歯医者のギモン…歯科衛生士と歯科医師の“クリーニング”って何が違うの?~ちぃ先生の手記第40回~

2019.05.22 medicalちぃ先生

診察中に担当スタッフが変わってしまうのはなぜ?

歯科衛生士or歯科医なのは「クリーニングスキル」の差?

私が現役の歯科衛生士として臨床の現場に立っていたときにも、実際に患者さんから「どうしてクリーニングは歯科衛生士がするの?」と尋ねられた経験が多くあります。確かに歯科医院では当たり前のように、理由も説明されずに途中でクリーニングをするため歯科医師から別のスタッフに交代するのは日常茶飯事……ですが、患者さんにとっては訳もわからず、不安に感じてしまうこともありますよね。

この交代のタイミング、歯科医師が診察中にどこかへ行くわけではありません。席を外したドクターは患者さんの“補綴物(ほてつぶつ)”がお口の中にフィットするよう見えないところで研磨作業をしています。補綴物とは、歯が欠けてしまったり、紛失してしまったりした場合に使うクラウンや入れ歯など歯の機能を補う人工物のことです。歯科医師は患者さんのために着々と次の対応の準備をしているので、ご安心ください。

それに歯石取りやクリーニング、歯みがき指導は“予防処置”と言って、歯を健康に保つために必要な歯科衛生士のメイン業務となります。もちろん、ドクターもクリーニング自体はできます。しかし、歯科衛生士学校でも徹底的にクリーニングの授業でやり方を学びますし、勤めてからもクリーニングをし続けています。そのため、歯科医師よりも専門的に技術を磨いている歯科衛生士の方がクリーニングスキルが高いというのは事実としてあります。ドクターの中には、歯周病を専攻していて歯石の除去が治療に直結する方だと、クリーニングがとても丁寧で上手なケースもあります。その場合は、自費でのクリーニングになることが多いので、後にくわしく解説しますね。

歯科医師と歯科衛生士の行えるクリーニングの違いとは?

実は歯科医師と歯科衛生士が行う歯石除去には明確な線引きがあります。一般的には「歯周ポケットが5mm以内であれば歯科衛生士・歯科医師が歯石除去を行って良い」とされています。歯周ポケットは歯ぐきと歯の境目にできる溝のことですが、どれくらいの深さかによって歯周病か否かを検査しています。歯周ポケット5mmはそれなりに深い数値なのですが、目視で除去できる歯石はこれくらいだと定義されています。

一方、6mm以上の深い歯周ポケットになると目視下での除石が難しいので、歯周外科治療の対応範囲になってきます。こちらは歯科医師免許を持ったドクターしか外科治療を行えません。歯周外科治療での歯石とりは、麻酔をして歯肉を切開してはがし、根元が見える状態にしてクリーニングを行います。もはや手術の領域になるので、歯科衛生士は関与することができないのです。

歯科医師免許が必要な歯周病外科治療とは?

放っておくと重症に……進行した歯周病には歯周外科治療

外科手術

先ほどのページで説明した歯周外科治療は、症状が重症にならないとくわしい内容について知る機会は少ないでしょう。歯周病が進行し、歯ぐきの基本治療での歯石の除去が難しい場合や、歯周ポケットが非常に深い場合は検査を行ったうえで歯周外科治療(手術)を提案される可能性もあります。ここでは、歯周病が重症化した場合に行う歯周外科治療の種類や方法について紹介します。

(1)歯周病の治療

深い歯周ポケットの中を掃除し、大きな腫瘍や膿を搔爬術(そうはじゅつ)を行うことで歯石を取り除きます。

(2)インプラントなどの治療

歯周病によって歯を失った箇所に人工の歯を埋入します。検査や治療完了まで時間がかかります。

(3)骨を増やすなど歯肉の移植治療

失った骨や歯肉の再生治療です。定着させるのが難しい治療です。


歯周病が重症化すると、歯の周りの骨が溶けてしまうケースもあります。一度溶けた骨は元の状態には戻らないので、外科治療は画期的な再生療法と言えるでしょう。しかし、自費治療となるので全額が自己負担です。重度の歯周病に悩む方のすべてが満足な治療を受けられるとは限りません。そのため、歯周病が悪化する前に、歯科医院でのクリーニングを心がけるようにしましょう。クリーニングは歯周病の予防に効果的なので、定期的に歯科医院に通い予防の徹底に努めてください。

❤ちぃ先生から一言❤歯周病が進行しないように毎日のケアが大切!

歯周病の予防には日頃みなさんが自宅で行う“ホームケア”がとても重要です。毎日の歯磨きも予防の一環なので、お家でできるブラッシングは丁寧に行ってくださいね。また、3ヶ月に1回は歯科医院でクリーニングをすると歯の健康の維持が期待できます。歯に異常を感じる前から小まめな定期検診で、歯周病予防をしてください。

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【ライター紹介】 ちぃ先生

ちぃ先生

歯科衛生士の有資格者でありながら多くの女性メディアで活躍中のライター・編集者。現在は女性向けの美容メディアやJJなどのファッション誌などに寄稿している。コスメコンシェルジュの資格を持ち、コスメ・美容への造詣が深い。また、サッカー好きが高じてアスリートフードマイスターの資格も取得している。美容と健康に高い関心と知識を持っており、Ha・no・neでは利用者のQOLの向上を目指し、ためになる情報を発信していきたいと意気込んでいる。

・ちぃ先生の手記まとめPART1 ~美容ライター兼歯科衛生士の知恵袋~
・ちぃ先生の手記まとめPART2 ~美容テク&お口の健康講座~

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