お口にもウイルスが!? 知っておきたい4つの口腔内のウイルス性疾患
疾患1:単純疱疹(たんじゅんほうしん)
唇や顔に左右両側の水疱(みずぶくれ)があったら、「単純疱疹」かもしれません。
単純疱疹の原因
単純疱疹の原因は、ヘルペスウイルスの一種のウイルスです。
単純疱疹を起こしやすい人
ストレスや疲れ、病気などによって免疫力が低下した人に起こります。口唇ヘルペスの場合、唇の日焼けなどによって起こることもあります。実はほとんどの人が、20歳までにヘルペスウイルスに感染すると言われていますが、もし感染したとしても、90%ほどの人は生涯にわたって症状を示すことはありません。
単純疱疹の症状
単純疱疹と一口に言っても、その症状は現れた部位によって異なります。
単純疱疹の治療法
単純疱疹の治療には、抗ヘルペスウイルス薬が使われます。この薬は、ウイルスが増えないよう症状を緩和して、早く治るようにすることが目的です。
・症状1:ヘルペス性歯肉口内炎
生後6ヶ月から3歳くらいまでの乳幼児がかかりやすい感染症です。症状としては、不機嫌、のどの痛み、発熱が2~3日ほど続いた後に、舌などのお口の粘膜に小さな水疱が現れます。水疱はすぐに破れて、口内炎のようになり、痛みを伴うようになります。そして、歯肉は赤く腫れ、口臭を引き起こしますが、2~6週間で治癒します。
症状2:口唇ヘルペス
口唇ヘルペスの多くは、再発型です。ストレスや疲れが引き金となり、かゆみや違和感が起こった後、2~4日で水疱が現れはじめます。そして、水疱は破れた後、口内炎のようになり、数日から2週間ほどで治ります。初めての場合の水疱が大きいのですが、再発を繰り返すたびに小さくなり、数も減っていくでしょう。
症状3:顔面単純ヘルペス
顔面に生じる単純ヘルペスも、多くは再発型です。頬や下顎、鼻などに水疱が現れます。しかし、後述する帯状疱疹と比べると水疱は小さく、破れても穴は浅く、痛みも軽いことが特徴です。
疾患2:帯状疱疹(たいじょうほうしん)
顔面から頭にかけて、右側、もしくは左側だけにたくさんの水ぶくれ(水疱)が現れたらこの病気かもしれません。
帯状疱疹の原因
帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。水疱瘡のウイルスとして知られています。このウイルスもヘルペスウイルスの一種です。
帯状疱疹を起こしやすい人
帯状疱疹は、一般的に高齢者に多いとされていますが、20代や30代でも発症しますし、乳幼児にも起こります。年齢の分布図を見ると、20~30歳と50歳に発症のピークがあり、40代が底になっています。ストレスや加齢、疲れなどで免疫力が低下した人に発症します。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹が現れる前に、神経痛のような痛みや発熱が起こります。続いて、1週間にわたって水疱がたくさん形成されて増えていきます。水疱は破れて2週間目ごろからカサブタとなり、3週間前後ではがれて治っていきます。帯状疱疹は、三叉神経(さんさしんけい)という神経に沿って広がっているので、顔の半側にだけ生じることが特徴です。ほとんどの帯状疱疹は3週間くらいで治り、再発することはありませんが、治った後に強い神経痛や顔面神経麻痺が残ることがあるので、注意が必要になります。
帯状疱疹の治療法
帯状疱疹には、抗ヘルペスウイルス薬による薬物治療が行なわれます。ウイルスが増えないように抑えこみ、治癒期間を短くしたり、後遺症を抑えたりする目的で処方されます。
疾患3:手足口病(てあしくちびょう)
夏季に手や足、口に水ぶくれ(水疱)が生じたら、この病気かもしれません。
手足口病の原因
手足口病は、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどによって起こるウイルス性疾患です。
手足口病を起こしやすい人
手足口病は、5歳以下が80%と乳幼児に起こる病気ですが、まれに大人でも起こります。年間では7月ごろにピークを迎える子どもの三大夏かぜの1つです。
手足口病の症状
手足口病は、名前の通り「手」のひら、「足」「口」の中に水疱を形成するのが主な症状で、感染から数日で生じます。その水疱は、カサブタを作らずに1週間くらいで治ります。しかし、1~2ヶ月ほどしたのちに、手足の爪がはがれてくることもありますが、すぐに新しい爪が生えてくるので心配ありません。また、3割ほどに発熱を認めますが、それほど高熱にはなりませんし、なったとしても続くこともまずありません。ほとんどの場合、数日で自然に治るでしょう。
手足口病の治療法
手足口病に特別な治療法はありません。一般的に症状の軽い病気なので、経過観察になる場合が大半です。ただし、高熱が続く、嘔吐する、頭痛がある、息苦しい、水分が摂れないなどの強い症状が現れたら、すぐに医療機関を受診した方がいいでしょう。
手足口病を広めないために
手足口病は、くしゃみで唾が飛んだり、唾液や鼻水がついたりした、おもちゃの貸し借りなどによって広がっていきます。そして、症状が落ち着いた後も、2~4週間ほどはウイルスが排出され続けます。ですので、手洗いや消毒、うがい、マスクで手足口病が広がらないようすることが大切です。一度かかっても何度もかかることがあるので注意が必要です。
疾患4:ヘルパンギーナ
夏頃にのどの痛みや発熱、お口の水ぶくれ(水疱)が現れたら、この病気かもしれません。
ヘルパンギーナの原因
ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスが原因のウイルス性疾患です。手足口病もコクサッキーウイルスで起こりますが、コクサッキーウイルスにはたくさんの種類があり、同じコクサッキーウイルスでもヘルパンギーナと手足口病では、ウイルスの型が異なります。
ヘルパンギーナを起こしやすい人
ヘルパンギーナは、乳児や幼児によく起こり、5歳以下が全体の90パーセントを占めます。ピークが7月ごろと夏に流行ることから、子どもの三大夏かぜの1つに数えられています。
ヘルパンギーナの症状
突然の発熱とのどの痛みを訴えますが、実はその前に2~4日間ほどの潜伏期間があります。のどの粘膜が赤くなり、お口からのどにかけて直径数ミリの小さな水疱が出来ます。水疱はやがて破れて口内炎になり、痛みを訴えるようになりっていくでしょう。熱そのものは数日で治まり、その後、お口の症状が改善に向かいます。
ヘルパンギーナの治療法
ヘルパンギーナに特別な治療法はありません。発熱や痛みに解熱鎮痛剤を処方することがあるという程度です。のどの痛みが強いと食事や飲み物を嫌がることがあり、それによる脱水に気をつけて安静にしていることが大切です。
ヘルパンギーナを広めないために
ヘルパンギーナは、手足口病と同じく、くしゃみで唾が飛んだり、唾液や鼻水のついたおもちゃを触ったりすることでうつります。落ち着いた後も数週間ウイルスは排出されていますので、手洗いとマスク、消毒をして広げないように注意をしましょう。
日々のケアと異変を感じた際の診察が重要
今回は、お口に生じるウイルス性疾患について紹介しましたが、決して特定の人だけが対象となる疾患ではないことがおわかりいただけたでしょうか。もし、「この症状、当てはまる!」と感じたら、悪化・進行してしまう疾患も考えられますので、すぐにでも歯科口腔外科で診てもらいましょう。