歯周病予防は30代から!現役の歯周病専門医が、「ほとんどの人が知らない真実」を解説

2017.03.09 medical歯科医師 福嶋太郎

1日3回の歯磨きで歯周病を防げていないという事実

日本歯周病学会が発表したデータによると、歯周病によって肺炎死のリスクが3.9倍に跳ね上がり、心筋梗塞などの心疾患に1.59倍かかりやすくなることが分かっています。

【表1】

疾患とリスク

さらに、厚生労働省が6年に1度発表している「歯科疾患実態調査」では、2011年時点で日本人の44.9%が歯周病にかかっていることが判明。1999年のデータと比較して、毎日3回以上歯磨きする人の割合が増えているにもかかわらず、歯周病にかかっている人の割合はむしろ増えています。

【表2】

歯みがきと歯周病

一方で、虫歯にかかっている人の割合は、同期間では3.5%前後でほぼ横ばいに推移しており、虫歯治療に関しては歯科医療がしっかりと機能していることが考えられます。この2つの事実から、歯の健康に気を使う方が増えているものの、歯周病に関しては十分に予防しきれていないということがわかります。

【表3】

虫歯と歯周病

歯周病予防が進んでいない原因とは?

では、一体何が原因で歯周病を防ぎきれないのでしょうか?

1.歯科医師の準備不足

驚く歯科医師

1つは、歯周病という病気が注目されてきたのが比較的最近であるために歯科医師側の準備が足りないことが考えられます。

ひと口に歯周病治療と言っても、その治療は多岐にわたります。基本治療に加えて「矯正治療」や「外科治療」、「全顎補綴治療」などを組み合わせて行わなければならないため、よくトレーニングされた歯周病専門医が1人ですべてをこなすか、数人の専門家でチームを組んで診療を進めていく必要があります。しかし、こうした体制が十分でないため、歯周病への対応が遅れていることが考えられます。

2.ブラッシングが不十分

歯みがき

もう1つ考えられる原因が、「日々のブラッシングの効果を最大限引き出せてない」ということです。

実際に私のクリニックに初めていらっしゃる患者様の多くは1日に2~3回歯を磨いていらっしゃいますが、お口の中に残っているプラークを計測すると、ほとんどの方が65~90%の部位に磨き残しがあります。過去の研究からも、磨き方に癖があるために、磨き残しが出るところは人それぞれ決まっており、予備知識がないままに1日1回以上歯を磨いても効果的でないことが分かっています。

そこで、当院にいらっしゃるすべての患者様には、まずブラッシングの練習から行うことにしています。これは非常に理にかなっていて、1ヶ月に2回専門的なクリーニングを行うよりも、残りの28日間のホームケアを充実させるほうが、遥かに効果的で、治療の効率もよくなるからです。

前述のとおり、歯周病治療は多岐にわたる治療のため、毎回歯に付いているプラークを除去するところから始めていては、貴重な治療の時間が無駄になってしまいます。多くの場合は3回目のブラッシング練習の際に次プラーク除去率の目標値を達成しますが、上達が遅い方でも5回ほどトレーニングを積めばかなりよい清掃状態になってきます。

清掃状態が良くなることで歯茎が引き締まり、歯肉の中に隠れていた歯石が除去しやすくなったり、治療中の出血が抑えられ、精密な治療が可能となります。

歳を重ねると歯周病にかかりやすくなる?

それではここで再びデータを見てみましょう。

【表4】

年代別

この表は歯周病にかかっている人の割合を年代別に出したものです。年代を重ねるごとに歯周病に罹患する割合が増えてきているのが分かります。この表からさらに“重度”の歯周病患者を抽出し、そこに毎日3回以上歯磨きをする人の割合も加えると下のような表になります。

【表5】

歯みがきと重度歯周病

20~70代まで歯を磨く頻度はほとんど変わらないにもかかわらず、年代を追うごとに重度の歯周病患者が増加しています。さらに、20代、30代と比較して、40代から重症化のスピードが加速していることも分かります。

30代から適切な歯周病ケアを

歯周病はメタボリック症候群などと同じく、遺伝的な要素よりも生活態度によって引き起こされる生活習慣病の一種ですので、予防をすることは十分可能な病気です。

しかし、歯磨きの頻度データからもわかるように、「どうやったら適切な歯磨き習慣になるのか?」という疑問を明確にしない限り意味のないブラッシングを日々繰り返すことになってしまいます。また同じ歯周病でも“軽度のもの”と“重度なもの”とでは、治療の複雑さや期間、費用ともにかなり大きく変わります。

これらの事実を踏まえた上で、30代からきちんとした専門家の元で歯周病ケアを始めることを強くおすすめします。

今回は多摩市の京王線・小田急線 永山駅から徒歩8分のところにある、歯周病治療の最後の砦、福嶋歯科医院の歯周病専門医である福嶋先生よりお答え頂きました。

福嶋歯科医院

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