歯科医師が「親知らずの治療」を徹底解説! ~抜歯の有無・タイミング・メンテナンス~

2018.12.18 interviewHa・no・ne編集部

歯並び悪化の原因に!?親知らずを抜いたほうが良い理由

取材

Ha・no・ne編集部 リン(以下リン)
Ha・no・neのユーザーの中にも親知らずについて悩みを抱えている方が多いようですが、先生の歯科医院にも親知らずに関する相談は多いのでしょうか?

あらかわ歯科 院長 西野潤先生(以下西野先生)
悩みを抱えている方は多いですね。ただ、親知らずの相談を目的に来院されるというよりは、他の治療を進めているタイミングで「実は親知らずが……」と打ち明けられるケースが多い印象ですね。

リン
親知らずについて相談する患者さんは、やはり痛みをどうにかしたいという方が多いのでしょうか?

西野先生
そうですね……痛みを感じて来院される患者さんはもちろん多いですし、あとは「今は大丈夫でも過去に痛みがあったから」という方もいらっしゃいますね。それと「親知らずが原因で歯並びが変わってきた」という声も聞きます。

リン
歯並びを気にされる患者さんもいるんですね。

西野先生
実際、下顎の親知らずが横向きに生えてきて、隣の歯を押すことで歯並び全体に影響が……という患者さんはいますよ。

リン
歯並びが悪くなるのは、親知らずの生え方が悪いからということでしょうか?

西野先生
もちろん生え方が悪い、というのは大きな理由です。ただ、たとえ親知らずがまっすぐ生えたとしても、スペース不足に陥ることで歯並びが悪くなるケースもあります。

リン
なるほど、生え方が悪いだけが問題ではないんですね。親知らずは抜かないといけない場合と、そのままで大丈夫な場合がありますが、違いはどこにあるのでしょうか?

西野先生
親知らずを抜かないといけない理由としては、「ブラッシングができない」点が挙げられます。歯ブラシが届かなかったり、届いたとしても生え方が悪くしっかり磨くことができなかったりすると、口腔内への多くの悪影響が考えられます。そのため、キレイにまっすぐ生えてブラッシングも問題なくでき、嚙み合わせもしっかりしている親知らずであれば、抜く必要はありません。親知らずを残しておければ、将来的に抜けた歯の代わりとして移植できる可能性もありますしね。

リン
親知らずを移植することもできるのですね!

西野先生
ただ、たいていの場合、親知らずは抜歯したほうが良いケースの方が多いです。痛みがあったり隣の歯に影響を与えたりブラッシング状況が改善しなかったりするようなら、抜くことをおすすめします。

みんなが気になる親知らずを抜いたときの「腫れ」について

親知らず抜歯時の腫れについて

リン
私は過去に親知らずを抜く治療を受けたのですが、あれって腫れますよね……。

西野先生
上の親知らずはそうでもないですが、下の親知らず、特に横に傾いて骨に埋まっているケースは腫れますね。抜いた直後はそこまで腫れませんが、だいたい1週間は腫れが続くと考えておいていただければ。

リン
私も思っていた以上に腫れました(笑)。あそこまで腫れるのには何か理由があるのでしょうか?

西野先生
親知らずは他の歯と比べて骨に埋まっているケースが多いので、抜くときは骨を削ることもあります。それが原因で腫れてしまうんですね。骨の硬い下顎に埋まっている親知らずを抜くときは、特に腫れます。ただ、腫れは体が治癒している状態でもあるので、あまり過度に抑えてしまうのも良くないんですよ。

リン
なるほど。親知らずの治療をするなら腫れは覚悟しないといけないんですね。治療をするときは、診察を受けに来たその日に実施するものなのでしょうか?

西野先生
ケース・バイ・ケースですが、親知らずを抜くときは麻酔を使うので、お薬の関係などから即治療に入るということは少ないですね。また、来院されるのは、腫れによる痛みなどの自覚症状が出ているケースが大半です。症状があると、麻酔が効きにくくなることが考えられます。そのため当院では、抜く前に投薬などで腫れを引かせるところから始める場合が多いですね。

リン
治療前も治療後も腫れには要注意ということですね。治療後の腫れを早く治すコツなどがあればぜひ伺いたいです。

西野先生
腫れは「触らない」のが何より大切だと思います。冷やしたり温めたりすると、治癒を遅らせてしまう可能性があります。もちろん場合によっては冷やしたほうが良いときもありますが、いずれにしても自己判断は禁物なので、歯科医師に都度相談するのが一番ですね。

リン
私は治療後に患部をベロベロなめていましたが、ひょっとしてそれも駄目でしたか?

西野先生
気持ちはわかりますが、それは絶対にやめたほうがいいですね(笑)。

親知らずを抜くのなら20歳前後のタイミングが最適!

親知らずを抜くタイミング

リン
親知らずを抜くのに最適のタイミングはあるのでしょうか?私は2本いっぺんに抜いたあと、仕事に支障が出て大変でした。

西野先生
おすすめするのは大学生や専門学校、もしくは働き始めの時期になる20歳前後のタイミングですね。理由はいくつかあって、まず親知らずは高校生くらいから生えてくるものですが、歯根は20歳前後までなら完全にはできていません。歯根ができると抜くのが大変になるので、早めに治療したほうが良いでしょう。それに、骨は年齢を重ねるにつれ硬くなるので、治療の難易度も上がります。特に私は学生の間に抜くことをおすすめしていますが、それは社会人よりも治療期間を確保しやすいからです。

リン
なるほど、確かに時間的な余裕を考えると大学生など学生の間に治療を済ませた方が良さそうですね。Ha・no・neのユーザーは女性が多いのですが、女性に対して特に気をつけてほしい点はありますか?

西野先生
女性の場合は、20代半ばくらいから子どもができる方も多くなるかと思います。そうすると、お薬を飲むことができないケースも考えなくてはいけません。そうした事情を踏まえても、親知らずはできる限り早めに、20代前半のうちに治療することをおすすめします。親知らずを放置していると歯並びが悪くなり、見た目を気にする方も多いでしょうから。

「抜いて終わり」ではない!親知らず治療後に気をつけたいこと

抜いて終わりではない

リン
親知らずの治療をするうえで注意したすべき点などがあれば教えてください。

西野先生
そうですね、親知らずは抜いたら終わりと考える患者さんもいますが、治療後のメンテナンスも重要です。患部の炎症や周囲の歯への影響などを確認しないといけませんから。

リン
親知らずの治療と聞くと「抜く!」というイメージが強過ぎるかもしれません。

西野先生
それは仕方のないことですが、親知らずを抜いて初めて見つかる虫歯があったり、抜いた部分のポケットが深かったりといったことも考えられるので、引き続き注意は必要です。1本抜くだけで口腔内全体が健康になるというわけではありませんから。

リン
抜いた後も安心ではないということですね……。私は親知らずを抜いた後、数日は体を動かさないほうが良いと言われました。何か理由があるのでしょうか?

西野先生
親知らずを抜いて出血した部分はかさぶたができることで止まります。しかし、運動をしていると血流が良くなってしまい、いつまでもかさぶたにならないのです。そのため親知らずを抜いた当日は、運動以外に飲酒や入浴など血流が良くなることは避ける必要があります。

リン
なるほど、出血はかさぶたで止まる、普通にケガした際と同じメカニズムなんですね。ちなみに親知らずを抜くことで悪化した歯並びは元に戻るのでしょうか?

西野先生
歯並びを戻すのは、親知らずを抜いただけでは難しいですね。矯正治療を受けてもらう必要があるかと思います。ただ、親知らずを抜くことで矯正治療がよりスムーズになるケースもあります。

あらかわ歯科が力を入れる“痛みに配慮した”親知らず治療

歯科用CT

リン
実際親知らずを治療すべきかどうか悩んでいる方は、やはり「痛み」を相当気にしている印象を受けます。あらかわ歯科さんでは、そういった患者さんとどのように向き合っているのでしょうか?

西野先生
今まではセオリー通りと言いますか、歯ぐきを開いて骨を削る治療法を採用することが多かったのですが、今は骨を削るときに超音波骨切削を使用しています。それと事前の検査で正確な親知らずの位置を把握するために歯科用CTも利用していますね。通常のレントゲンだとわからない部分があるので。

リン
最新の機器を使用されているんですね!治療法も変わってきそうです。

西野先生
いえ、治療のプロセス自体は基本的には変わりません。ただ、患者さんの負担が軽減されるのは間違いないですね。出血や痛みを少なくするのはもちろん、歯の神経を無駄に傷つけてしまうなどの可能性もグッと減らせます。

リン
患者さんにとっては痛みや出血が少ないというだけで、治療を受けるハードルが低くなりそうです。

西野先生
いくら最新の機器を使用してパーフェクトな治療ができても、完全に痛みがなくなるわけではありません。そのため、どの程度痛みを減らせるかに着目し、その点を突き詰めています。

親知らずの治療を受ける「時期」に注意!

西野先生

リン
親知らずの治療を受けるのは10代後半から20代前半が良いと先ほどおっしゃいましたが、たとえば私(20代後半から30代前半)くらいの社会人で親知らずが気になると思ったときは、いつごろに治療を受けるべきでしょうか?

西野先生
そうですね……できれば親知らずの治療後1週間は安静にしておいたほうが良いので、まとまった休みがとれるときがおすすめです。

リン
そうなると、お盆休みや年末年始が良いでしょうね。

西野先生
いえ、親知らずの治療は抜いた後も続くので、歯科医院が休診してしまうお盆や年末年始は避けたほうが無難です。もしも親知らずを抜いたあとで腫れが治まらないなどの状態になったとき、歯科医院が開いていないと大変ですから。

リン
確かにそうですね。自分ではどうしようもないですし。そういった点も考慮したうえで、けっこう先までを見通したスケジュールの作成が大切になりそうです。

西野先生
親知らずを抜いて傷口を縫って、糸をとるのが1週間後なので、最低でも1週間先までを考えた余裕あるスケジュールを立てるようすると安心です。あとはしっかりとケアをして、定期検診をしっかり受けてもらえればと思います。

リン
親知らずは抜くだけでなく、その後のケアまでが非常に大切ということ、大変勉強になりました。本日は貴重なお時間をいただき、どうもありがとうございました。

▼取材協力▼

あらかわ歯科
西野潤先生プロフィール:https://www.arakawa-shika.jp/staff.html
医院HP:https://www.arakawa-shika.jp/
〒116-0012
東京都荒川区東尾久1-1-2
03-6458-2258

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