【後編】歯周病専門医が教える!気をつけたいのは女性がかかりやすい「歯周病」3回のタイミング

2019.08.07 interviewHa・no・ne編集部

「ペリオドンタルシンドローム」を招く前にケアしたいこと

女性の歯周病リスクが高まるタイミングは3回ある

女性の歯周病リスク



――女性が歯周病にかかりやすいと言われていますが、それなぜですか?かかりやすいタイミングはありますか?
若林先生 女性は大人になる中で、大きく分けて3回のタイミングで女性ホルモンのバランスが変化します。

(1) 月経が始まる「思春期」
(2) 女性ホルモンを多く分泌する「妊娠・出産時」
(3) ホルモンが低下して閉経となっていく「更年期」

とくに、妊娠と出産は特に口内環境を悪化させることから、歯周病にかかりやすいと言われています。それは、つわりでブラッシングが十分におこなえないことも原因の1つではあるのですが、ホルモンバランスの変化による唾液の質の悪化や、女性ホルモンの増加により、女性ホルモンを餌にする歯周病菌の増加が原因だと考えられています。


――たしかに妊婦さんはお口のトラブルに気をつけるよう、よく耳にしますね。
若林先生 女性ホルモンのエストロゲンが、ある特定の歯周病原細菌の増殖を促し、さらにはプロゲステロンというホルモンが炎症の元であるプロスタグランジンを刺激することから、妊婦は歯肉炎になりやすいとされています。
もし、妊婦さんが歯周病になると陣痛や子宮の収縮が起こり、早産や低体重児出産のリスクが通常の7.5倍にもなるというデータもあります……。ですので、妊娠中の安定期に入ってから月に1回程度、無理のない範囲で歯科医院に行き、検査することを提案しています。



――歯周病リスクを高めてしまう生活習慣とは、どういうものがあげられますか?
若林先生 主に食生活習慣、喫煙、甘味嗜好などですね。とくに、喫煙はお口の中の血流を悪くして、免疫力の低下も引き起こします。乾燥も口内環境悪化の大きな原因となりますが、生活習慣だけではなく加齢による唾液の分泌量の減少や、ストレスによる唾液の質の悪化も考えられるので、普段からよく噛むことが大切です。

最も気になる「歯周病は完治するのか」という疑問

歯周病の完治



――歯周病はしっかり治療をすれば完治するのでしょうか?
若林先生 どの状態を完治と呼ぶのかということにもなるのですが、歯周病の症状自体は治療と日頃のケア、プラークコントロールをしていれば健康な歯茎の状態には回復します。
ただ、中度・重度の症状で1度溶けてしまった骨の場合は歯周組織再生療法という治療法が適応できる症例であれば骨が再生することもありますが、基本的には回復しないので、そういう意味では“元の状態”には戻らないでしょう。
実際に治療後の写真を見てもらえればわかりますが、健康な状態になっても骨が溶けていると炎症が引いた分、歯茎が退縮してしまうので、歯と歯の間に隙間ができてしまいます。歯根面が露出してしまう分、そこが虫歯にならないよう、その後もより一層気を付けてケアしていかないといけません。



――進行度による治療期間の目安は?
若林先生 お口の中は個人差があるので、それぞれ状態によって目安は変わります。ですが、歯周病は軽ければ軽いほど、簡単な治療で改善されますし、回復も早いので結果的に通院回数が少なくなります。逆に、酷くなればなるほど回復は遅くなるので、半年〜それ以上時間をかけて治療する場合が多いですね。


――放置して重度の歯周病になった場合、その末路とは一体……?
若林先生 骨が溶けて歯が抜けている箇所が多い、または残っていても何とかくっついてしまっているだけで結局抜歯をせざるを得ない状態ですと、残念ながらもう歯を残す治療はできません。
中には、若い人でも歯がボロボロという方もいて、もっと早く来てくれていたら……と非常に残念な気持ちになります。何か少しでも歯や歯茎に違和感を覚えたら、手遅れになる前に来院してほしいですね。

全身に広がる歯周病の影響

全身への影響



――歯周病は全身へ影響を及ぼすとありますが、どのような病気に繋がるのでしょうか?
若林先生 歯周病菌は口腔内だけではなく、血管や気道にも侵入して、全身にまわります。歯周病菌が肺に入ると誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まり、歯周病菌が血管に入り込むことで全身の血管で動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まります。
また、糖尿病との関係も密接で、歯周病が悪化すると糖尿病が悪化するし、逆に糖尿病が悪化すると歯周病が悪化するとも言われているのです。
ほかにも、早産、関節リウマチ、アルツハイマーにも関係していることも最近判明したことから、及ぶ範囲が広いだけでなく、引き起こす病が重大な疾病であることも歯周病の恐ろしさと言えるでしょう。



――そのような歯周病と全身疾患に罹患している状態を「ペリオドンタルシンドローム」というのですか?
若林先生 ペリオドンタルシンドロームは「ペリオ(周りの)」「ドンタル(歯)」「シンドローム(症候群)」という意味ですが、歯周炎・歯肉炎など歯周病の症状があり、かつ糖尿病・動脈硬化など歯周病と関連する全身疾患がある状態のことを指しています。症候群といえるほど、歯周病はいろんな全身疾患と密接に関係しているのです。
メタボリックシンドローム、通称「メタボ」という言葉が世の中に浸透したように、今後ペリオという言葉が世の中に浸透して、歯周病がどういう病気かみなさんに知ってもらいケア意識を高めてもらいたいですね。



歯周病は早期発見が大事、罹患すると全身疾患へも影響するということがよくわかりました。また歯周病が治ったあとも、再発しないようにより一層しっかりケアを続けていく必要があります。そのためにも定期的に歯科医院に通い、お口の中を清潔に保ちましょう。

▼取材協力▼

若林歯科医院
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