重度の虫歯で歯の神経を抜く際の手順とは?
歯の神経を抜く手順
歯の神経を抜く治療は、一般的に以下の7つの手順で行われます。
STEP1:麻酔をする
歯の神経を抜く治療には当然ながら痛みが伴うため、治療前に麻酔を打ちます。この時に大切なのは「歯の奥」、つまり歯の根の先端までしっかりと麻酔薬が到達することです。
通常、根の先は骨に隠れているため肉眼で確認することはできません。そのため麻酔は歯ぐきに打ち、神経までゆっくりと麻酔薬を浸透させます。
体内に入った麻酔は血流にのって神経まで届けられます。しかし、歯に激しい痛みを感じる場合は、歯の神経がある部分(歯髄腔内)に血液が溜まってしまっていることがあるため、血流が滞ってしまいがちです。そのため、神経まで麻酔が届かずに効果がなかなか得られないこともあります。
STEP 2:虫歯を削る
虫歯が原因で神経を抜く場合は、まずは虫歯に冒された箇所を削っていきます。神経を抜く前に虫歯菌をしっかりとすべて取り除かなければいけません。そうすることで、治療中に根が虫歯菌に感染するのを防ぐことができます。
そして、虫歯を削るのと同時に歯の神経の形に合わせながら穴を開けます。歯の神経が分布している歯髄は比較的深いところに位置しているため、5~8㎜ほど削ることが多いようです。
STEP 3:歯髄を探す
歯の歯髄は、歯の中で枝分かれしています。そのため、神経を抜く前にどのように枝分かれしているかをきちんと把握しなければいけません。人それぞれ、その形状が異なることもあるので、歯の神経を抜く治療(根管治療)が難しいと言われるのはこのためです。
一般的に上の奥歯であれば3本、下の奥歯であれば2本に枝分かれしていることが多いようです。しかし、枝分かれの状況は穴を開けるまでは正確に確認することができません。ここで万が一枝分かれを見落としてしまうと、治療の後に痛みが生じる原因となってしまいます。
STEP 4:歯髄を取り除く
ここまでの準備ができて、はじめて歯髄を取り除くことができます。歯髄はシャープペンシルよりもずっと細いため、細い針金のような器具を使って丁寧に取り除いていきます。なお、奥歯は枝分かれが多いため、より時間がかかります。
なお、これは目に見えない部分の治療になります。そのため、歯髄を取り除くときには根管長測定器という器機を使い、根の長さを随時確認しながら治療を進めていきます。
STEP 5:薬を詰める
無事に神経を抜くことができたら、治療した箇所に消毒液を詰めて仮の蓋をします。その後、根の中の消毒が終わったら、再び感染することがないように「ガッタパーチャ」と呼ばれる薬をしっかりと詰めていきます。
なお、治療後に使用する消毒液は1~4週間ほどしかもちません。また、仮の蓋も使用できるのは最大で4週間ほどです。そのため、きちんと薬を詰めるまでは小まめに歯医者さんに通う必要があります。
これを怠って細菌感染を起こしてしまうと、歯を残せなくなる可能性があるので十分に注意してください。
STEP6:レントゲン撮影をする
レントゲン撮影をして、ガッタパーチャがしっかりと根の奥まで詰められているかを確認します。ここで問題がなければ、被せ物などの治療を行います。
歯の神経を抜く治療の成功率は?
歯の根は曲がっていたり枝分かれしていたりするため、歯の神経を抜く治療は決して簡単ではありません。そして、神経を抜いた歯を完全に無菌化することは至難の業だと言えるでしょう。そのため、一度治療をしたにもかかわらず、再度感染することはあり得ます。
現在のところ、歯の神経を抜く治療の成功率は約60~80%だといわれています。特に歯の神経がすでに死んでしまっている場合の成功率は低くなります。歯の神経を抜いたからといって虫歯が100%完治できるわけではない点も事前に把握しておきましょう。そして、心配な場合は治療前に歯科医師によく相談するようにしてください。
神経を抜く治療の後は丁寧なケアを
神経を抜いた歯は、神経を抜く前の歯よりも脆くなります。また虫歯にもなりやすくなるため、一般的に寿命が短くなると言われています。しかし、きちんとケアをすれば神経を抜いた歯でも長期にわたり物を噛んだり、食事をしたりすることができます。歯の神経を抜く治療をした後は、より丁寧なケアを心がけるようにしてください。