知れば怖くない歯科医院の機材トリビア

2026.1.1
歯医者のイスはなぜゆっくり?「キーン」という音や青い光の正体は?
~知れば怖くない歯科医院の機材トリビア~
歯医者さんが苦手なあなたへ。機材の「なぜ」には理由がある!/
「このイス、倒れるのが遅すぎてじれったい……」
「あのキーンという音、もう少し小さくならないの?」「口の中が水浸しだけど、これって必要なの?
実は、歯科医院にある道具や機械の動きには、すべて「患者さんの安全と体を守るための深い理由」が隠されています。今回は、知れば知るほど歯科治療への不安が軽くなる、意外な機材トリビアをご紹介します。
トリビア1:イスがゆっくり倒れるのは「脳と血管」を守るため

診察台に座り、歯科衛生士さんや先生がスイッチを押すと、背もたれがゆっくりと倒れていきます。「もっとサッと倒してくれればいいのに」と思ったことがあるせっかちな方もいるかもしれません。しかし、あの「じれったいほどのスピード」には、重要な医学的根拠があります。
急激な血圧変動を防ぐ「優しさの速度」
もし、普通の椅子からベッドへ切り替わるような速さで急激に後ろへ倒れたらどうなるでしょうか? 人間の体、特に耳の奥にある「三半規管」は、急激な姿勢の変化に非常に敏感です。勢いよく頭の位置が下がると、平衡感覚が一時的に狂い、めまいや吐き気を催してしまうことがあります。
また、さらに重要なのが血圧への影響です。 歯科医院に来る患者さんの多くは、多かれ少なかれ緊張状態にあります。緊張して交感神経が優位な状態で、急に水平な姿勢になると、血流が急激に変化して血圧が乱高下することがあります。これにより、立ちくらみのような症状や「迷走神経反射(脳貧血のような状態)」を起こし、気分が悪くなるリスクがあるのです。
あのゆっくりとした動きは、あなたの脳と心臓をびっくりさせないための、緻密に計算された「安全速度」なのです。
トリビア2:あの「キーン!」という高い音と、大量の水の正体

歯医者さんが敬遠される最大の理由、それは耳をつんざくような「キーン!」というあの音でしょう。あの機械は「エアタービン」と呼ばれ、実は驚くべきテクノロジーが詰まっています。
新幹線を遥かに超える「超高速回転」の秘密
なぜあんなに甲高い音がするのかというと、回転数がとてつもないからです。その速度は、なんと1分間に30万〜40万回転!
ジェットエンジンのような超高速回転をしているため、あのような高周波の音が発生します。「そんなに速く回るもので削るなんて怖い!」と感じるかもしれませんが、実はその逆です。回転が速ければ速いほど、ドリルの刃先(バー)のブレが少なくなります。
ブレが少ないということは、「短時間で、かつ痛みを最小限に抑えて」虫歯を削り取ることができるということです。もし回転の遅いドリルでガリガリと削れば、不快な振動が直接頭に響き、削る時間も長くなって、痛みも恐怖も倍増してしまいます。
なぜ口の中が水浸しになるの?
削っている最中、バキュームで吸いきれないほどの水が出て、口の中がいっぱいになることがありますよね。この水は、決して掃除のために出しているわけではありません。実は「歯の神経」を守る命綱なのです。
硬い歯を高速で削ると、ドリルと歯の間には強烈な「摩擦熱」が発生します。もし水で冷却せずに削れば、摩擦熱で歯の温度が急上昇し、その熱で歯の神経(歯髄)が火傷をして死んでしまいます。
あの水は、摩擦熱を瞬時に奪い、あなたの大切な歯の神経をダメージから守るための大切な「冷却水」なのです。
トリビア3:青い光とオレンジ色の盾の正体
虫歯を削ったあと、詰め物をする際にお医者さんが「光を当てますねー」と言って、青や紫の光を数秒間照射することがあります。そして、その光を見ないように、オレンジ色のプラスチック板(シールド)を目の前にかざします。
数秒で固まる「魔法の粘土」
あの光の正体は、熱を出すレーザーではなく、特定の波長を持つ「可視光線」です。 現在、歯科治療の主流となっている「コンポジットレジン」という白い詰め物は、最初は柔らかいペースト状ですが、「特定の青い光を当てると数秒でカチカチに固まる」という非常に便利な性質を持っています。
この光の技術のおかげで、詰め終わった瞬間に食事ができるほどしっかり固めることが可能になり、治療時間の大幅な短縮につながっています。

なぜ「オレンジ色の板」で遮るの?
では、なぜわざわざオレンジ色の板で遮るのでしょうか? それは、あの青い光が非常に強力だからです。直接、長時間見続けてしまうと、目の網膜を傷める可能性があるため、患者さんの目を守る必要があります。
トリビア4:強力なバキュームが舌に吸い付く理由
口の中に溜まった水を吸い取る「バキューム(吸引機)」。ときどき、舌や頬の内側の肉を「ジュボッ!」と吸われてびっくりしたことはありませんか? 実はバキュームには、水を吸う以外にも重要な役割が2つあります。
1.「湿気」をシャットアウトする
詰め物や接着剤にとって、水分や湿気は最大の敵です。少しでも唾液や呼気の湿気が混じると、接着力が落ちる原因になります。
2.「誤嚥(ごえん)」を防ぐ
削った歯の粉や破片が喉の奥に入り込むのを防ぎます。
まとめ:機材の進化は「優しさ」の進化

歯医者さんのイスがゆっくり倒れるのも、機械が大きな音を立てるのも、すべては「いかに安全に、痛みを少なく、そして治療を長持ちさせるか」を突き詰めた結果です。
次にイスに座ったときは、「私の健康を守るための工夫なんだな」と思い出してみてくださいね。














