歯並びの良し悪しで変わるお口ケア 三重県の矯正専門医院で実験&取材

2018.07.18 interviewHa・no・ne編集部

【検証】歯並びの良い人と悪い人で磨き残しの差は出るのか?

今回の実験は三重県における矯正治療の名医・土岐泰弘先生の全面協力のもと、「歯並びの良い人と悪い人で磨き残しの差が出る」という仮説に基づいて2つの実験を行いました。1つ目は「口腔内スキャナー」を活用しての磨き残し比較。2つ目はきれいに磨き終わるまでのケア時間の比較です。

実験1で使用する「口腔内スキャナー」とは、3Dカメラで撮影することで迅速で正確に歯型を採れる高性能機器。取り込んだ3D画像をすぐに確認でき、現在の歯と矯正治療後のイメージ画像を視覚化できることが大きなメリットです。治療時間の短縮、精度の向上が見込めるのはもちろん、タッチパネル式のモニターで患者さんが自身の歯並びの特徴を歯科医師と一緒に確認できる点もインフォームド・コンセントにおいて大きな意味を持ちます。

歯型を3Dカメラでスキャンすると、上記のように3D画像で表示されます。鏡だけでは確認できない自身の歯並びについて事細かに知ることができます。実際に自身の口の中でどんな治療が行われているのかを歯科医師の説明だけで正確に把握することは難しいだけに、口腔内スキャナーのような視覚化できる高性能機器の活用は、多くの方に矯正治療をより身近に感じさせてくれるでしょう。

【実験1】口腔内スキャナーで磨き残しを比較

ではいよいよ実験本番です。歯並びが良いAさん、歯並びが悪いBさんの2人の被験者に歯垢染色剤(※)をつけてもらい、その後に口腔内スキャナーで撮影。歯に付着している磨き残しを比較検証させてもらいました。

※歯垢染色剤は、歯垢があるところに色をつける薬剤です

歯並びの良いAさんのケース

【Before】
歯並び良い人磨く前

口腔内スキャナーで撮影した3D画像でも全体的に歯がピンク色に染まっていることが確認できます。歯全体が満遍なくピンク色になっており、歯垢のつき具合にはあまり差がない印象。ただし、左下の画像の上顎の歯の裏側が濃いピンク色であることがわかります。歯垢が付着しやすい箇所であることは一目瞭然です。

【After】
歯並び良い人磨いた後

60秒間のきちんとしたブラッシング後に撮影した口腔内の3D画像です。歯垢が付着しやすいポイントだった左下画像の上顎の歯の裏側が未だにピンク色ですが、全体的には白くきれいになっていることが確認できます。全体的に汚れが落ちていると認識していいでしょう。

歯並びの悪いBさんのケース

【Before】
歯並び悪い人磨く前

Aさんと比較してBさんは色のつき方が極端な印象。正面から見るとそこまでピンク色は目立ちませんが、右上の画像と左下の画像からもわかるように歯の裏側はかなり濃く色づいていることがわかります。普段から磨き残しが多いポイントであることがわかります。同様に右下の画像の歯を抜いた後の大きな隙間の周辺/周囲や歯間、奥歯のくぼみの部分なども濃いピンク色が目立ちました。

【After】
歯並び悪い人磨いた後

表面はきれいに汚れを落とせたように見えますが、右上の画像と左下の画像を見ると上顎の裏側がかなり濃いピンク色であることがわかります。口を閉じた際に歯が重なる部分の磨き残しが目立つ結果となりました。また、右下の画像についても同様に、奥歯や抜歯の隣の歯にも歯垢がまだ確認できます。

【実験1結果】

歯並びが良いAさんの方が、ピンク色に染まった磨き残しの箇所が明らかに少ないことがわかりました。Bさんに関して正面から見れば歯垢はだいぶ落とせていますが、歯の裏側や奥歯など“歯ブラシが届きづらい箇所”に磨き残しがあることが明らかになりました。

【実験2】きれいに磨けるまでの時間を比較

ブラッシング

続いては歯がきれいに磨けるまでの時間を比較する実験。歯並びが良いCさん、歯並びが悪いDさんの2人の被験者に歯垢染色剤をつけてもらい、30秒毎に口腔内をチェックしてきれいになるまでの時間を計測します。

歯並びの良いCさんのケース

【Before】
歯並び良い人ビフォー

歯並びが良いCさんでも歯垢染色剤を塗った後は、全体的にピンク色になりました。特に歯と歯ぐきの間の歯ブラシが届きにくいゾーンに歯垢がついていることを確認できます。

【After】
歯並び良い人アフター

目視で確認できる染色剤が付着した箇所はなく、口腔内全体がきれいに磨けたことがわかります。歯垢染色剤を塗ってからきれいな状態になるまでは、2分を要しました。

歯並びの悪いDさんのケース

【Before】
歯並び悪い人ビフォー

歯並びが悪いDさんも全体的にピンク色に染まっているのは同じですが、乱れた歯と歯の間の隙間にピンク色が特に濃く残っていることが見受けられます。

【After】
歯並び悪い人アフター

まだ若干磨き残しはあるものの、全体的にきれいになるまでは3分を要しました。Cさんと比べて1分の開きが確認でき、たとえば朝の時間帯などで考えると少なくないロスであることがわかります。また、画像左上の歯列が重なっている箇所は最後まで歯垢を取ることができませんでした。

【実験2結果】

歯並びが良い人Cさんと歯並びが悪いDさんとでは、きれいに磨き終えるまで1分の差が生じました。さらに歯並びが乱れていたり、凹凸や八重歯があったりすると磨き残しにつながる可能性があるようです。歯並びが悪い場合は丁寧なケアには時間がかかりますが、より丁寧に磨くことを心がけることが大切です。

ちなみに歯がきれいに磨けるまでの時間の差が1分だと仮定すると、

1回の差が1分で1日2回のブラッシングを1年続けると……
1分×2回×365日÷60分=12時間
時給1,000円で換算すると年間にして12,000円の損失
30年で考えると36万円分のロスが生じる計算になります。

また、今回のDさんのように磨き残しがあると、虫歯や歯周病などのトラブル発生のリスクも高まります。口腔内の健康の維持はもちろんのこと、歯並びが良い方が治療の必要もなく、無駄な出費を抑えることができると言えます。

「歯並びが良い方が、必然的に磨き残しは少なくなる」

インタビュー

Ha・no・ne編集部 リン(以下リン)
今回の実験を振り返ってみてどんな印象を受けましたか?

とき矯正歯科 土岐泰弘先生(以下土岐先生)
良い歯並びの方と悪い歯並びの方とでは、磨き残しにおいて想像以上に顕著な差がありましたね。

リン
やはり歯並びが整っているとケアがしやすいということでしょうか?

土岐先生
その通りです。歯並びが良い方が必然的に磨き残しは少なくなります。実際に歯並びが悪い方の歯並びをきれいに整えた場合のシミュレーションをしてみると、口腔内の凸凹がなくなることでブラッシングも楽になると考えられます。歯磨きがしやすくなれば、結果的に磨き残しも少なくなるのではないでしょうか。

リン
では矯正治療に取り組む前、もしくは治療初期の歯並びが悪い方は、どのよう点に気をつけるべきでしょうか?

土岐先生
特異的な箇所に磨き残しが出やすい傾向にあります。そのため、鏡で見て確認できる歯の表面は磨けていても、歯の境目や歯と歯の間には歯垢が残りがちです。きちんと歯垢を取り除けていないと虫歯のリスクが高まります。歯は噛み合せることで車のサスペンションのように動いています。そのため、歯の間の汚れは擦り取られています。しかし、歯並びが悪いところは噛みあわせに参加できないため動きません。歯間の汚れをきれいに取るためには、デンタルフロスの使用をおすすめします。

リン
今すぐできる対策としては、どのような点に気をつければいいでしょうか?

土岐先生
歯並びをしっかりと整えて隅々まで歯磨きをしっかりすること。それがシンプルですが、重要ですね。ケアが足りず、歯ぐきの低下が進行すると汚れの残る歯間の歯ぐきは歯肉炎が発症していることが多く、歯周病へと悪化すると本来の姿に戻すことはとても困難になります。そのため、健康を保ち、現状維持をすることが最大の予防策です。だからこそ、歯並びを整えて日々のケアを心がけることが大切になります。

「自身の歯並びの形状を知り、ケアの仕方を工夫することが重要」

歯を磨いている様子

リン
今回の被験者のように歯並びが悪い方へのケアについてのアドバイスはありますか?

土岐先生
凹凸や八重歯を意識して磨くのはもちろんですが、凸凹があるところの隣の歯や後ろ側を入念に磨くことが大切です。今回の被験者であればDさんの例がわかりやすいと思います。正面からだけでなく、後ろからや裏から見ることで自身の歯並びの形状を把握しましょう。そのうえでケアの仕方を工夫することが重要になります。

リン
なるほど。私も歯並びがあまり良くないので、意識したいと思います。磨き方に関して気をつけることはありますか?

土岐先生
歯ブラシを歯に対して平行にまっすぐあてるとくぼみや隙間に届かないので、歯ブラシの毛先を歯ぐきに向かって斜めに当てるなど工夫するといいでしょう。また、大雑把に全体を磨くのではなく、小刻みに振動させて一定箇所を集中して磨くと汚れが落ちやすくなります。ホウキでタイルを掃除するイメージです。磨き方を工夫するだけで、結果は大きく変わってくると思います。

リン
アドバイスしていただき、ありがとうございます!私もまずは自分の歯並びの特徴を知ったうえで、丁寧な磨き方を実践していきたいと思います。


土岐泰弘先生

▼取材協力▼
とき矯正歯科 土岐泰弘先生

【経歴】
1994年 昭和大学歯学部卒業
1999年 昭和大学大学院卒業 歯学博士号取得
2001年 とき矯正歯科を三重県松阪市にて開院

【認定】
日本矯正歯科学会 認定医

「笑顔のために、矯正治療をより身近に」をモットーに、故郷の三重県で都心の大学病院クラスの矯正治療の提供を目指す地域の第一人者。

比較実験の詳細は「はならびスマイル」に掲載中
比較実験

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