歯科連携についてはまだ制度が十分に整備されていないものの、予防歯科のように、今後は良い方向に変化する可能性も大いにあります。横石先生は、制度の壁を感じながらもできることから柔軟に対応していきたいと言います。
医院が見つめる将来の姿──地域に根差し、みなさんの健康を第一に考える「健康相談所」を目指して
横石先生が目指すのは、単に歯を治療する歯科医院ではなく、地域の健康相談所としての役割です。
「歯の相談に来た患者さんが気軽に健康の悩みを相談してくれる場所でありたいと思っているんです。当然、私は歯科医なので、歯や口以外のことは、私では解決できません。でも、相談をしてくれれば、悩みを解決してくれる適切な医療機関につなげることができます。」
また、歯科の診療は院長が一人で行うものではないと先生は言います。歯科衛生士がクリーニングをする際に、何かのサインに気が付くこともあるでしょう。また、いつも顔を合わせる受付の人には話がしやすいという患者さんもいるかもしれません。
「誰にでも相談できる環境であれば、患者さんの悩みをもっとすくい上げることができると思っています。患者さんがお口の悩み以外も気軽に相談できるよう、スタッフ教育と院内の体制づくりを進めることが当院の課題の一つだと考えています。」
100歳まで健口で美味しくご飯を食べられるように
大人だからこそ、生活習慣を変えることは難しく、虫歯になったり、歯周病が重症化しなければ、予防のスイッチが入らないということもあるかもしれません。
「歯科医院は不調を訴えてはいけない場所ではなく、口の中のことも、身体のことも気軽に相談しても良い場所です。」
横石先生のメッセージには、子どもから大人まで、地域に住む人すべての健康を支えたいという思いが溢れています。先生の夢は「100歳まで健口で美味しくご飯を食べる」こと。すべてのライフステージに寄り添い、お口の健康も身体の健康も守る歯科医院としての夢を、大泉学園の地で一歩一歩実現しようとしています。
にじいろマイクロスコープセラミック歯科医院の子どもの予防歯科の取り組みについては、こちらの記事でご紹介しています。ぜひ併せてご一読ください。
▼取材協力
医療法人社団にじいろ会 にじいろマイクロスコープセラミック歯科医院 院長
「歯を治すだけでなく、守るための歯科医療を大切にしています。一人ひとりのお口の状態に合わせた予防を重視し、チームで連携しながら、生涯にわたって自分の歯を守れるようサポートしていきます」
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業後、日本歯科大学新潟病院、医療法人社団賢雅会 高橋歯科医院などで経験を積み、しおどめ歯科クリニック院長を経て、2020年ににじいろマイクロスコープ・セラミック歯科の副院長に就任。その後、同院の院長に就任し、前院長の理念を引き継ぎながら、予防を重視した歯科医療に取り組んでいる。日本歯周病学会所属。歯科医師や歯科衛生士などスタッフとのチーム医療を大切にし、患者一人ひとりに合わせた丁寧な診療を通じて、地域に愛される歯科医院を目指している。

医療法人社団にじいろ会
にじいろマイクロスコープセラミック歯科医院
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