世界初!歯科治療シミュレーションシステムとは

2018.04.20 medicalオオタカ

世界初となる歯科治療シミュレーションシステムとは

世界初となる歯科治療シミュレーションシステムとして注目されるのは、ソフトバンクグループの「リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社」と歯科機器などの開発・販売で有名な「株式会社モリタ」が開発したMR技術を使った歯科治療シミュレーションシステムです。このシステムによって、歯科手術トレーニングが行えることで治療技術の向上が期待できます。

シミュレーションシステムでは、歯科医師がヘッドマウントディスプレーを装着すると、ステレオカメラが患者の口の中や患部の映像を映し出します。同時に歯科医師が見る映像では、本来肉眼では見えないような患部の奥にある神経や血管の位置、形状などの情報がCG画像として重なります。

歯科医師は傷つけてはいけない神経や血管などをまるで目視ができ、より精度の高い実践に近い治療が体験可能です。また、治療が事前の計画通り正確に行われているかなども現実の映像とCG画像を同時に見ながら確認することもできます。

これまでの歯科治療現場でもVR(Virtual Reality=仮想現実)技術やAR(Augmented Reality=拡張現実)技術が応用されてきましたが、両者の特徴を兼ね合わせたMR技術を活用したシミュレーションシステムは、世界初の登場となります。

今のところでは、歯科手術のトレーニングに用いることを目的としていますが、2017年にドイツのケルンで開催された「第37回ケルン国際デンタルショー」でデモンストレーションが行われ、これからの歯科治療の変革に寄与する開発だと、大きな注目を集めました。

MR技術を使った歯科治療シミュレーションシステムのメリット

最近では歯科治療現場でもデジタル化が急速に進み、さまざまな最新機器による治療が行われています。しかし、最新のデジタルレントゲンや歯科用CT、CAD/CAMなどのテクノロジーを駆使したとしても、完璧な治療を行えるとは限りません。なぜなら治療の成否は担当する歯科医師に委ねられるからです。

しかし、MR技術を使ったシミュレーションシステムを活用することで、デジタルレントゲンや歯科用CT、CAD/CAMなどの画像やカルテ情報などを集約化し、ヘッドマウントディスプレーに合成するように重ねて表示できます。これは患部の症状を正確に把握し、連動した治療を行ううえでものすごい技術革新だと言えます。

この技術を活用することで、歯科医師は視線を逸らすことなく、患部と患者の情報をリアルタイムで取り入れながら治療に専念することが可能になりました。つまり、これまで歯科医師の経験と勘が重視されてきた歯科治療に、より実践的なテクノロジーが実用化されることが期待できるのです。

まずは教育現場で活用

MR技術を駆使した歯科治療シミュレーションシステムは、まずは歯科医師の手術トレーニング用として使われる予定です。患者のさまざまな情報を一元化し、経験や勘だけに頼らない安全な治療技術を身につけられるので、総合的な治療が行える優秀な歯科医師がたくさん誕生することが期待されます。

臨床での使用に関しては国の認可に時間がかかりますから、実際の医療現場にお目見えするのはまだまだ時間がかかりそうです。もちろん、将来的に臨床現場での活用することも見据えて、音声などのさまざまな機能もすでに内蔵されています。

臨床で活用されるようになれば、現状では経験豊富な歯科医師にしかできない治療が、より多くの人が対応できるようになったり、通院日数を減らすことができたり、コストを下げたりとさまざまなメリットがあります。そして、何よりも患者さんにとってより安心・安全な治療が実現できる可能性が高まるのではないでしょうか?

治療技術の進化に期待

歯科医院

最近ではAI(Artificial Intelligence=人工知能)など科学技術の進化は目覚ましいものがあります。そうした技術が歯科治療の現場で活かされるのは歯科医師にとっても患者にとってもメリットがあると言えます。MR技術を使った歯科治療シミュレーションシステムもその1つです。早く臨床現場で使用できる日が来ることを期待しましょう。

あわせて読みたい

レコメンド

関連記事