矯正を諦めなければならない?金属アレルギーと歯列矯正の関係性

2017.05.09 health渡辺蘭

矯正装置で金属アレルギー反応が起こる理由

金属の甲冑

ブラケット矯正に用いられる矯正装置には「ブラケット」と「ワイヤー」が使われています。これらは、いずれもニッケルやコバルト、クロムなどの金属で作られていて、唾液の作用により金属の素材が徐々に溶けだす「イオン化」が生じます。

イオン化は、水分により金属が体内に吸収されやすい小さな物質になることを指します。イオン化した金属は口腔内の粘膜から吸収され血管内から全身に運ばれて身体の免疫機能が過剰反応し、アレルギー反応が起こります。

では、金属でアレルギーを起こす場合は歯列矯正を諦めなければならないのでしょうか? アレルギー反応が起こる場合でも歯列矯正を行うことはできます。しかし、金属アレルギーを起こさないように矯正治療を進める必要があるので、不安な方は歯科医に相談をしてみるとよいでしょう。

金属アレルギーを起こさないためには?

皮膚科でアレルギー検査を受ける

パッチテスト

ネックレスやリングなどの金属アクセサリーは、矯正装置と同じニッケルのメッキ加工が施されているものがあるので、身に付けていて金属アレルギーを起こしたことのある人は、矯正装置でも金属アレルギーが起こることがあります。これを防ぐには、あらかじめ皮膚科で血液検査やパッチテストを受ける必要があります。どのような金属に対して免疫が過剰反応を起こすかを知ることで、アレルギーが起こる素材を避けて矯正治療が行えます。

金属アレルギーに適した矯正装置を装着する

矯正器具

金属アレルギーを起こしにくいブラケットの種類は豊富なので、反応する金属に合わせて選ぶことができます。代表的なブラケットは「プラスチックブラケット」、「セラミックブラケット」、「インスパイア(サファイア)ブラケット」、「オーソス2(チタン)」などがあり、これらの矯正装置を装着することで金属アレルギーを起こさずに矯正治療を行うことができます。

ワイヤーの場合は、「TMAワイヤー(チタンモリブデン合金)」という、ニッケルやコバルト、クロムなどを含まれないワイヤーを使います。アレルギーを起こしやすい素材が使われていないので、金属アレルギーでも安心して装着できます。

インビザラインなどのマウスピースタイプの矯正を選ぶ

マウスピース

その他の方法としては、矯正方法自体を変えるという手段もあります。インビザライン矯正などのマウスピースタイプの矯正の場合は、素材にポリウレタンを使用しているので金属アレルギーを起こす心配はありません。しかし、ブラケット治療に比べると歯が移動するのに時間がかかるため、治療期間が長くなります。

矯正装置で起こる金属アレルギー症状

舌を触る男性

すでに矯正装置を装着している場合は、アレルギー反応が出ていないかを確認しましょう。矯正装置が原因でアレルギー反応が起きている場合、症状は多岐にわたります。なかでも多い症状は口内炎や口唇炎です。金属部分が触れている口腔内の粘膜に炎症が起こり、症状が現れます。また、舌に痛みが出て、炎症を起こすこともあります。

金属イオンは血管内を通り全身に運ばれると、汗と共に分泌されるので、全身に症状が現れることもあります。なかでも手の平や足底などは汗をかきやすいので金属イオンが分泌しやすく、アレルギー反応が起こると水泡ができてしまう“掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)”などが起こることもあります。

また、アトピー性皮膚炎、脱毛症、ステロイド皮膚症などさまざまな全身症状が出る可能性があります。

金属アレルギーでも歯列矯正はできます

抱き合う女性

金属アレルギーは気付きにくいですが口腔内だけではなく全身症状が出てしまう可能性があるので、十分に注意が必要です。しかし、歯列矯正は使う装置の素材を変えたり、矯正方法自体を変えたりすることで柔軟に対応できるので、金属アレルギーでも矯正治療を諦めることはありません。まずは歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

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