怖い!逃げたい!初めてづくしのインプラント埋入手術~実録“インプラント女子”第5話~

2017.12.27 reviewHa・no・ne編集部 RIKA

8月8日 ついにインプラント埋入手術当日が来てしまった!

傷口の経過を見て決めた手術日は8月8日火曜日。お盆前に手術をすると「帰省した時においしい料理が満足に食べられないのでは?」という懸念はありましたが、歯が折れた原因が帰省中の暴飲暴食だったことを思い出して、この日の15時半に手術の予約を取りました。この日は15時まで編集部で勤務していたので、退勤時の日報に手術前のリアルな心境が記録されています。その一部をご覧ください。

日報の一部
(実際の日報から抜粋)

事前に麻酔をするのでほとんど痛みはないとわかっていても、手術の時間が近づくにつれ言い知れぬ恐怖が私を襲います。歯科医院は会社から歩いて3分の場所にあるのですが、たったの3分間では心の準備が整わず、歯科医院の少し前を行ったり来たりして「嫌だな~行きたくないな~怖いな怖いな~」とおじけづく一幕もありました。読者の皆さんも想像してみてください、これから自分の顎に異物(インプラント体)が埋め込まれ、これから人生の大部分を共にしなければならないという恐怖と絶望を……。

初体験その1:懐かしい味?おいしい麻酔で不安が和らぐ

バナナ

歯科医院の待合室で震えること5分、「RIKAさ~ん」と名前を呼ばれて案内されたのは、いつも診察で使っている部屋よりも奥の方にある広い治療室でした。手術用の椅子に横たわると、女性の先生が現れて、あっという間に歯ぐきに麻酔をしてくれました。「このまま少し時間を置きますね」と言われ、部屋に一人残される私。緊張で体はこわばっていましたが、なんとか一息つくとあることに気がつきます。

「ん?この麻酔、甘いぞ……!?」
なんと、麻酔を施された箇所から、ふんわりとバナナのような香りが広がってきたのです。麻酔に味があるなんて説明はなかったのでこれには驚きましたが、子どものころから慣れ親しんだバナナの味が「RIKA、俺がついているぞ、安心しろ!」といってくれているように思えて、多少は緊張がほぐれました。

麻酔によって歯ぐきの感覚がなくなる頃、もう一度女性の先生が私の歯ぐきに麻酔を施しました。感覚がないので、正直なところそれが本当に麻酔だったのかはわかりませんが、2回目の麻酔が手術のために必要な「浸潤麻酔」で、バナナの味がしたものは麻酔の痛みを和らげるための「表面麻酔」だったのだろうと、今となっては回顧できます。

初体験その2:大げさな手術用エプロンにビビる

歯科治療

2回目の麻酔をしてからしばらくすると、執刀医の先生とアシスタントの方々が部屋に入ってきました。「手術の準備をしていきますね」と言われ、椅子に横たわる私の上にかけられたのは、口元だけが円形に開いている手術用のエプロン。まるで、手術中に大量の血が飛び散るのを防ぐかのような装備だったので、恐怖で息が浅くなり「落ち着け……何も考えるな……」と必死で自分に言い聞かせました。

しかし、そんな私にさらなる追い打ちをかけたのが、私のみぞおち付近にのせられた手術用の器具(術中に先生が持ち替えるようなもの)の絶妙な重さです。意識ある人間の体の上に手術用の器具をのせるのはいかがなものかと思いましたが、それほど効率が重視される手術なのだと理解したときには、もう先生が私の歯ぐきをトントンと器具で触っていました。麻酔の効き目を確かめているのでしょう。口元以外をエプロンで覆われている私は、痛みのない衝撃と何も見えない状況に、ただ耐えるしかありませんでした。

顎の骨に穴が開くってこんな気持ち

インプラント

今回私が受ける手術は2回法と呼ばれるインプラント埋入手術の1回目の手術です。2回法では1回目の手術でインプラント体(人工歯根)を顎の骨に埋め込み(私の場合は顎の骨が不足していたので骨造成も行い)、一度傷口を縫ってふさぎます。その後、インプラント体と顎の骨が結合するまで3ヶ月ほど期間を置いたのち、2回目の手術で再度歯ぐきを開きアバットメント(連結部分)と上部構造(白い歯の部分)を取り付けるというのが手順です。

手術は手際よく進行し、20分ほどで終わりました。途中、ドリルが顎の骨を削る振動を感じたり、傷口を縫う場面で先生がアシスタントの方を厳しく指導したりと、ぎゅっと目をつぶるポイントは多々ありましたが、最後まで痛みを感じることはありませんでした。医療技術の進歩って本当にありがたいですね。しかし、感覚がないため、どのタイミングで骨造成の処置をしたのか、血はどのくらい出たのかなどの詳細は未だにわかりません。こんな連載をすることになるのなら、手術前によく聞いておけばよかったと今更ながら後悔しています。

手術を受けている間は「早く終われ!」と思いながらも、昔テレビで見た「病気やけがで体の一部を失ったら機械に付け替えればいい」という、アメリカの実業家の話を思い出していました。自分が無機物と一体化していると考えると近未来的で、なかなかロマンがありますよね。というか、そんな風に発想を転換しないと、顎の骨にインプラントを埋め込む手術なんて怖くてとても受けられません(笑)

機械と体

なんとか手術が成功し、安堵したRIKAでしたが「当日は安静に」という先生の言いつけを破ってアクティブに動いてしまい、鼻血を出した話はまた今度。次回のトピックは「術後の鼻血リスク」「溶けるはずの糸がなかなか溶けない」「早く歯が欲しい」です。お楽しみに!

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【ライター紹介】 RIKA

RIKA

Ha•no•ne編集部でもっとも歯に悩みを抱えるライター。小学生時代に上下の顎の噛み合わせが逆である「不正咬合」であることが判明したのを皮切りに、乳歯が生え替わる際に必要な永久歯が生えない「先天性欠損」や慢性的に冷たい物が歯にしみる「知覚過敏」など数々の困難を経験。2017年春には25歳にして永久歯を1本失った。そんな“口運”に見放された悲劇のヒロインとしての物語を「実録!インプラント女子」にてありのままに綴っている。予防歯科や矯正治療の重要性を世の中に発信したいという気持ちは、当然ながら“ノンフィクション”だ。

Twitter:香取さとり【文筆業】
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