“舌のひび割れ”に関する歯科医師の見解 根源は口が乾燥する症状「ドライマウス」

2018.05.15 interviewHa・no・ne編集部

舌のトラブルの原因は主にビタミン不足とドライマウス

舌のトラブル

舌のひび割れをテーマとするうえで、最初に「そもそも舌が割れている人はどれくらいいるのか」という質問を松本先生にぶつけてみました。すると「正直なところひび割れている患者は少ない」というご意見でした。しかし、「歯科医師はついつい舌に目がいってしまう」と続けたうえで、“割れる手前の舌が荒れている状態の人”が多いと注意喚起。舌の状態から、「疲れているのかな?」「少し不健康なのかな?」と気になってしまうことが多々あるそうです。

舌に関するトラブルの原因として、ビタミン不足やドライマウスが挙げられると松本先生と説明。特にドライマウスに関しては、ストレスや緊張などによって副交感神経が刺激されることや加齢によって唾液の分泌量が減ること、さらには薬の副作用などさまざまな要因があるようです。たとえば季節柄の話では花粉症の症状を抑えるための薬には口が乾きやすくなるものも多く、気になる症状がある場合は主治医に相談した方がいいとの見解を示してくれました。

また最近では「スプレータイプの人工唾液」なども販売されているようで、口の乾きが気になる場合はこういったグッズの使用も効果的なようです。最近ではレモン味など味つきのものも増えていると耳寄りな情報を教えてくれました。唾液には食後に酸性へ変化した口の中を中性にもどす緩衝作用があるため、水分を摂ることに加えてこうした人工唾液の使用を検討してみるのもいいかもしれません。

ひび割れは傷によるものや病気によって出る場合もある

下のひび割れ

また、舌のひび割れについては、ドライマウス以外の原因も考えられると松本先生は説明してくれました。まず考えられるのは傷によるひび割れ。歯の噛み合わせや被せ物が合っていない、または虫歯によって歯に穴が開いて鋭利になっている箇所に舌が触れることで表面が切れてしまうなどのケースがあるそうです。また、これらはただ舌が切れてしまうだけではなく、口腔癌の発症原因の1つにもなることも教えてくれました。

その他に考えられるのが病気によるものだそうです。反復性顔面神経麻痺の原因ともなるメルカーソン・ローゼンタール症候群の症状として、舌にシワなどが生じることがわかっています。また、糖尿病やシェーグレン症候群などの膠原病によって、ドライマウスが引き起こされ舌のひび割れの原因となっていることもあります。

一口に舌のひび割れと言っても、その症状や原因は必ずしも1つではないため、歯科医院で症状が改善しない場合は内科などの受診も検討するべきだと、松本先生は総合的な診療の大切さを説明してくれました。

舌が割れてしまったときの対処法は?

インタビュー

実際に舌がひび割れてしまった場合の対処法についても松本先生に尋ねてみました。すると松本先生は、「一般に舌のひび割れは自覚症状がない」と前置きをしたうえで、ひび割れの隙間に汚れが溜まりやすく口臭・感染症・炎症などの原因となる可能性があると指摘しました。

そして、それらを防ぐためには何よりも口腔内の洗浄や抗菌が大切だと語ります。一見すると舌とは関係ないようにも思えますが、お口の中を清潔にすることはトラブル回避のための大前提。「歯磨きでは6割ほどしか汚れを落とせていない。マウスウォッシュなどもいいが、デンタルフロスや歯間ブラシの活用を」とさまざまなケアグッズを活用した丁寧な汚れの除去の重要性を訴えていました。

また、お口の汚れについては、入れ歯をしている方はより注意が必要とのこと。口の中に装着するだけに、入れ歯の洗浄は健康を保つうえで不可欠なようです。特に寝る際も入れ歯をはめて寝ている方は、寝る前の洗浄を心がけるようにしましょう。そうすることで、お口の中が菌の温床になることを防ぎ、舌のトラブル発生の可能性を低くできるとのことでした。

親御さんは注意してほしいお子さんのお口の状態

松本武院長

最後に松本先生は、舌のトラブルの発生の要因の1つとして子どもの呼吸方法についても話をしてくれました。「最近はアレルギー持ちの子どもが増えているのか、鼻がつまっていたり鼻閉していたりするなど口呼吸になっている子どもが多い」との見解。「口呼吸をしていると、ドライマウスになってしまう可能性が高まる。さらに子どものころに口呼吸ばかりしていると、歯並びが崩れるリスクも高まる」と松本先生は警鐘を鳴らします。

筋肉の塊である舌は上顎についており、上の歯を内側から押すことで整える作用があるようです。そして、特に子どものころの歯はまだ位置が定まっておらず動きやすくなっているため、口呼吸になり上顎から舌が離れると歯並びが崩れてしまう危険性が高くなります。さらに歯並びが崩れることで上顎が小さくなると、顎全体が小さくなり歯並びに大きな影響を及ぼしてしまうケースもあるようです。

そして、最後に松本先生は「口呼吸は百害あって一利なし。子どもの鼻づまりがひどい場合や口呼吸が多い場合は、たかが鼻づまりと軽視せずにしっかりと耳鼻科で診てもらってください。」と子を持つ親御さんへの貴重なアドバイスで話を締めくくりました。

舌の異常や口の乾きを感じたら歯科医院へ

歯科医院というと虫歯や歯並びなど、歯に関する症状で悩んだ際に行く場所だと考えている方が多いかと思います。しかし、舌などに異常が現れた場合も歯科医院で診てもらうことで、原因と対処法を把握することができるかもしれません。また、症状によっては松本先生が説明してくれたように内科や耳鼻科などで診療を受けることで改善が見込める場合もあります。

「舌がひび割れている」「口が妙に乾燥する」など口腔内の異常が気になる場合は、放置せずにまずは一度お近くの歯科医院へ足を運んでみましょう。口腔内のトラブルからさまざまな病気に派生する可能性があるので、小さな体調の変化を見逃してはいけません。特に自分では症状がわからない小さなお子さんの場合は、きちんと親御さんが管理してあげることが大切です。

▼取材協力▼
医療法人社団MDC みらい歯科クリニック
松本武先生プロフィール
医院HP
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0794-84-3988

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