魚が腐ったようなニオイがする!「魚臭症」の原因と対処法
魚臭症ってどんな病気?
上述の通り、魚臭症になると口や体から魚の腐ったような悪臭を発するようになります。この悪臭の正体は「トリメチルアミン」という化合物で、魚臭症は「トリメチルアミン尿症」とも言われています。トリメチルアミンは、タンパク質が変化することで発生します。魚の鮮度が落ちてくるとこのトリメチルアミンが発生して生臭いニオイがするのです。
トリメチルアミンは、私たちが食べたものが腸内で分解されるときにもつくられています。通常はきちんと分解されますが、何らかの原因で分解されず体内に残ってしまい、それが呼気や汗に混ざって排出されるのが魚臭症のメカニズムです。
魚臭症の原因
通常、私たちの体内に発生したトリメチルアミンは、肝臓でつくられる「フラビン含有モノオキシゲナーゼ」という分解酵素によって分解され、無臭の物質になります。そのおかげで体に魚臭さが残ることはありません。
ところがこの分解酵素が何らかの理由で欠落してしまうと、トリメチルアミンが分解できなくなってしまうのです。分解酵素が欠落する理由としては、主に以下の2つだとされています。
・先天的に欠如しているため
・肝臓の機能低下により酵素の働きが弱くなるため(後天的)
とはいえ魚臭症の原因はまだ明確になっていないのが現状です。症例もあまり多くないため、医療機関でも検査・治療ができるところは少ないと言えます。
魚臭症改善のポイントは食生活!
残念ながら、魚臭症の治療法はまだ確立されていません。ただし、食生活を見直すことでニオイはかなり軽減されることがわかっています。ポイントとなるのは、トリメチルアミンのもとになる成分が含まれる食べ物を控えること。その主な3つの成分は以下の通りです。
コリン
コリンは水溶性のビタミン栄養素で、動脈硬化を防いだりアルツハイマーを改善したりする効果が期待されています。卵、ベーコンなどの加工肉、レバーなどの内臓、そら豆や大豆などの豆類に多く含まれています。また、ブロッコリーやカリフラワーなどのアブラナ科の野菜にも含まれているため、過剰な摂取は控えましょう。
レシチン
レシチンは体に必要な栄養素を取り込み、同時に不要な老廃物を排出してくれる役割を果たす成分です。また、血中のコレステロールを下げたりシミやソバカスの予防にもつながったりするとされています。卵や大豆、ごま油やウナギに多く含まれていますが、魚臭症の方は過剰摂取に注意したほうがいいでしょう。
トリメチルアミンオキシド
トリメチルアミンオキシドは魚介類特有の成分で、トリメチルアミンの酸性化合物です。魚の鮮度が落ち、腐った状態になるとトリメチルアミンオキシドが分解されてトリメチルアミンとなり、生臭いニオイを発します。イカやタコなどの軟体動物、エビやカニなどの甲殻類、サメやエイなどの海水魚に多く含まれているので摂りすぎに注意が必要です。サケやマグロ、カツオなどの赤身部分は比較的含有量が少ないようです。
食事療法で対処するときの注意点
コリンやレシチンといった成分は、体の機能を維持していくために一定量の摂取が必要です。魚臭症に配慮するあまり、極端に摂取量を減らしてしまうと栄養が偏って体に悪影響が出ることが懸念されます。
魚臭症かも……?と思ったら、まずは医師の診察を受け、相談・指導のもと食事制限をするようにしてください。
食事療法以外の対処法とは
魚臭症を改善するため、医療機関において食事療法以外の方法がとられることもあります。下剤を使用して食べ物が腸内に留まる時間を短くし、トリメチルアミンの発生量を減らしたり、腸内洗浄をしたりして腸に働きかける方法などがあります。また、肝機能を向上させるために薬物療法がとられるケースもあります。
ニオイは自分だけでなく周囲にも影響を与えるため、一刻も早く改善したいものです。しかし、珍しい病気だからこそ魚臭症の疑いを感じたら、自己判断ではなく医療機関に相談するようにしましょう。