過半数が治療せず!?子どもの虫歯放置の現状~ちぃ先生の手記第3回~

2018.09.11 medicalちぃ先生

増加傾向にある歯科未受診の子ども

2018年の6月7日、全国保険医団体連合会は全国の小中学校などに通う子どもの口腔状態や受診状況に関する「学校歯科治療調査」の結果を発表しました。後に日本経済新聞でも取り上げられたその発表は、実にショッキングなものでした。その内容とは調査に答えた小学校の約4割(39.7%)で虫歯が10本以上あることなどが要因で咀嚼(そしゃく)が困難な「口腔崩壊」に陥っているということ。そして、受診の必要があっても未受診のままの子どもが半数以上(52.1%)にも上ったという2つの衝撃の事実でした。

虫歯放置や未受診の割合がここまで高くなってしまった要因として、主に「経済的な問題」や「親の労働環境」が挙げられているそうです。「母子家庭のため費用や時間がなかった」という貧困が子どもの歯科治療を妨げるという何とも悲しい現状が明らかになりました。

しかし、実際はひとり親の家庭であれば、医療費控除の関係で子どもの医療費はタダになります。同伴して通院できないという意見に関しても少し疑問であり、小学校の高学年くらいになると1人でも近所の歯医者さんまで行けると思います。

結局のところ、親御さんが子どものお口の状況を深刻に考えておらず、口腔崩壊に陥っているのを見て見ぬふりをしているのが現状のようです。特に医療費控除されることを知らず、虫歯を増やしてしまうのは本当にもったいないことだと思いますので、まずは近くの歯科医院に相談することをおすすめします。そうすれば、経済的な問題があっても何とか治療する術を歯科医師や歯科衛生士と一緒に考えることができるのです。

虫歯放置で口腔崩壊に陥るケースも

「口腔崩壊」という非常に怖い言葉も出てきましたが、10本以上の虫歯があって歯の根っこしか残っていない、まさにお口の機能を果たせずに崩壊している状況を指すようです。私の臨床経験から、大人でもとんでもなく口腔状態が悪い方もいるので、そうした事態に陥ることは決して珍しいことではないのですが、「乳歯で虫歯も生え替わるので放っておいた」という誤った認識は改めた方がいいでしょう。

虫歯は放っておくと、どんどん症状が進行して根まで進みます。乳歯が生え替わる時は大人の歯に押し上げられて抜けるため、乳歯の虫歯が根まで進行していると永久歯にも感染しやすくなります。生えたばかりの永久歯はまだ柔らかく、細菌にも感染しやすい状態です。虫歯が10本以上ある口腔内は非常に細菌が繁殖している状態だと思われるので、永久歯も虫歯になりやすいと言えるでしょう。子どもの頃の虫歯を放置したばかりに、大人になってから口腔崩壊を起こしてしまうケースもあるそうです。

虫歯を放置するということは、口腔崩壊に陥る危険性があるため、子どもの将来の健康を大きく脅かすことになりかねません。子どもの成長を案ずるのであれば、虫歯をそのまま放置せずに、必ず歯科医師など専門家に診てもらうようにしましょう。

口腔衛生への関心向上が急務に

検診

顔や体とは異なり、お口の中は外から状態を把握しにくい箇所であるため、ついついケアが後回しにされてしまいがちです。特に親御さんが忙しい家庭では、お子さんのお口の健康まで手が回らないというのが現実なのでしょう。しかしながら、虫歯を放置すると前述したように将来的に口腔崩壊を起こしてしまう恐れがあります。ひとり親家庭であれば、子どもの医療費は控除されるのでむしろ専門家のケアを受けやすいとも言えます。医療費控除について知っているだけでも救われるお子さんはたくさんいるはずです。

また、親御さん自身が歯医者嫌いなことが理由で、お子さんの受診の機会が減ってしまっているケースもあります。虫歯が進行すればするほど何度も通院したり、痛みを伴う治療を受けたりすることになるので、自分の好き嫌いが原因でお子さんを苦しむことがないようにしましょう。虫歯は軽度のうちに治療を進めた方が負担も減ります。きちんと親御さんがお子さんの症状に向き合うことが大切なのです。

後は食生活にも気を配る必要があります。かつて診察したお子さんの中には、親御さんが夜寝る前に好物だという理由で甘いジュースを飲ませてから布団に就かせているという家庭の話を耳にしたことがあります。そのお子さんのお口の中は、まるでエナメル質が初めから欠損しているのかと感じるほど、歯のほとんどが溶けてしまっていました。糖分は虫歯菌のエサになるので甘い物は控えるか、せめてジュースを飲んだ後は歯磨きしておくべきです。可愛いお子さんの将来のためにも、口腔衛生への関心は強く持っていておいてほしいですね。

❤ちぃ先生から一言❤子どもの将来を台無しにするのは“親の無関心”

「学校の歯科検診で虫歯が発見されたら、治療はもちろんフッ素塗布など予防処置もできるので、すぐに歯科医院を受診してほしいですね。親御さんの方でなかなか通わせる時間が取れないというのもわかりますが、歯科医院での治療は医療費が控除されるものもあるので、お子さんのこれからの人生を考えて行動してもらいたいと思います。虫歯は初期であればあるほど、少ない時間で通院せず治療することができます。少子化対策のため、現在は中学生まで医療費が控除されているので「歯科治療はお金がかかる」という偏見や先入観を捨て、歯科に対する関心を持ってほしいと思います。

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
【ライター紹介】 ちぃ先生

ちぃ先生

歯科衛生士の有資格者でありながら多くの女性メディアで活躍中のライター・編集者。現在は女性向けの美容メディアやJJなどのファッション誌などに寄稿している。コスメコンシェルジュの資格を持ち、コスメ・美容への造詣が深い。また、サッカー好きが高じてアスリートフードマイスターの資格も取得している。美容と健康に高い関心と知識を持っており、Ha・no・neでは利用者のQOLの向上を目指し、ためになる情報を発信していきたいと意気込んでいる。

・ちぃ先生の手記まとめPART1 ~美容ライター兼歯科衛生士の知恵袋~

------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

あわせて読みたい

レコメンド

関連記事