歯医者も廃業が相次ぐ時代!?治療の鍵は信頼できる医院選び~ちぃ先生の手記第26回~
経営難に陥る歯科医院が急増中の現状
2018年の年末に帝国データバンクが配信した「【特集】医療機関の倒産が増加、要因は歯科医院」というニュースが歯科業界では少し話題になりました。帝国データバンク調べによると、病院・診療所・歯科医院などすべての医療機関を含めた2018年の倒産数は40件。そのうち歯科医院が23件で2000年以降では2014年の15件を大きく上回り、最多の倒産数だそうです。
最多と聞くとかなりの数が潰れているように思えますが、厚生労働省が平成30年に実施した「医療施設動態調査」では歯科医院の施設数は68787。たとえそのうちの23院が潰れても、全体の0.0003%にしか過ぎないので大きな影響はないように思えるでしょう。しかし、これは歯科医院の廃業傾向のほんの序章に過ぎないという見通しであり、経営難に苦しむ歯科医院が増えることが予想されています。
歯科医院は開業時の設備投資に自己資本の負担が少なくできるため、参入のハードルが低い点が特徴です。そのため、繁華街や中心部など人の集まる地域で新規開業が相次ぎ、競合が激化しています。つまり、歯科業界ではいわゆる歯科医院の供給過多による過当競争が起きているのが問題の本質と言えます。
激化する歯科医院間の患者争奪戦
少子高齢化が進む日本では、どんどん人口が減っていることは誰もがご存知でしょう。しかし、それとは反比例に、毎年歯科医師国家試験の合格者は増え、人口に対し歯科医師数が多すぎるのが現状です。歯科医師の数が多ければそれだけ優秀な先生の数も増えるとは思いますが、一方で惰性的な診療に終始する歯科医師もいるでしょう。すると歯科医院間における診療の質にも格差が生まれることが想定されます。そのため、きちんと下調べもせずに医院を選定すると、対応の質が低い歯科医院に遭遇してしまう可能性も高くなるのです。
経営努力の有無で差がつく現在の歯科医療の現状において、歯科医院では集患をきちんと実現し、健全な経営をするためにも新規患者の獲得・定着は不可欠となります。激しい競争のある都市部に開業している歯科医院は、内装や接遇、Webのデザインに配慮し、オリジナリティを出すなど近隣の医院との差別化を始めています。しかし、それだけでは十分ではありません。なぜなら通院を習慣とする者数のパイを奪い合うことに終始することになってしまうからです。
本当に長期的な歯科医院経営を目指すのであれば、政府が推進する「地域包括ケアシステム」に歯科医院も参入し、訪問診療や高齢者の口腔ケアなど、地域のかかりつけ医としての機能を提供することは使命と言えるでしょう。地域一帯に認められ、地域に根差した愛される歯科医院を目指すことが経営難を脱する鍵となるでしょう。患者のための歯科医療を実践できる医院は、おのずと多くの方に選ばれる存在になるはずです。
深刻な人手不足と広がる地域格差
都市部の歯科医院は供給過多による競争が倒産の要因となりますが、最近増えているのは地方での人手不足による倒産です。産休に入った女性歯科医師の後任を補充できないなど、特に人口減少が顕著な地方ではなかなか人材を確保しづらいという現状があります。
さらに歯科衛生士もすぐに辞めてしまい常に人手不足と言われています。開業する歯科医院は多いのに、常にギリギリの人員で回しているケースが多く、代わりがいないという深刻な状況が常態化しているのです。人件費を抑えようとすると、厳しい環境にさらに人手が減る悪循環に陥っています。加えて、金属の詰め物など材料費の高騰も赤字経営に拍車をかけてしまうのです。
そして、他の医療機関でも同じことが起こっていますが、都市部での新規開業は多いものの、地方の開院数は少なく、特に西日本では歯科医院の倒産が相次いでいます。過疎地域では高額な自費治療の売上もそう伸びないでしょう。収入は伸びないのに費用はかさむ。そんな状況では、地域による医療格差が生まれ、経営をやりくりしていくことに小規模な歯科医院はこれからも頭を抱えていきそうです。
総数が6万を超えると言われる歯科医院ですが、その経営は決して順風満帆なものばかりではありません。しかし、質の高い歯科医療を提供するうえでの競争は健全であり、個人としては増えすぎた歯科医院の淘汰は賛成です。なぜならそれは患者にとってもスタッフにとっても環境の悪い歯科医院ばかりになってはいけないと思うからです。一患者にとってもこれからは、潰れない健全な経営をしている歯科医院選びが今後はより重要になるでしょう。こうした状況下なだけに、地域に密着し良心的な価格設定を掲げる“患者さん想いの医院”が増えるといいなと切に願います。
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【ライター紹介】 ちぃ先生
歯科衛生士の有資格者でありながら多くの女性メディアで活躍中のライター・編集者。現在は女性向けの美容メディアやJJなどのファッション誌などに寄稿している。コスメコンシェルジュの資格を持ち、コスメ・美容への造詣が深い。また、サッカー好きが高じてアスリートフードマイスターの資格も取得している。美容と健康に高い関心と知識を持っており、Ha・no・neでは利用者のQOLの向上を目指し、ためになる情報を発信していきたいと意気込んでいる。
・ちぃ先生の手記まとめPART1 ~美容ライター兼歯科衛生士の知恵袋~
・ちぃ先生の手記まとめPART2 ~美容テク&お口の健康講座~
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