私の永久歯が根元からぱっくり割れた経緯～実録“インプラント女子”第1話～

5月6日　歯ぐきが痛くてモノが噛めない!?

悲劇の始まりは2017年のGW――最初の自覚症状は、歯ぐき(歯の根元)の痛みでした。それは久しぶりに東北の実家に帰省して、自分ではなかなか食べに行けない肉料理をしこたまご馳走してもらった夜のこと。昼にステーキを食べたというのに、夜は山盛りのローストビーフをつまみにして呑気にビールをあおっていました。久々の一家団欒に、豪勢な料理。しかし、悲劇の序章はすでに始まっていたのです……。母の自信作であるローストビーフを2～3枚食べたところで、歯に痛みをともなう違和感が……。

実は私の口の中には、高校時代に虫歯が進行し、根管治療で神経を抜いた奥歯が1本だけありました。その歯の周囲は昔から疲れが溜まったときにジンジンと痛むことがあったので、「どうせ今回も高速バスでの長距離移動が歯に影響しているだけだろう」と思っていました。まさか歯が折れるなんて、このときは思いもよりません。痛みを感じながらも、その晩はローストビーフを完食して就寝したのです。

(これが実際の夕飯。ローストビーフだけでなく塩辛もスティック型のパンもそれなりに硬かった。)

普段の歯の痛みは寝て起きれば治るものでしたが、翌日目が覚めると歯の痛みは昨夜よりも増していました。「これは病院に行かないと……」と察した私は薬局で痛み止めを買い、心配する父に別れを告げて東京に戻ります。バスに乗っている途中で痛み止めが切れてからは、ひたすらに「あ～……歯が痛い……」ということしか考えられませんでした。

5月8日　ひどい炎症で手も足も出ない

受診したときには最初に痛みを感じてから約2日が経過し、歯ぐきは腫れるは、頭痛はするはで、それはもうヒドイ状態でした。初めて受診したのは、会社のそばの小さな歯科医院。自覚症状を説明し、歯科衛生士の方に腫れた箇所を見てもらったところ、「炎症がひどくて今日は何の処置もできないので、数日間抗生物質を飲んでから治療しましょう」とのことでした。「やっと治療してもらえる！」と思っていた私は、この展開に少しがっかりしましたが、専門家がそう言うのであれば仕方がありません。

部分的なレントゲンを撮り、歯ぐきの状態を確認した年配の先生からは「神経を抜いた歯の周りに膿が溜まっているので、次回はこの膿を抜きましょうね」と言われました。「膿？どうして？」と思いながらも、その日は大人しく薬をもらって帰ることに……。

5月11日　診断は「軽度の歯周病」

抗生物質と痛み止めを飲んで3日が経つとだいぶ痛みも収まり、いつも通り食事を楽しめるようになっていました。再び歯科医院を訪れ、先生に歯の状態と数日前のレントゲンを見比べてもらいます。気になる診断結果は、初期の歯周病。「若いから軽度の歯周病でも症状が出たんだと思います」とのことでした。

25歳にして歯周病になるというのは非常にショックな話でしたが、歯に痛みがあったのは歯周病のせいだったのかと素直に納得。今後の治療方針はクリーニングで歯石を除去し、歯周病を改善することでまとまりました。歯周病の診察は歯1本1本の周りに細く尖った器具を挿し、歯周ポケットの深さを計ることで進行度を確認します。私の場合は、痛みがあった歯(右上5番)の周りだけ、歯周ポケットが4mmもの深さになっていました。

しかし、その他の歯周ポケットの深さは2mm程度の正常値。今思えば、歯の痛みを歯周病の影響と片づけたこの診断は少々乱暴だったのかもしれません。歯周病に関して無知である私は専門家である歯科医師の診断に疑問を抱くこともなく、その後2回にわたって歯石のクリーニングを受けました。クリーニング自体は口の中がスッキリして気持ちがよく、歯の痛みがぶり返すこともありませんでした。そう、あの日が来るまでは……。

6月2日　例の奥歯に縦方向のヒビが！

ある夜、Ha・no・ne編集部の仲間たちとの飲み会の場で事件は起きました。おつまみのポテトサラダに入っていた秋田名物「いぶりがっこ」が私の奥歯にトドメを刺したのです。

口の中でガリっと音がしたときは、何が起こったのかまったく理解できませんでした。私は恐る恐る舌で例の奥歯を触ってみます。するとなんということでしょう。いぶりがっこを噛んだ衝撃で、例の奥歯に縦方向のヒビが入っていたのです！

しかし、盛り上がっている飲み会の途中で「歯にヒビが入ったので帰ります」とは言えず、酔いでさほど痛みも感じなかったので、その日は最後まで飲み会を楽しみました。「明日また歯医者に行こう」。そう考えながら……。

以上が私の永久歯が割れてしまった事件（？）の顛末です。第2話のトピックは「割れた永久歯に格闘する私」「歯科医院の転院をすすめる上司」、そして「抜歯を決意するまでの苦悶の1ヶ月」をお届けします。私の苦悶の日々に関する手記をお楽しみにしてください。

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【ライター紹介】 RIKA

Ha·no·ne編集部でもっとも歯に悩みを抱えるライター。小学生時代に上下の顎の噛み合わせが逆である「不正咬合」であることが判明したのを皮切りに、乳歯が生え替わる際に必要な永久歯が生えない「先天性欠損」や慢性的に冷たい物が歯にしみる「知覚過敏」など数々の困難を経験。2017年春には25歳にして永久歯を1本失った。そんな“口運”に見放された悲劇のヒロインとしての物語を「実録！インプラント女子」にてありのままに綴っている。予防歯科や矯正治療の重要性を世の中に発信したいという気持ちは、当然ながら“ノンフィクション”だ。

Twitter：香取さとり【文筆業】
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