噂の真相解明! 歯は本当に牛乳を飲むだけで強くなるの?
歯は骨と異なる組織
結論から言うと、牛乳を飲んで歯が強くなることはありません。なぜなら、歯は骨とは異なる組織で作られているからです。
歯を構成している組織は主にエナメル質、象牙質、セメント質の3つで、カルシウムを中心とする無機質で作られています。
カルシウムが中心ならば、牛乳を飲めばある程度効果はあるのではないかと思うかもしれません。これらの組織は細胞ではないので新陳代謝をする機構を持たず、牛乳を飲んでカルシウムを摂取したとしても、直接取り入れることができないのです。
しかし、カルシウムの摂取自体は歯と無関係ではありません。
カルシウム不足が引き起こす2つの影響
1.歯槽骨への影響
歯は新陳代謝を行わない組織なので、カルシウムを摂取しても強くなることはありません。しかし、その歯を支えている骨である「歯槽骨」は、カルシウム不足の影響が表れやすい部分です。
骨は「骨代謝」を繰り返すことで、古い細胞を新しい細胞と交換して強度を保っています。そのためカルシウムが不足すると、代謝が正常に行えなくなり歯槽骨もろくなります。
このときに歯周病の症状が重なった場合、歯周病菌が歯槽骨に到達することで歯周組織を溶かします。一度歯周病によって歯槽骨の吸収が進むと、元に戻ることはありません。
また、カルシウム不足は骨粗しょう症に拍車をかけてしまいます。骨粗しょう症になると、歯槽骨の骨密度が大幅に低下して、歯が抜けやすくなります。
2.唾液への影響
歯の表面を覆っているエナメル質は、唾液に含まれるカルシウムやリン酸により「再石灰化」して歯を修復していきます。
再石灰化によって歯のダメージを修復できるので、正常に再石灰化が行われることで虫歯になるリスクを下げることができます。
しかし、唾液に含まれるカルシウムが不足している場合は再石灰化の機能が低下するので、歯を修復することができず、虫歯になるリスクを高めてしまいます。
カルシウムを効率よく摂取し歯槽骨を強くする方法
1.ビタミンDと一緒に摂取する
効率よくカルシウムを骨に変えるためには、ビタミンDの摂取が重要です。ビタミンDには小腸でカルシウムを吸収しやすくする働きがあるからです。しかし、牛乳にはビタミンDは含まれていないため、他の食べ物から摂取する必要があります。
そのため牛乳以外の元々ビタミンDを含んでいる食材からカルシウムを摂取した方が、効率よく骨に変えることができます。ビタミンDを含み、なおかつカルシウムも含んでいる食品は鮭や、しらすなどの魚です。
これらを摂取することで、効率よくカルシウムを骨に変えることができるので歯槽骨が丈夫になり、結果的に歯を丈夫にできます。
2.負荷をかけると骨は強くなる
骨が生成されたら、次はその骨を強くすることが必要です。骨は負荷をかけると細胞が活性化して強くなります。
歯槽骨もよく噛むことで骨密度が上がり、骨が強くなるので、毎日の食事の際にしっかりと噛むことを心がけることで強い歯槽骨をつくることができます。
しかし、歯周病の症状が出ていると、骨の弱い強いに関わらず、歯槽骨が歯周組織を吸収してしまうので、早めに治療する必要があります。
牛乳に含まれるカルシウムは直接的に歯を丈夫にしてくれるものではありません。しかし、歯を支えている歯槽骨の骨密度を上げて、唾液による再石灰化を正常に行えるようになります。そのため、牛乳に含まれるカルシウムが口腔内の環境によい影響を与えることは間違いありません。遠回しですが歯を強くすることに結びついているのです。
しかし、カルシウムを効率よく摂取するならば、牛乳よりも効果的に摂れる食品がたくさんあります。普段カルシウム不足を感じている人は、魚などから効果的にカルシウムやビタミンDを摂取するようにしてください。