【歯の白と黒の歴史トリビア 第2回】数百年前に考えられていた虫歯の原因

2017.10.17 healthHa・no・ne編集部M

歯科医療が発展する前の誤った知識の数々

かつては「虫」が虫歯の原因とされていた!?

頭蓋骨

古代から18世紀後半(日本では江戸時代中~後期)までは、歯がズキズキ痛む原因は「歯の中にある物質を小さな虫が食べてしまっているから」だと信じられていました。この想像上の虫の名前が「歯虫」です。歯虫の歴史はとても古く、紀元前20世紀前半に現在のイラク南部にあったとされる古代バビロニア王国でも、虫歯の原因は歯虫だと考えられていたようです。

バビロニア人はこの歯虫を撃退するため、彼らが祀っているアヌ神に向かって3度歯虫を祓う呪文を唱えた後、ヒヨスという実を焼き、その煙を吸い込ませたと言われています。ズキズキ痛む歯に煙をあてたらかえって痛みが増しそうですが、ヒヨスの実には感覚を麻痺させる効果があるため、痛みもある程度は治まったのだとか。この煙によって歯虫を退治しようという方法は、西洋だけではなく中国でも用いられていました。そう、当時の超文明国だった中国でも、虫歯の原因は歯虫だと考えられていたのです。

東洋における歯虫への考え方とは

日本で歯虫とされていたものの正体は……

歯が痛い男性

中国では隋(581~618年)の時代、古代中国唯一の病理専門書である『諸病源候論』において「牙歯虫候」という名前で歯虫のことが記載されています。平安時代(794~1185年)に制作された日本最古の医学書とされる『医心方』でも、歯虫について同じような内容が見受けられるため、『諸病源候論』の内容がそのまま伝わったとされるのが定説です。

『医心方』の第5巻では、歯虫について『諸病源候論』よりもくわしく記述がされています。「虫長六、七分、皆、黒頭」とあり、これはおそらく歯のなかの黒ずんだ神経を歯虫と見間違ってしまったのだろうと言われています。専門知識などがほとんどない時代なので仕方がありませんが、神経を虫と勘違いされ抜かれてしまっては、患者もたまったものではありませんね。

1881年に現代歯学の父とされるグリーン・バーディマン・ブラックが虫歯の原因はプラークであると唱え、その2年後の1883年には口腔細菌学者ウィロビー・ディトン・ミラーが虫歯の原因は酸にあると唱えたところから、虫歯の原因が歯虫であるという考えは終わりを告げます。もちろんですが、現在では歯虫が虫歯の原因だとする歯科医師はどこにも存在しません。

虫歯の原因がはっきりわかるからこそ、しっかり予防を!

頬をおさえる女性

歯の神経を歯虫と勘違いしていた時代に比べれば、現代の歯科医療環境は天国といっても過言ではありません。昔とは異なり、現代は虫歯の原因がはっきりとわかっているため、予防が可能なのです。せっかく今の時代に生まれたのだから、虫歯で苦しまないよう予防の徹底をしたいところですね。

今回の「歯の白と黒の歴史トリビア」はここまで!次回の更新をお楽しみに!

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【ライター紹介】 M

M

「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。

Twitter:ムートー
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