東京デンタルフェスティバル2017 in練馬 ~「楽しく学ぼう!食とオーラルケア」レポート~

2017.12.26 newsHa・no・ne編集部M

講演内容

2017年12月3日(日) 練馬文化センター
東京デンタルフェスティバル2017 in練馬

・中高年以降のオーラルケアの必要性
若林歯科医院 院長 若林健史先生
・かかりつけ歯科医をお持ちですか?
(公社)東京歯科医師会 公衆衛生担当理事 山本秀樹先生
・ゲストトークショー(切干大根とキャベツを使った練馬らしいメニューの実演&レシピを大公開!)
浜内千波さん(料理研究家)

歯周病予防に欠かせないのが中高年以降のオーラルケア

歯周病治療のスペシャリスト

最初の登壇者は歯周病治療のスペシャリストとして、オーラルケアの普及に尽力をしている若林健史先生。歯周病はお口の中の問題だけにとどまらず、口腔内に菌が大量発生することによって糖尿病や肺炎、脳梗塞、心臓病などといった合併症を引き起こす可能性があることを解説してくれました。

これらの合併症は命に関わるとても怖い病気であり、その原因となり得る歯周病を決して軽く考えてはいけないと若林先生は力説。歯周病をきっかけに発生する全身疾患を予防・治療するためには、医科と歯科がこれまで以上に連携を強化する必要があるようです。

また、歯周病はサイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)と表現されるほど自覚症状が出にくい病気のため、常に注意が必要であると警鐘を鳴らす若林先生。自覚がないだけで、30代以上の日本人のうち約8割は歯周病にかかっているのだとか。歯周病の原因として、若林先生は「喫煙」「不規則な生活」「歯磨きをしない」の3つをあげてくれました。

グラフ

厚生労働省が2011年に実施した『歯科疾患実態調査』によれば、日本人が歯を失う原因の第1位が歯周病だったとのこと。改善のためには、体が弱ってくる中高年以降は特に規則正しい生活(睡眠・食事・運動)を心がけると同時に、「毎日歯を磨く」「歯科医で定期健診を受ける」といったオーラルケアの実施が不可欠だと教えてもらいました。

国や歯科医師会は、8020運動(80歳で20本以上の歯を残すことを目指した取り組み)達成のため、さまざまな取り組みを試みています。これからますます高齢化社会となっていく日本。年齢を重ねていく中でいつまでも健康な歯を保ち、今回のコンセプトである「正しい口腔ケアで思いっきり生きよう」を実現するためにも、自身の生活習慣を見直して正しいオーラルケアを行いましょう。

把握しておきたい「かかりつけ歯科医」の役割

山本秀樹先生

続いて登壇したのは、公益社団法人東京都歯科医師会の公衆衛生担当理事を務める山本秀樹先生。まず山本先生は、日本歯科総合研究機構が行った「歯科医療に関する一般生活者意識調査」の結果を出し、健康診断や人間ドックの受診率が7割近くであるのに比べ、歯科検診の受診率は5割を切っていることを紹介。日本人の歯に対する予防意識は非常に低いことを説明してくれました。実際、同調査で歯科受診のきっかけを尋ねてみたところ、定期検診によってではなく歯や口腔内に何らかの異常を感じて受診をしたケースがとても多いのだとか。

こうした状況を解決する手段として期待されるのが「かかりつけ歯科医」の存在です。かかりつけ歯科医とは、一般的な歯科医療の提供のみだけでなく、日頃から患者さんのお口や全身の健康をサポートしてくれる歯科医のこと。医療・介護に関わる幅広い知識と見識を備え、地域の実情に応じた包括的なケアにも参加してくれる、非常に頼もしい存在なのだそうです。

男女比

実際、現在日本では年代が上がるにつれてかかりつけ歯科医がいる率が高くなっています。また、一般社団法人日本口腔衛生学会が発表した『都市住民における歯科医院への受診状況からみた口腔衛生状態と QOL との関連』という研究によれば、かかりつけ歯科医がいる人の方が長生きであることが明らかになっているのだとか。

今後、さらにかかりつけ歯科医を普及させていくうえで、山本先生は国民と歯科医師との間でかかりつけ歯科医の認識にズレを課題に挙げました。国民はかかりつけ歯科医に快適性(より良い設備)や専門性(高い治療技術)を求めていますが、歯科医師の考えるかかりつけ歯科医とは対話性(治療の緻密な説明・患者の希望を聴く)や包括性(これまでの治療・薬を考慮)を備えた人物であり、少々認識が異なっています。今後はこの認識のズレを埋めるため、かかりつけ歯科医について国民1人ひとりにしっかり認知してもらう必要があるでしょう。

食事や運動でできる健康なお口づくり!

料理研究家

著名な先生方による講演が終わり、続いて行われたのが料理研究家、浜内千波さんによるゲストトークショーでした。お口や体の健康について、浜内さんは普段の食事からつくれると紹介。食べ物をよく噛むことで、脳の活性化や肥満防止が期待できるなど、さまざまなプラス効果があるようです。また、今回練馬らしいメニューの実演として、浜内さんが「切干大根サラダ」のレシピを公開してくれました。練馬の特産品である大根をふんだんに使った料理で、お家でも簡単につくれそうなものでした。

実際に調理する姿を拝見できたのですが、肝心のお料理はさすがにいただくことができず、残念でした。しかし、練馬大根で健康的なメニューが作れるシャキシャキ感があるおいしいメニューということで、子どもを持つお母さんはぜひとも参考にしていただきてたいところです。

健康運動指導士

ゲストトークが終わり、浜内さんに替わって登場したのが健康運動指導士の原眞奈美さん。高齢者のお口の健康のために「ねりま お口すっきり体操」を考案した人だそうです。この「ねりま お口すっきり体操」は、口の周りの筋肉をストレッチすることで口に潤いを与え、飲み込む力をつけることが目的。高齢者の方に少しでも長く美味しい食事を味わってもらい、毎日を楽しく生きてほしい……という原さんの願いがこの体操には込められているそうです。

「ねりま お口すっきり体操」後は、主に口腔ケアについてのシンポジウムが行われ終演となりました。今回参加したことで、東京デンタルフェスティバルはただ講演するだけでなく、料理の実演をしたりお口に良い体操をしたりなど、さまざまな趣向が凝らされており、「正しい口腔ケアで思いっきり生きよう。楽しく学ぼう!食とオーラルケア」のコンセプト通り盛りだくさんの催しでした。少しでも日本人の歯に対する予防意識を向上させるため、さまざまな切り口でオーラルケアの必要性を訴える東京デンタルフェスティバルは、ぜひ来年以降も開催してほしいですね。

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【ライター紹介】 M

M

「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。

Twitter:ムートー
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