口腔内科とは?その特徴と治療内容について

2018.02.26 healthSUE

口腔内科とは

口腔内科は、口のトラブルの予防・治療のために内科的アプローチを行う診療科です。口腔疾患の治療というと虫歯になった歯を削るなどの外科的アプローチが主流ですが、口腔疾患と全身疾患には深い関係があることがわかっています。そのため、内科的アプローチと外科的アプローチを併用することでより治療の質を高まることが期待できるのです。

口腔内科の治療対象

口腔内科では、原則として口腔と関連のある疾患すべてを治療対象としています。そのため、治療範囲は非常に広くなると言えます。具体的な治療対象疾患としては以下のものが挙げられます。

・口腔悪性腫瘍
・口腔良性腫瘍
・口腔粘膜疾患
・唾液腺疾患
・外傷
・顎関節疾患
・口腔乾燥症
・味覚障害
・舌痛症
・口臭
・口腔心身症

口腔内科では治療対象が多岐にわたるため、歯科医師には疾患に関する幅広い知識と経験が求められます。また、適切な治療を行うためには他の診療科や他の機関との協力・連携が必要になります。

口腔内科を受診するメリット

全身疾患と関連の深い口腔疾患として有名なのが、日本人の40歳以上の8割が罹患していると言われる歯周病です。歯周病になると血糖値コントロールが難しくなることがわかっており、糖尿病の悪化へとつながります。また歯周病は歯を失う原因として第1位であり、健康を維持するうえで歯周病対策は欠かせません。

とはいえ、多くの歯周病患者がいることからも歯周病予防が簡単ではないことは明らかです。しかし、通常の歯周病予防に加えて口腔内科での内科的アプローチを行えば歯周病を予防できる可能性は上がります。これは歯周病に限らず、他の口腔疾患においても同じことが言えます。

また、インプラントや抜歯、歯の根などの治療をするときにも口腔内科は重要な役割を果たします。内科的アプローチを取り入れることによって治療の成功率が高まることが期待できるのです。

海外の口腔内科と日本の口腔内科

口腔内科の考え方は、もともと欧米から伝わったものです。ここでは、海外の口腔内科と日本の口腔内科についてまとめました。

海外の口腔内科

欧米では口腔内科という診療科が確立されており、アメリカでは「American Academy of Oral Medicine」という専門学会が設立されています。この学会では、歯に関連する疾患の予防・原因に関する知識の普及を目指しています。

また、韓国の「慶熙大学歯科大学」の口腔内科では、口腔疾患の全身的な問題として治療を行っています。従来は局所的だと考えられてきた疾患についても、全身的な範囲での原因の究明を試みています。

日本の口腔内科

日本では口腔内科はあまり普及していないものの、口腔内科そのものの考え方は第二次世界大戦後にすでに伝わっていたそうです。1965年、松本倉三氏は欧米にある「オーラル・メディシン(口腔内科学)部門」の概要を日本で報告しました。そして、そのわずか3年後の1968年には東京医科大学が「オーラル・メディシン研究所」を開設しました。

そして、東京歯科大学での研究を反映した「オーラル・メディシン講座」が開講されたのは1981年のことです。その後は、北海道大学、北海道医療大学、日本大学、東京歯科大学、松本歯科大学、鶴見大学、徳島大学などいくつかの大学の歯学部でオーラル・メディシン講座が開講、あるいは口腔内科が開設されています。

このように、日本では口腔内科を開設している医療機関は決して多いとは言えません。大きな大学病院でも、口腔内科に対応していないところは多くあります。そのため、多くの病院では口腔外科が口腔内科の役割も担っていることが多いようです。

今後の口腔内科の普及について

口腔内だけの症状に捉われずに全身を見て口腔疾患にアプローチする口腔内科の考え方は、今後より必要とされると考えられています。なぜなら、日本は今までにないほどの超高齢化社会を迎えているからです。高齢者は口腔疾患だけではなく他の全身疾患も抱えていることが多いため、口腔疾患と全身疾患のつながりを考えながら予防および治療を進めていく必要が高まっていくと考えられています。

口腔内科を設けている医療機関は、現在はあまり多くはありません。しかし、10年後、20年後には口腔内科の存在が当たり前になっていることも想定されるのです。

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