骨粗しょう症治療の前に歯科受診が必要?知らないと怖い「顎骨壊死」のリスク

2026.03.25 interview歯科タウン編集部


骨粗しょう症治療と「顎骨壊死」の関係

顎骨壊死とは、顎の骨の一部が壊死してしまう病気です。顎骨壊死になると顎の痛みや歯の痛みなどが生じ、病気が進行すると骨の周囲から膿が出たり、骨が歯ぐきから露出した状態となります。さらに重症化すると皮膚に穴が開き、全身の健康状態が悪化する恐れもある怖い病気です。
顎骨壊死の発症頻度は高くはありませんが、骨粗しょう症の治療薬を使用中に歯周病が悪化したり、抜歯などの外科的処置を受けた場合、顎骨壊死のリスクが高まる可能性があります。

山下先生は、骨粗しょう症と顎骨壊死の関係について、次のように説明してくださいました。

「骨粗しょう症の治療薬は、骨を壊す細胞の働きを抑えることで骨粗しょう症の進行を抑えます。しかし、この働きが強すぎると顎の骨の代謝が低下し、細菌に感染したときに顎の骨の修復がうまくいかなくなってしまうのです。その結果、骨が壊死してしまう可能性が出てきます」


骨粗しょう症の治療を始める前には、歯科医院でお口のチェックを!

山下 宗先生

顎骨壊死は、細菌感染を原因として発症する病気です。そのため、お口の中に細菌が多い状態で骨粗しょう症の治療を始めると、顎骨壊死の発症リスクを高めてしまいます。
骨粗しょう症を治療する前に歯科受診をすすめられる一つの理由は、お口の中を清潔にし、感染を招く細菌の数を減らし、顎骨壊死の発症リスクを低下させるためです。また、抜歯などの処置が必要な場合は、治療開始前に可能な限り口腔内の問題(虫歯・抜歯等)を済ませておくことが推奨されます。

山下先生は、骨粗しょう症の治療を始める前には、必ず歯科医院を受診してほしいと言います。

「薬を飲み始めてから歯の問題が見つかっても、簡単に抜歯をすることはできません。また、歯周病が進行していれば、顎骨壊死のリスクが高まります。だからこそ、骨粗しょう症の治療を始める前には、歯科でお口の状態をチェックしておくことが大切なんです」


患者さんの健康を守る「医科歯科連携」

骨粗しょう症治療による顎骨壊死のリスクを抑えるためには、医科と歯科の連携が欠かせません。

「患者さんには健康であってほしいんです。患者さんの健康を守るためには、医科と歯科がばらばらに診療するのではなく、情報を共有しながら治療を進めることが重要だと思っています」

整形外科を受診し、骨粗しょう症の診断を受けた患者さんが整形外科から紹介を受けて山下先生のクリニックを受診されるケースも多いといいます。また、反対に、歯科の治療中に顎骨壊死が疑われ、医科に相談をするケースもあるそうです。骨粗しょう症治療は、患者さんの健康を守る医科歯科連携が進んでいる事例だといえるでしょう。


歯科は“口だけの医療”ではない

山下 宗先生

骨粗しょう症の治療では、歯科と医科の連携が重要な意味を持ちます。しかし、全身の病気の治療と歯科が関連するのは、骨粗しょう症だけではありません。近年の研究では、次のような病気と口腔環境の関係が明らかにされています。
・糖尿病
・心血管疾患
・誤嚥性肺炎 など

「歯科は歯だけを治す場所と思われがちです。でも、お口の健康は全身の健康と密接に関わっています。私たちは歯科治療を通じて、患者さんの歯の健康だけでなく、全身の健康を支えていきたいと思っています」

骨粗しょう症の治療前に歯科を受診し、虫歯や歯周病の治療を済ませれば、骨粗しょう症薬の副作用を抑えることができます。しかし、副作用のリスクを抑えるだけでなく、歯科を受診することで、自分の体の状態を総合的に見直すきっかけにもなってほしいと山下先生は言います。
歯の健康から全身の健康にまで思いを馳せてほしい、そんな願いからやました歯科医院には、血圧測定器や体組成計などが設置されています。やました歯科医院の取り組みについては次の記事“歯医者で血圧測定?歯科医院が目指す地域医療の在り方”で詳しくご紹介しています。ぜひ、併せてご一読ください。


骨粗しょう症治療の開始前には歯科受診を

骨粗しょう症の治療によって骨の状態が改善しても、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が生じると、顎の痛みや腫れ、骨の露出などが起きて治療が複雑化することがあります。安全に骨粗しょう症の治療を受け、健康な生活を維持するためには、骨粗しょう症の治療を受ける前に歯科を受診し、口腔内の環境を整えておくことが大切です。また、骨粗しょう症の治療中も定期的に歯科医院で検診とクリーニングを受け、口腔内環境を清潔に維持することで、トラブルの発症リスクを抑えられます。
医科と歯科の連携によって、より骨粗しょう症治療の安全性は高まるものです。これから骨粗しょう症の治療を開始する予定がある方はもちろん、全身の健康を維持するためにも、一度、歯科医院でお口のチェックを受けてみてはいかがでしょうか。


▼取材協力

山下 宗(やました そう)先生 プロフィール
医療法人 詩慶会 やました歯科医院 院長

「患者さんの不安にしっかり寄り添い、安心して治療を受けていただける環境づくりを大切にしています。10年後、20年後の将来を見据えたお口の健康を守るため、丁寧なカウンセリングとチーム医療で最善の治療を提供します」

東北大学歯学部卒業後、東北大学病院歯科医療センター口腔外科に所属。その後、益子歯科クリニック咀嚼機能研究所にて研鑽を積み、副院長を経て2015年にやました歯科医院を開院。
日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本有床義歯学会などに所属し、ITI(International Team for Implantology)やCIDにも参加。小児歯科相談医や病院登録医、学校医・園医、乳幼児健診担当医として地域医療にも幅広く貢献している。神奈川県歯科医師会 医療管理委員会/青年部副委員長、相模原市歯科医師会 常任理事としても活動し、地域歯科保健の発展にも尽力している。


医療法人 詩慶会 やました歯科医院

医療法人 詩慶会 やました歯科医院
医院住所:〒252-0233 神奈川県相模原市中央区鹿沼台2-12-4
電話番号:042-707-8255
医院HP:https://www.yamashita-shika.net/

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