骨粗しょう症薬副作用で顎骨が壊死!? 発症例は5年間で約18倍に急増

2017.07.17 newsHa・no・ne編集部M

治療薬の副作用として壊死発症数が急増

骨粗しょう症や乳がんの骨転移に対して使用する治療薬「ビスホスホネート製剤」によって、顎骨が壊死する患者が急増しています。ビスホスホネート製剤は古い骨を分解・吸収する「破骨細胞」の働きを抑えて骨を丈夫にする薬。しかし、その副作用として「ビスホスホネート関連顎骨壊死(BRONJ)」を発症するケースがまれにあるそうです。

壊死が起きるとお口の中で骨が露出し、強い痛みが生じるため、食事をとることすらままならなくなります。そのまま治療を受けず放置していると、症状はさらに悪化。壊死した箇所から細菌が入り込み、脳や肺に感染することで死亡してしまうケースも確認されています。一度顎の骨が壊死すると定期的に該当箇所部分を洗い流す程度の治療しかできず、抜本的な治療法は現在のところ存在しません。最悪、「顎の骨を切除する」というケースもあり得ます。

日本口腔外科学会による全国調査では、ビスホスホネート製剤による顎の骨の壊死が2006~08年の調査で計263例が報告されたのに対し、11~13年の調査では計4797例に急増。治療目的で服用する患者が増えた反面、副作用の発症も増えるという結果になりました。

口腔内環境にあった顎骨の壊死の原因

ビスホスホネート製剤の副作用による顎骨の壊死は、同製剤が骨粗しょう症や乳がんなどの病気の治療に用いられるため、患者の大半は高齢女性だそうです。そして、高齢になるとなかなか行き届かなくなるのがお口のケア。実はこのビスホスホネート製剤の副作用と口腔内環境は密接に関係しています。

もしビスホスホネート製剤の服用中に虫歯があったり歯周病にかかったりしていると、その傷から細菌が入り込み、顎の骨に感染しやすくなります。また、虫歯や歯周病の治療中であっても、油断は禁物。抜歯やインプラント治療を行うと、治療箇所から細菌が感染しやすい環境に陥りがちになります。感染を防ぐためには、常にお口の中を清潔に保ち、必要に応じて歯科医師からの診断を受けることが不可欠なのです。

予防のため定期的な歯科医院での受診を

2016年夏、日本口腔外科学会や日本骨代謝学会などを含む6つの学会では、顎骨の壊死を防ぐための方法として「ビスホスホネート製剤の服用前に歯科医師の受診を受けることが重要」という見解を公表しました。ビスホスホネート製剤は基本的に整形外科などで処方される薬ですが、服用前には必ず歯科医院にも足を運ぶことが重要ということです。

もちろん、すでにビスホスホネート製剤を服用している方も例外ではなく、今からでも歯科医院で検診を受けるようにしましょう。もし壊死のきっかけになりうる虫歯などがある場合は、抜歯などの処置を受けることで、壊死発生の可能性を低減させることにもつながります。

顎骨壊死の仕組みについては未解明な部分が多々ありますが、確実に言えるのはお口の予防によって未然に防ぐことが期待できること。ビスホスホネート製剤を服用している方はもちろんのこと、そうでない方もあらためてお口の予防を心がけましょう。

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【ライター紹介】 M

M

「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。

Twitter:ムートー
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