歯医者にすべき?味覚がおかしい際の検査機関
味覚の検査は耳鼻咽喉科
まず覚えておくべきなのが、味覚の検査を受けられるのは耳鼻咽喉科であるということです。「味覚がおかしい気がする」「味覚が変わった原因が知りたい」というときには、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。
また、病院によっては味覚専門外来を設けているケースもあります。近くの病院に味覚専門外来があれば、受診することをおすすめします。ただし、味覚専門外来は数が少ないため予約待ちになることも少なくないようです。受診する際には早めに予約するようにしましょう。
味覚の検査方法
気になる味覚を感知しているかどうかの検査方法ですが、基本となるのは「電気味覚検査」と「濾紙(ろし)ディスク検査」の2つです。この2つの方法で舌の部位別に検査を行い、味覚に異常があるか、またどのような異常があるかについて調べます。
検査1:電気味覚検査
電気味覚検査は、定量検査(結果が数値として現される検査)として多く用いられます。この検査では電気味覚計の電極の接続部を舌に密着させて電気を流し、どのくらいの電気刺激なら感知できるのかを調べます。なお人が電気味覚を感じるのは1~400μAの範囲だとされており、それ以上に強い電気刺激を与えると痛みが生じます。
検査2:濾紙ディスク検査
電気味覚検査が定量検査に用いられるのに対し、濾紙ディスク検査は定性検査(結果が陽性または陰性で現される検査)に用いられます。これは試料溶液を浸した濾紙を舌の上に乗せて味覚を確かめる方法で、甘味、塩味、酸味、苦味の4つを測定します。味が感知できないときには、試料溶液の濃度を上昇させて再度測定します。
唾液の検査方法
味覚がきちんと感知できなくなる原因はさまざまですが、唾液の分泌量が減るドライマウスはその1つとして考えられています。唾液を検査する方法としては、主に「安静時唾液量測定」「ガムテスト」「唾液腺シンチグラム」の3つがあります。
検査1:安静時唾液量測定
唾液の分泌量は、刺激時と安静時で異なります。安静時の唾液総分泌量は0.1~0.5ml/分が正常であり、0.1ml/分以下は異常値とされます。安静時唾液量の測定方法としては、乾いたガーゼを噛んで重量の変化を測定する方法や、舌と口蓋の間に挟んだシュガーキャンディの重量の変化を測定する方法などがあります。
検査2:ガムテスト
味のないガムを10分間噛み、その間に分泌された唾液の量を測定します。このときに分泌された唾液が10ml以下だとガムテスト陽性となり、唾液量が少ないと判定されます。
検査3:唾液腺シンチグラフィー
唾液腺シンチグラフィーは画像診断法の1つで、放射性同位体を注射してその分布をみることで唾液腺の機能を調べます。この検査で使用される放射性物質は本来であれば数分で唾液腺に移動しますが、ドライマウスの原因となるシェーグレン症候群である場合には移動速度が遅れる、唾液腺に集積されないなどの結果が出ます。
その他の検査
味覚検査と唾液検査以外で行われる検査としては、血液検査、心理テスト、嗅覚検査などが挙げられます。
その他の検査1:血液検査
偏った生活習慣やダイエットによって亜鉛が不足すると、味覚が低下することがわかっています。血液検査では、主に亜鉛の値を調べます。
その他の検査2:心理テスト
味覚が変わる原因の1つとして挙げられるのが、心理的ストレスです。そのため、味覚がおかしくなった原因を調べる目的で心理テストが行われることがあります。
その他の検査3:嗅覚検査
風邪で鼻が詰まったときに味がよくわからなくなった経験をしたことがある人は多いと思います。このことからもあきらかですが、嗅覚に異常があると味覚にも影響を与えることがあります。
他の診療科を紹介されることも
味覚を専門としているのは耳鼻咽喉科ですが、味覚がおかしくなる原因は非常に多岐にわたります。たとえば、糖尿病をはじめとした全身疾患の影響によって味覚がおかしくなるなどのケースもあります。この場合は耳鼻咽喉科で治療することはできないため、他の診療科を紹介されることになるでしょう。
なお、味覚に異常を感じている人の7割は亜鉛が欠乏していると言われています。実際に、亜鉛製剤を処方された患者さんの6~7割は味覚が改善する傾向にあるそうです。そのため、味覚異常が認められると多くの場合は亜鉛製剤を処方されています。
味覚の異常を感じたら耳鼻咽喉科、あるいは味覚専門外来へ
味覚が少しおかしいと思っても、忙しさから受診に至らない人も多いようです。しかし、味覚は食事を楽しむうえで欠かせない感覚であり、人生をより豊かにするうえでは大切な要素だと言えます。また、全身性疾患が原因で味覚に変化が生じている可能性もあります。味覚が変わったと感じたり、不安を覚えたりした場合は、ぜひ耳鼻咽喉科、あるいは味覚専門外来を受診してみてください。