歯を失うと認知症になるリスクが高まる!?「噛むこと」の重要性とは?
噛むことと認知症の関係性とは?
咀嚼(そしゃく)=噛むという行為は、食べ物を噛んで消化しやすい状態にして胃に運ぶための最初の工程ですが、同時に知的機能の向上にも繋がっています。みなさんは「ガムを噛むと頭の回転が良くなる」という話を聞いたことがありませんか?
信じない方もいらっしゃるかもしれませんが、実際、噛むことで頭の回転は良くなるという研究結果が出ています。なぜなら、咀嚼筋を使って顎を動かし、ものを噛み締めることで、脳に直接的に刺激を送り活性化させているからです。そのため、歯を失って今まで通りに噛むことができない状態が続いてしまうと、脳に刺激が伝わらなくなり認知症になるリスクが高まるのです。
認知症にならないために普段できることとは?
認知症の予防対策には、さまざまな方法がありますが、お口のケアという点では何をしたらいいのでしょうか。
口内を健康に保つ
現在の日本の歯を失う原因第一位は、歯周病です。そして日本の成人の約8割もの人がかかっているか、予備軍と言われるほど蔓延している代表的なお口のトラブルです。
歯周病は、口内のプラーク(歯垢)の中に潜む細菌の働きにより歯ぐきに炎症が起き、徐々に進行し、最終的には歯を支えている骨までも溶かし歯が抜けてしまうという恐ろしい病気です。プラークは、丁寧にブラッシングすればセルフケアでも比較的落とすことができますが、プラークが歯についている状態が長期間続くと歯石に変わり、その名の通り石のように硬くなります。この状態になるとご自身のブラッシングのみでは落とせないので歯科医院でクリーニングを受けなければなりません。ですから知らない間に歯周病にかかっていることがあります。
つまり、せっかく健康な歯が残っているなら、やはりその歯を将来使用できるように保つことがなによりも重要です。歯周病のみならず、虫歯などお口のトラブルが原因で歯を失うというリスクを極力減らすためにも、常に口内は清潔に保つことを心がけましょう。また積極的に歯科医院の定期検診やクリーニングを受診することをおすすめします。
もし、歯をなくしてしまったら……?
何らかのトラブルで歯を失ってしまったとき、「1本くらい大丈夫」「奥歯だから目立たないし」とそのままにしてしまう人がいますが、これは間違いです。たとえ1本でも歯の機能を回復することで、噛むという行為が快適に守られます。
補綴(ほてつ)治療には1つの選択肢があります。1つはインプラント治療。顎の骨にインプラント(人工歯根)を埋め込み、その上に人工歯を装着するというものです。第3の永久歯と称されるほど自分の歯に非常に近い状態の環境を作ることができるので、十分な咀嚼力を得ることができ、その分脳も活性化します。ただし、インプラントは自由診療なのでとても高額です。外科手術も伴い、治療期間も比較的長くなるのでメリットと注意点をよく理解してから決めましょう。
2つ目は入れ歯です。ご自身のお口に合った入れ歯なら、十分な刺激を脳に与えることができると言われています。入れ歯には「保険診療」と「自由診療」の2種類があります。保険が適応される入れ歯は安価に作れますが、慣れるまで違和感があったり、見た目にも目立つといった注意点があります。一方、「自費診療」の入れ歯は、装着時の違和感を少なくするためにシリコンや金属などが使用されているものが多く、素材はさまざまで機能性に優れています。その分価格は保険が適応されないので比較的高額になります。
歯を失うということは人生にかかわる
このように、食べ物をしっかりと噛めなくなることで、認知症になるリスクが高くなります。たった1本でもその後の人生に大きくかかわります。歯が抜けてしまったのに放置してしまっているという人は、美味しい食事や快適な会話を楽しむためにも早めに入れ歯やインプラント治療で、歯の機能を回復させましょう。また、健康な歯が残っているという人は、その歯を一生使っていけるように普段からセルフケアに努めましょう。