【前編】歯科医師のベストセラー作家が新著「『歯』を整えるだけで人生は変わる」に込めた想いとは?

2020.01.14 interviewHa・no・ne編集部

日本人の歯への無頓着さに警鐘を鳴らしたい

「人は見た目が9割」なのに歯を綺麗にしないのはなぜ?

日本のオーラルケア意識



Ha・no・ne編集部 リン(以下、リン)
井上先生から見て、今の日本人のオーラルケア意識はいかがでしょうか?

いのうえ歯科医院理事長 井上裕之先生(以下、井上先生)
私の知人がアメリカ人と話したとき「どうして日本人はあんなに歯が汚いの?」という話題になったそうです。今の低いオーラルケア意識は世界から見たら本当に非常識なんです。でも、日本という殻のなかにこもっているから、海外の人にどう見られるか無頓着なんです。まぁだからこそ、この文化を変えていくことに楽しさを感じています!

リン
大きなやりがいとなるでしょうね!

井上先生
個人と社会、どちらに影響を与えて終える人生が素晴らしいかと言ったら、やはり後者でしょう。そして私が社会に影響を与えられるジャンルがあるとしたら、それは歯科です。だからこそ、この本は素晴らしいものになっていると自負しています。この本をきっかけとして、日本の歯の文化を変えていくのが、私のミッションです。

リン
素晴らしいミッションだなと感じます。日本人のオーラルケアの意識は酷いものだとおっしゃいましたが、たとえば歯並びが悪いと相手に与える印象も悪くなりますか?

井上先生
教養がないと思われるでしょうね。アメリカや世界では歯が汚いと「育ちが悪い」と判断されます。治すお金すらないのかと……。だから、どんなに貧しくても世界に進出したいという人は矯正しています。日本だと「歯が悪くなれば削って治せばいい」という考え方が浸透していますが、それって本質は避けた表面的な考え方ですよね。そんな表面的にしか考えられない人と仕事がしたいですか?

リン
なるほど……。

井上先生
「人は見た目が9割」って本がありますよね。そこで考えたいのが、人に会ったときまず見るのはどこですかということ。顔ですよね?顔を見ていれば歯を見ますよね。要は歯がどんな状態かで、その人がどんな人間かを判断されてしまうわけです。

オーラルケア文化を変えたい…高めたいという想いから本を出版

オーラルケア文化



リン
井上先生はこれまでも数多くの自己啓発書を出されていますよね。そのなかで、歯に関する本は今回が初めてです。歯をテーマとした本を出版されたのには、どのような理由があるのでしょうか。

井上先生
まず自分は歯医者として、歯に対する日本人の文化を高めたいというミッションを持っています。もちろん、歯科医師会などでもその点を意識した試みはしていますが、やはり組織のなかでは自分の意見を率直には反映できません。まぁ、自分がやりたいこと、楽しいことだけをできる仕事なんてないですから。

リン
それはそうですね。

井上先生
私自身、いつかは歯に関する本を出したい、日本人の歯に対する文化を変えたいと思っていました。ただこれは、楽しみたいからではありません。仕事というのは自分が楽しいかどうかではなく、社会にどのような影響を与えるかが重要です。自分の仕事で社会に貢献できたら、これほど素晴らしい話はありませんよね?

リン
本当にそう思います。ただ、これまでは歯についての本は出されていませんでした。

井上先生
今は腸活など、健康に対するいろいろな行動が話題になっているのに、歯に関してはまったくない。日本では外資系の会社の社員であっても、歯への意識は本当に低いです。だから外国人の方が来日したとき、眉をひそめるんです。それでも、歯に対する無頓着な文化は変わらない。だから私は、歯の文化を変えていきたい。そしていつか、日本人みんなの歯が綺麗になって、外国人が「どうして変わったの?」って聞いてきたとき、「井上先生の本がきっかけで変わったよ」と答えられるような文化を残していきたいです。

歯のプロとして同業者からも支持されるような知識を伝えるのが使命

強い使命感



リン
強い使命感と共に本を作られたというのがよく分かりますが、今回の「『歯』を整えるだけで人生は変わる」を執筆されたうえで、こだわった点などがあれば教えてください。

井上先生
まずは売れる本を作らなければと思いました。本は売れて初めて価値がある……読まれるのが本の役目で、棚に入っているままではただの飾りです。

リン
ただ出版するだけでは意味がないということですね!

井上先生
その通りです!いくら本を出しても、売れなかったり、読まれても理解してもらえなかったりでは意味がない。だから、内容には気を使っています。歯のプロとして、客観的に適切な知識を伝えなければいけません。歯の治療は何が正解とは言い切れない世界ですが、それでもスペシャリストたちが読んで納得してもらえる内容にしなければと思い、慎重に書きました。

リン
実際の反応はどうだったのでしょうか?

井上先生
実際に読んでくれた同業者からは、「井上先生よく書いてくれたね」と感謝されました。「ようやく歯科について書いてくれたか」と。自分たちが書きたい、伝えたいという内容が、しっかり書かれていたんでしょう。こういう内容を、私のような発言力ある人間が発信していけば、日本人の意識を変える、歯科の文化を変えるきっかけになると感じてくれているようです!

リン
多くの先生が感銘を受けたんですね。

井上先生
私が本を出す目的は、「売れたい」ではなく「文化を変えたい」なので。実際、今は文化が変わっていませんからね。変える努力はしているのかもしれませんが、変わっていなければ意味がありません。

オーラルケア向上のためには多角的なアプローチが重要

井上裕之先生



リン
世界基準から見たときの日本人の歯に対する文化の低さを教えていただきましたが、日本人のオーラルケア意識を向上させるためには、どのような行動が必要なのでしょうか?

井上先生
まずは知ってもらうことが大事です。知らないから、ケアをしないんですよ。リンさんは今日、私と会ったことで相当なインパクトを受けていると思いますし(笑)。あとは誰が情報を伝えるかも重要ですね。歯の汚い医者から「歯を綺麗にしろ」と言われても説得力なんてありませんから。

リン
おっしゃる通りです。私も井上先生のお話を聞いてグサグサと胸に来ています(笑)。

井上先生
私は歯医者ですし、いろいろな勉強もしてきているので、その点説得力があるでしょう。そして私は、本で文化を作り、伝えたいと考えています。だからみんなには私の本を読んでほしいですね。もちろん、私以外のたくさんの先生が、自分のクリニックでしっかり伝えていくことも大切です。

リン
こうした本でオーラルケア意識向上を訴えるのは、なかなかない切り口ですよね。

井上先生
切り口は多いに越したことはありません。それにこういう本で伝えた方が、かえって伝わりやすいというのもあります。現に今だって多くの歯医者さんは必死でオーラルケアの重要性を広めようとしていますが、まったく浸透していませんからね。これは批判ではありませんが、正しい行動でも結果が出なければ意味がない。もし結果が出ていないなら、変化を起こすためアプローチの仕方は変える必要があります。それが私にとっては“本”なんですよ。

リン
本には大きな力があるということですか?

井上先生
本は売れれば話題になり、テレビで扱われたりネットで話題になったりと、文化になっていく可能性を秘めています。もちろん、本でも売れなければ意味がありません。だから売り上げは気にしますよ。売ることにものすごく執着しています。売る文化のなかで生き、売りたいと思う人と組んで本を出しているんで、当然です。

リン
なるほど……本は成功すれば大きいですね。

井上先生
もちろん私の方法だけが正解ではありません。啓発の仕方はいろいろですし、何が人の心にヒットするかは分かりませんから。ただ、自分の方法は本というだけです。自分だから歯についての本が出せるのだという使命感を持って、アプローチしていきます。

リン
本を出すにあたって目標などはありますか?

井上先生
100万部です。目標はそこにしかありません。1冊100万部は、著者としての夢ですね。ただ、文化を作っていくためには、売り上げよりメディアで扱われることの方が大きいとは思います。もちろん、客層が違うので両方大事ですけどね。とにかくやれること、できることは全部やらないと文化は作っていけませんよ。

気になる井上先生のお話は【後編】へ続く……
今回の【前編】では、井上先生から新著出版の背景や、日本のオーラルケア事情についての厳しいお話をうかがうことができました。【後編】では、オーラルケア意識向上のためにはどのような行動が必要かについてなどを取材しています。後編もお見逃しなく!

▼取材協力
井上裕之先生
ホームページ:https://inouehiroyuki.com/
日本実業出版社
ホームページ:https://www.njg.co.jp/book/

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