埋没した親知らずへの正しい対処法は?
まっすぐ生える親知らずと埋没した親知らずの違い
親知らずには、他の歯と同様にまっすぐに生えているものと、横向きや斜め向きに生えて埋没しているものの2種類があります。その違いについてまず理解しましょう。
親知らずが埋没する理由は?
たとえば、下の親知らずであれば外側から内側に向かって突き上げるように生えます。そのため、親知らずと隣の歯の間に十分なスペースがあれば親知らずはまっすぐに生える可能性が高まります。
しかし、日本人は骨格的に顎が小さい人が多いため、スペースが足りないケースが少なくありません。上向きに生える前に隣の歯にぶつかると、親知らずは生え切らず途中で止まってしまいます。その結果、そのまま横向き、あるいは斜め向きの状態で歯ぐきの下に埋没してしまうのです。
埋没した親知らずのリスク
一部が歯ぐきに埋まっている親知らずは、歯ブラシできれいに磨くことができません。そのため歯垢が溜まり、「智歯周囲炎」を発症してしまう恐れがあります。これが悪化すると、親知らず周辺だけではなくお口、はたまた全身にまで悪影響を及ぼすので注意が必要です。
また、横向きに生えた親知らずは歯並びを乱す原因になります。歯は同じ方向から継続して力がかかることによって徐々に移動します。そのため、横向きに生えた歯があることによって歯並び全体が悪くなってしまうのです。
埋没した親知らずへの対処法は?
埋没した親知らずがあるからといって、すぐに抜歯しなければいけないわけではありません。しかし、親知らずによって何らかのトラブルが起きているのであれば治療が必要です。なお、このときの治療法は親知らずの生え方や口腔内の状態などによって異なります。
一部のみが埋没している場合
親知らずの一部のみが埋没している場合は、基本的に通常通りに抜歯できます。多少斜めに生えていたとしても、通常抜歯が可能な状態であればそれほど心配する必要はないでしょう。ただし、すでに炎症を起こしている場合はすぐに抜歯することはできません。これは、抜歯後に傷口に炎症が広がる恐れがあるためです。そのため、この場合は抗生物質で炎症を鎮静化させることが優先されます。
完全に埋没している場合
一部のみが埋没している場合と完全に埋没している場合では、大きく事情が異なります。親知らずが完全に歯ぐきに埋まっている場合は、普通抜歯ではなく外科手術での対応となります。
親知らずを抜歯するときの原則は、「生えている方向に引っこ抜く」ということです。しかし、横向きの親知らずは生えている方向に引っ張ることはできません。なぜなら、隣の歯によってスペースが狭められてしまっているからです。
そこで、完全に埋没している親知らずを抜くときには「親知らずを2つに割る」という手法を取ります。歯ぐきを切り開き、親知らずを歯冠と歯根に分けてから除去するのです。なお、必要に応じて歯根をさらに分割することもあります。
抜歯が難しいほど痛みは強い
抜歯後に麻酔が切れると、やはり痛みが襲ってきます。そして、このときの痛みの強さは抜歯の難しさとほぼ比例します。完全に埋没した親知らずを抜くときには、それなりの痛みを覚悟したほうがいいでしょう。
傷みを少しでも抑えるためには、医師の指示をきちんと守ることが大切です。止血用のガーゼをしっかり噛み、処方された抗生剤は最後まで飲み切りましょう。また、運動や入浴をしない、飲酒や喫煙を避けるなどの注意事項も必ず守るようにしてください。
親知らずに気づいたら早めに歯科の受診を
「親知らずの抜歯は痛い」とよく言われることもあり、親知らずを放置している人は多いと思います。しかし、特に埋没した親知らずはトラブルを引き起こしがちです。親知らずがある人は、できるだけ早く歯科医院で診てもらうようにしてくださいね。