食べ物を飲み込めない「嚥下障害」の治療法

2018.05.29 health福本春香

嚥下障害とは

のどの問題

嚥下とは、口の中の食べ物や飲み物を胃まで送る機能を意味します。この飲み込む動作が何らかの要因で妨げられ、スムーズにできなくなった状態を嚥下障害と言います。嚥下障害は高齢者の方が発症するイメージが強いですが、実は若年でも起こることがあります。嚥下障害になる原因は主に以下の3つに分けられます。

原因1:器質的原因

舌がんや咽頭がんなどの手術後、炎症により舌や喉の構造そのものが損傷されてしまった場合。先天的な奇形が原因となることもあります。

原因2:機能的原因

消化器官の構造に問題はなくても、それを動かす神経や筋肉に問題がある場合もあります。脳卒中によるものが比較的多く、加齢に伴う機能低下や薬の副作用によるものも。

原因3:心理的原因

ストレスによる食欲不振などによるもの。

嚥下障害の症状

嚥下障害には以下のようにさまざまな自覚症状があります。

その1:食べ物や飲み物がむせる

特に味噌汁やお茶などの水分に対してむせやすくなり、自分の唾液でもむせることがあります。またむせるのを避けて水分を控えるようにすると、脱水などの症状を引き起こします。

その2:食事をすると疲れる

たくさん噛まないと飲み込めなかったり、飲み込みにくくなったりするため、食事に時間がかかるようになり途中で疲れてしまいます。また、食べられるメニューが限られてしまうことで食べ物への関心が薄くなり食事への意欲が低下します。

その3:声がかれる

食べ物を飲み込んだ後に声がかすれたり、口の中に食物が残りやすいことから痰(たん)がからんだりします。

その4:体重が減る

食べる量が減ったり食事の内容が偏ったりするので、低栄養状態になって体重が落ちることがあります。

リハビリによる治療法

ストレッチ

嚥下障害の治療法は、主にリハビリになります。リハビリは食べ物を使用しないで行う間接訓練と実際に食べ物を使用する直接訓練があります。それぞれ具体的にどんなことをするのか、いくつか紹介します。

間接訓練

・ストレッチ
一見すると嚥下とは関係なさそうですが、体に力が入っていると嚥下に関わる機能の働きが鈍くなり誤嚥(ごえん)しやすくなります。そのため深呼吸しながら肩や首を回すなど、主に上半身のストレッチを行います。

・唇・舌・頬の体操
手や器具を使って行います。口周りの動きをスムーズにし、筋力アップを目指します。

・発音訓練
飲み込む際に使う筋肉と声を出す際の筋肉は同じなので、単語や文章の発声練習を行い嚥下に必要な筋肉の働きを促します。

・アイスマッサージ
冷たく冷やした綿棒で口の中や喉を刺激し、食べ物を飲み込む時に必要な嚥下反射を促します。

直接訓練

・複数回嚥下
通常は一回で飲み込める量を何度かに分けて飲み込める練習をします。口の中に食べ物が残るのを防ぎ、誤嚥も防止できます。

・交互嚥下法
固形物ととろみのあるものを交互に食べるよう意識し、固形物が口の中に残るのを防ぎます。

・食品の調整
障害の度合いに合わせて液体にとろみをつけたりゼリー化できる補助食品を使用したりして、誤嚥による窒息を防ぎます。

自身で行うリハビリ運動

嚥下障害のリハビリは、病院で専門のトレーナーと行うもののほかに、自宅でできるものもあります。嚥下障害の予防にもなるので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

・口周りのストレッチ
まずは首を前後左右に回して肩の力を抜きます。その後、頬を膨らませたり引っ込めたりを繰り返したり、舌を前後に大きく動かしたりします。

・声を出す訓練
「パ・タ・カ・ラ」と大きな声で発音し、嚥下に関わる機能を動かします。「パ・タ」は唇と舌の筋力アップ。「カ」で食道につながる喉の動きを鍛え、「ラ」で食べ物を喉に送るための舌の動きを鍛えます。

・呼吸訓練
腹式呼吸を繰り返し行うことで、呼吸に使う筋力を鍛えます。そうすることで食べ物が喉に引っかかった時、しっかり排出できやすくなります。

これらのトレーニングを食事前に行うと、口周りの動きがスムーズになり嚥下しやすくなります。

決して当たり前ではない嚥下の機能

オペ

もし重度の嚥下障害に陥ってしまったら、手術をしなければ回復は見込めません。飲み込むという機能は当たり前のように考えがちですが、そうとは限らないのです。生涯おいしく食事を楽しむためにも嚥下の機能を意識するようにしましょう。

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