骨粗しょう症薬の服用による歯への影響とは?
骨粗しょう症や治療薬が歯に与える影響
骨粗しょう症が歯に与える影響には、骨粗しょう症そのものが歯に与える影響と、骨粗しょう症の薬が与える影響の2つがあります。それぞれ口腔内に大きなダメージを与える危険性があるので、骨粗しょう症の方や予備軍の方は十分注意しましょう。
骨粗しょう症とは
骨粗しょう症とは、女性ホルモンであるエステロゲンの分泌が減少することが原因で、骨の強さや骨の密度が減少し骨の質が劣化する病気です。
骨が脆くなってしまうことから、ちょっとつまずいたり、くしゃみをしたりといったほんの少しの衝撃でも簡単に骨折しやすくなります。特に手首や骨のつけ根、背骨などが骨折しやすい箇所として挙げられます。
主に年齢とともに中高年の女性が罹患する傾向のある病気ですが、最近では過度なダイエットやカルシウム不足、運動不足などの影響で若い人の間でもひろがっています。直接命に関わる病気ではありませんが、骨粗しょう症になり骨折すると場合によっては介護が必要となったり、寝たきりになったりと、患者さんやその家族に大きな負担を与えることになります。
超高齢化社会を迎える日本では今後ますます患者が増えることが予測されていますが、患者さんの健康寿命にもかかわる病気なので、できることなら予防していきたいものです。
骨粗しょう症で歯周病の進行が
実は、骨粗しょう症は歯周病とも関係があります。私たちの歯は歯槽骨(しそうこつ)という骨によって支えられています。しかし、骨粗しょう症になると歯槽骨が脆くなるので、歯周病の進行を早めてしまったり、歯周病にかかりやすくなったりすることがあります。
骨粗しょう症の薬で歯の顎が壊死する?
骨粗しょう症には多くの治療薬があります。古い骨を分解・吸収する「破骨細胞」の働きを抑えて骨を丈夫にするビスホスホネート製剤やデノスマブなどの薬があります。また骨の形成を促す薬としては活性化ビタミンD3、ビタミンK2などがあり、カルシウムも薬として使用されています。
特にビスホスホネート製剤は骨粗しょう症だけではなく、がんの骨転移を防ぐ目的でも使用されています。しかし、近年ではビスホスホネート製剤を長年使用することでビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ)を発症した事例が少なからず報告されているのです。
ビスホスホネート製剤服用の方は要注意
ビスホスホネート製剤は骨粗しょう症に効果的であると考えられ、多くの患者さんが服用している薬です。しかし、稀に抜歯などの外科的処置の後に顎の骨が壊死する場合があるので、期間を問わず服用している人が歯科医院で治療を受ける際は薬の服用の申告が不可欠です。
抜歯など外科的処置は要注意
ビスホスホネート製剤を3年以上服用した人が抜歯やインプラントなどの外科的処置をした後、ごく稀ですが顎骨壊死するケースがあります。顎骨壊死とは顎の骨が細菌に感染し、口の中で骨が露出したり歯肉が膨張したりと、とてもつらいトラブルに見舞われます。
近年はビスホスホネート製剤と同様の薬としてデノスマブも承認されましたが、デノスマブでも顎骨壊死の副作用が報告されており、これらの薬を服用中の人が抜歯など外科的処置をする際は、事前に歯科医師に告げましょう。
口腔内環境の悪化もリスク要因
ビスホスホネート製剤を服用している人が、抜歯などの治療後に顎骨壊死になる最大の理由は、細菌感染です。細菌に感染することで口腔内環境が悪化し、細菌が増えることで顎骨壊死のリスクが高まると言えます。
骨粗しょう症患者が安全に歯科治療を受けるために
ビスホスホネート製剤を服用している人が安心して抜歯などの歯科治療を受けるためには、骨粗しょう症の主治医と歯科医師の連携が不可欠です。
治療薬を服用する前に歯科検診を
ビスホスホネート製剤を服用すると決まったら、服用前になにもトラブルを感じていなくても一度歯科医院で検診を受け、外科的処置が必要なら服用する前に治療を済ませると安心です。
治療薬の服用をいったんやめる
ビスホスホネート製剤を服用中に抜歯などの外科的処置が必要になったら、まずは骨粗しょう症の主治医に相談しましょう。治療法の選択肢としては薬を飲むのをいったんストップし薬の効果が薄くなった時期に抜歯などの外科的処置を取るのが良いでしょう。患者さんご自身の意識とともに、主治医と歯科医師の連携がとても重要になります。
日々のケアで口腔内環境を清潔に
ビスホスホネート製剤を服用している方にとって、口腔内の細菌は顎骨壊死のリスクを高めるので、常に口腔内環境を清潔に保つことが最重要になります。毎日丁寧に歯を磨き、定期的に歯医者さんで定期検診を受けることをおすすめします。
薬を服用している場合は必ず歯医者さんに申告しましょう
ビスホスホネート製剤を服用されている方は、あまり心配し過ぎず毎日のケアや歯科医院での定期検診でお口の健康を大切にしましょう。また骨粗しょう症に限らず全身疾患に罹患している場合は、歯科医師に受診する際に病状と服用している薬に関して必ず申告するようにしてください。