歯の神経を抜いても患部に痛みを感じる理由とは?

2018.03.22 healthオオタカ

重要な役割を担う歯の神経組織

私たちの体には神経組織があちこちに網目状に張りめぐらされ、体中の細胞や組織と情報交換をし、呼吸や血液の循環、運動といった機能が円滑に行われるよう働いています。歯の神経組織も同じく、歯の健康を維持する重要な役割を果たしています。

歯の神経がある場所

歯の表面には硬いエナメル質が覆われていて、その内側に厚い象牙質、そしてその内側に「歯髄(しずい)」という組織で構成されています。神経組織は歯のもっとも内側にある歯髄の中にあります。

神経がある歯髄とは

歯の中心部にある歯髄は、神経組織のほかに毛細血管やリンパ管などで構成されています。歯髄は歯に何かが触れたときなどに刺激を感じる感覚機能があり、虫歯などに罹患(りかん)したときにいち早く知らせてくれます。また歯全体に栄養や空気を送り込み、歯の健康を育む重要な役割を持っています。

さらに、歯の中に侵入してきた虫歯菌などの細菌に抵抗する働きを持ち、象牙質が虫歯菌などの細菌に侵された場合には第二象牙質を形成するなどの免疫機能や防御機能を持っています。

神経を抜く虫歯はどんな状態?

重度の虫歯とは歯の深い部分にまで虫歯菌に侵されてしまい、激痛を伴う炎症を起こしている状態です。この虫歯菌に対して歯髄はバリアを張って抵抗した状態ですが、虫歯菌の進行が激しくなると抵抗力が弱まり、神経もダメージを受けます。そうなる前に炎症を起こした歯髄を除去することが「神経を抜く」という処置です。

歯の神経を抜くとどうなる?

歯の神経を抜くことは、歯髄全体を取り除くことを意味します。神経組織だけを取り除くことはできず、毛細血管やリンパ管も同時に取り除く処置を行います。そのため、歯の神経を取ると空気や栄養などが行き届かなくなるので、懐死(えし)という細胞が死んだ状態になり、何も感じなくなります。

また、免疫機能や防御機能も失うので再度虫歯になりやすくなります。神経を抜いているので痛みは感じませんが、気づかないうちに虫歯が悪化することで、抜歯をしなければいけない状態になるケースもあります。

歯の神経を抜いた後に痛みを感じる理由

歯の神経組織は歯に加えられた刺激などを感知する機能を持つため、歯の神経を抜くと感覚がなくなります。それにもかかわらず、歯の神経を抜いた後に痛みを感じるのはなぜでしょうか。治療後に痛む原因は以下のようにいくつか考えられます。

理由1:治療による一時的なもの

歯の神経を抜いた際に、その断面が完治するまで、しばらくは痛むことがあります。しかし、その場合は一時的なものになるため、しばらくすればその痛みは引きます。

理由2:歯の根の周りに炎症が残っている

治療による炎症が歯の根の周りに広がると、神経を抜いても痛みが残る場合があります。また、神経を抜いた際に歯の根の組織を傷つけ、炎症が起こることも。時間が経てば炎症がおさまり、痛みもなくなります。

理由3:神経が取りきれていない

歯髄がある部分を根管(こんかん)と呼びます。この根管は、まっすぐに下に伸びていたり、網目上になっていて複雑だったりと人によって形状が異なるため、治療が難しい場合もあります。神経を完全に取り除くことができなかったり、患部に細菌が残っていたりすることで痛みを感じることがあります。この場合は再度神経組織を取り除いたり、根管治療で細菌を除去したりする必要があります。

理由4:歯髄除去後に詰めた詰め物に隙間がある

神経を取り除き、その部分を清掃して消毒を行い充填材という薬剤を詰めることを「根管治療(こんかんちりょう)」と言います。その詰め物に隙間があり、細菌が繁殖して骨の中に膿ができるために痛むことがあります。

理由5:治療中の事故によるもの

歯の神経を抜いて根管治療をする場合は、針のような細く長い治療器具で患部を削り取っていきます。治療器具の先端が根の内部で折れてしまい、内部に残ってしまうことで痛みが出る場合があります。

理由6:噛み合わせが合っていない

歯の神経を取り除いた後は詰め物や被せ物で処置しますが、これらの補綴物の噛み合わせが合っていないと、患部に過重な力が加わりいつまでたっても痛みが残る場合があります。

理由7:飲酒によるもの

歯の神経を抜いた当日に飲酒をすると、さらに痛みが増しますので飲酒は絶対厳禁です。

歯の神経を抜く前に、虫歯の早期治療を心がけましょう

歯の神経組織がある歯髄は、歯の健康を支える重要な組織です。歯の神経は健康な状態で維持し、楽しい食事を続けていくためにも重要なだけに、長期にわたりいい状態をキープしたいものです。歯の神経を抜くほどの重大な虫歯にならないよう、まずは歯医者さんで定期検診を必ず受診し、虫歯の早期発見、早期治療を心がけるようにしましょう。

歯の神経を抜いた当日は安静にし、その後も歯科医師の指示通りにしっかりと治療を続けてください。神経を抜いた後に痛みが残るようでしたら、早急に歯科医師に相談しましょう。

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