“虫歯リスクを数値化”する世界基準の予防歯科 ~「第3回CAMBRA™講演会」レポート~
《講演内容》
2017年11月19日(日) SMBCホール
第3回CAMBRA™講演会
主催 株式会社ヨシダ主催
共催 株式会社KIDS DENTAL PARK 株式会社博報堂
講師 パシフィック大学 ダグラス・ヤング教授
ヤング教授が語るキャンブラの優位性
今回の講演会に登壇したヤング教授は、来日するのは初めてのようで日本人のホスピタリティーに非常に感激したとまず挨拶。そして、トイレの蓋が自動で開いたりと閉じたりするなど技術革新に驚いたと語り、会場を笑わせました。しかし、先進的なトイレとは相反して予防歯科においてはまだまだ進歩する余地があると説き、キャンブラの優位性について説明を始めました。
キャンブラとは「Caries Management By Risk Assessment/リスク評価に基づくう蝕管理」の略称。歯科先進国・アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部長フェザーストーン教授が提唱する虫歯予防法です。虫歯は「病変因子」と「防御因子」のバランスによって発生すると考えられており、口腔内の防御因子が低下すると虫歯になりやすい状態になると言えます。その基準は口腔内のATP(アデノシン三リン酸)の数値であり、それでお口の中の環境の良し悪しを判定。口腔内の状態を測定することによって正しい予防を実践することを目的としています。
日本ではまだあまり馴染みがないキャンブラですが、アメリカではすでに広く普及しています。全米65校ある歯科大学のうち40校が教育プログラムとして導入している実績が物語るように、むしろ当たり前に行われている予防法です。日本では予防歯科の意識が徐々に根づきだした段階ですが、キャンブラの導入が本格化することで世界基準の予防歯科が一気に浸透するかもしれませんね。
口腔内環境の測定に使用する「カリスクリーン」
ヤング教授は非常に有意義なものでしたが、同時に非常に専門性が高い内容でした。そのため、Ha・no・ne編集部Tも話についていくのがやっとでした……。講演を終えて会場の外に出ると、ヤング教授が話していた口腔内環境の測定に使用する機器「カリスクリーン(CariScreen)」がありました。
カリスクリーンとは口腔内の清掃状態、つまり虫歯リスクをその場で測定して、わずか15秒で結果を数値化できる機器です。日本でもすでに普及している虫歯の進行状況を数値表示する「ダイアグノデント」という診断装置の存在については知っていましたが、リスクについても数値化できることに驚きを隠せませんでした。歯科医療の発展を肌で実感しましたね。
カリスクリーンの使い方は非常に簡単。専用スワブで歯面をなぞり、カリスクリーン本体にセットして15秒もすれば測定値が表示されます。測定値は0~1,500がローリスク、1,501~9,999がハイリスクというシンプルなもの。口腔内の清掃状態をわかりやすく把握できるので、患者さんのモチベーション向上にもつながりそうです。迅速に、そして痛みも伴わずに口腔状態を知れる優れものということで、カリスクリーンは将来的に日本の歯科医院でも広く普及していきそうな予感がしますね。
その他にも予防歯科に関連する製品が多数展示
カリスクリーンの他にも会場外には、ヨシダさんが取り扱っている予防歯科用の製品が多数展示されていました。キャンブラのシステムを導入する場合はもちろん、今後、予防歯科に力を入れていきたいという歯科医院さんにとっても非常に興味深い製品が多数並んでいました。しかし、こうして陳列されている歯科の最先端の製品を目の当たりにすると、医療従事者だけなく一般人もこの流れに取り残されないようにきちんと勉強することが大切なのだと痛感させられますね。
今回の講演会を通して感じたのは、歯科医療におけるテクノロジーの進歩です。“予防歯科の観点”でリスクを可視化できる機器が歯科先進国・アメリカではすでに一般的に導入されています。そして、近い将来、日本でも当たり前になるかもしれません。「歯医者=治療=痛いの考えは時代遅れ」とヤング教授が話していたように、今後はより歯科医療の現場は治療よりも予防重視になっていくことでしょう。