虫歯、歯周病に次ぐ“第3の歯の疾患”!? 酸で歯が溶ける「酸蝕歯」とは

2017.08.23 healthHa・no・ne編集部M

潜在的な患者が多い酸蝕歯は虫歯よりも危険?

炭酸飲料やワイン、柑橘(かんきつ)類など、日常生活のなかで酸性の飲食物を口にする機会は多いはずです。酸性の飲食物を過剰に摂取していると、本来ならお口の中を最適な状態に保つ唾液による中和作用が間に合わなくなります。それによって次第に歯の表面のエナメル質が溶け出してしまうのです。エナメル質が溶けると象牙質がむき出しになってしまい、歯がしみたり欠けたりする恐れがあります。こうした現象を起こす疾患こそが「酸蝕歯」なのです。

歯垢の溜まりやすい場所を溶かす虫歯とは異なり、酸蝕歯は酸にさらされる歯すべてに症状が発生する危険性があるため、より深刻であり注意すべき疾患と言えます。また、潜在的な患者が多いのも酸蝕歯の特徴です。外務省歯科診療所の外務技官にして東京医科歯科大学非常勤講師の北迫勇一氏が、2014年に15~89歳の男女1108人を対象にした調査では、4人に1人が酸蝕歯という結果が判明しました。痛みなどの自覚症状が出にくい点が、酸蝕歯対策における課題となっています。

飲食物の他にもさまざまな原因が考えられる酸蝕歯

歯は酸によって溶け出してしまう可能性がありますが、本来なら唾液が酸を洗い出すことで中和してくれます。しかし、強い酸に長時間、または繰り返し触れていると、唾液の中和作用が間に合わなくなってしまい、歯がダメージを受けてしまいます。つまり、酸性の飲食物を長時間かけてちびちび飲んだり、だらだら食べたりしていると、酸蝕歯になってしまう可能性が高まるのです。

また、一般的には美容や健康に良いとされているものが、酸蝕歯の原因になる場合もあります。たとえば、ダイエットのための黒酢や、美容のためのグレープフルーツなどが典型例です。こうした酸性度の高い飲食物を過剰に摂取する傾向にあることから、酸蝕歯は美容や健康への意識が高い人の方がかかりやすい疾患とされています。一般的に酸性とアルカリ性の度合いを示すPH値(低い方が酸性度が高い)が5.5以下の場合、酸蝕歯になるリスクが高い飲食物といわれているため、日ごろからPH値はこまめにチェックしておきましょう。

また、酸蝕歯は飲食物に気をつけていれば防げるというわけでもありません。逆流性食道炎や摂食障害の嘔吐によって起こる胃酸の逆流によっても、酸蝕歯になってしまうケースがあります。むしろ、酸蝕歯の重症例はたいていの場合、胃酸が原因であることが多いのです。

酸蝕歯予防のために見直したい食生活と歯磨き

酸蝕歯を防ぐためには、長時間にわたり歯を酸にさらさないことが第一です。そのためにまず、酸性の高い飲食物の過剰摂取は避けるようにしましょう。酸性度の高い飲み物を摂取するときには、ストローを使うと歯に液体が触れる危険性が回避できるためおすすめです。また、歯を酸から守ってくれる唾液を増やすため、飲食後にガムを嚙むのもいいでしょう。家に重曹がある場合は、溶かした水でうがいすることをおすすめします。アルカリ性の重曹が酸を中和してくれるため、積極的に活用してみてください。

食生活以外で注意したいのは食後の歯磨きです。酸によって歯が柔らかくなっている状態でゴシゴシ磨いてしまうと、歯がすり減ってしまう恐れがあります。唾液がエナメル質を修復してくれる30分後を待ってから、歯磨きしましょう。ただし、すでにお口のなかに虫歯がある場合は、食後すぐに歯を磨く必要があります。その際は歯ブラシは柔らかいものを、歯磨き粉は再石灰化を促すフッ素入りのものを使用するようにしてください。

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【ライター紹介】 M

M

「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。

Twitter:ムートー
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