オーラルフレイル予防のために実践すべき8020運動
8020運動について
8020運動とは?
8020運動は、“80歳になっても20本以上の歯を残す”ことを目的としており、1989年に厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会が中心となってスタートしました。ちなみに20本という本数は、人間が咀嚼(そしゃく)をスムーズに行える最低本数とされています。つまり、人間の歯は親知らずを抜いて上下28本あるので、9本以上抜けると、咀嚼がスムーズに行えなくなってしまうのです。
厚生労働省が発表した「2016年版の歯科疾患実態調査」では、80歳の平均残存歯数は14本、また、80歳以上で20本以上残存歯がある人の割合は50%を超えました。日本歯科医師会では、2009年3月に“8020運動の達成者が5割以上”という新しい目標を掲げているので、昨年目標を初めて達成したということになります。
8020運動の達成者はQOLを良好に保っている
80歳で20本の歯を残すことができれば、QOL(Quality of life/クオリティオブライフ)が高まることが期待できます。「自身の歯で食事ができる」「入れ歯の心配がいらない」という事実は、80歳を超えた高齢の方にとって高い生活の質を保てていることを意味するでしょう。
80歳以上の方々には、歯を残す取り組みを意識してもらうことで、見た目にも肉体的にも若々しい姿をいつまでも保っていてもらいたいところです。
オーラルフレイルについて
オーラルフレイルとは?
8020運動の根本には、オーラルフレイルを未然に回避することが一つの目的だと言えます。オーラルフレイルとは口腔機能が衰えることで、身体的な衰えである“フレイル”が歯や口に起きている状態です。
オーラルフレイルが起きるとQOLは著しく低下し、肉体的・精神的充実感が得られにくく不健康な状態に陥りやすくなります。
オーラルフレイルによって起こる影響
オーラルフレイルは、主に“発音”、“咀嚼”、“表情”など生活に欠かせない要素に影響を与えます。では具体的にはどのような不自由が発生するのでしょうか。
・発音
私たちが普段何気なく行っている“発音”は、実は食べる以上に舌や顎、頬などの複雑な運動を必要とします。歯を失うことによって抜けた部分から空気が漏れてしまうことで、発音がしづらくなり、QOLが低下します。
・咀嚼
歯の大切な役割の一つである咀嚼が口腔機能の低下により、うまく行えなくなると、食べ物を飲み込む“嚥下”、身体に栄養を吸収する“消化”にも悪影響を及ぼします。満足に咀嚼し嚥下することができなくなるため、食べ物が大きい状態で胃に運ばれ、消化不良を起こします。
・表情
笑顔などの表情を作っているのは、顔の至る所に存在する表情筋ですが、オーラルフレイルが起こることで、特に口周りの表情筋が衰えてしまうため、笑顔が硬くなったり、不自然になったりしてしまいます。
オーラルフレイルを予防するためには
・定期的な歯科検査
オーラルフレイルを予防するには、定期的な歯科検査が必要不可欠です。セルフケアの徹底は当然重要ですが、それだけでは限界があります。定期的な検査は主に、虫歯や歯周病のチェックをはじめとして、さまざまな口腔内のトラブルを検査し、症状がある場合には早期に発見し、治療に移れます。
また、ブラッシング指導や口腔内についての相談もできるため、定期検診を欠かさずに受診することでQOLを高めることにつながります。
・丁寧な歯磨き
歯磨きはオーラルフレイルの予防に直接的に結びつくものです。歯磨きを正しく丁寧に行うことを習慣付ければ、QOLを高く維持できます。歯科検査で正しいブラッシング方法を学び、口腔内を常に清潔な状態に保てるようにしましょう。
・生活習慣の見直し
虫歯や歯周病などは生活習慣の乱れによって悪化招く恐れがあるため、不規則な生活をしている場合は、見直すことも大切です。食事の摂り方や運動量などを見直すことがオーラルフレイルの予防につながります。
8020運動を実践してみましょう!
8020運動はオーラルフレイルを予防し、歯をなるべく残すことでQOLを高く保つことを目的としています。オーラルフレイルを予防するためにもっとも大切なのは、定期的に歯科検査を受けることなのは、もはや言うまでもありません。
セルフケアにプラスして、口腔内のプロフェッショナルに診てもらうからこそ気づけることもたくさんあるので、定期検診を習慣化することが大切です。そして、“80歳になっても20本以上の歯を残す”8020運動の達成を目指しましょう。