お口の健康において予防がもっとも重要なワケ~ちぃ先生の手記第2回~

2018.08.31 dhちぃ先生

Cure(治療)からCare(予防)の意識へ

平成27年6月、厚生労働省は「保健医療2035提言書」を発表し、健康維持のためには“キュア中心からケア中心へ”と意識を変えていく必要があることを提言しました。“キュア(Cure)”とはすなわち治療であり、“ケア(Care)”は予防を意味します。この考え方は歯科領域でも適用されており、現在では単に虫歯や歯周病を治療するために歯科医院へ行くのではなく、予防のために定期的に歯科医院に通うことが推奨されています。

ちなみに「定期検診」と聞くと、健康診断のようにいろいろな検査を受けることをイメージされるかもしれませんが、歯科医院に通うことはそんなに敷居が高いことではありません。歯石を取りに行くだけでも立派な予防歯科の一環なのです。歯石が歯についていると歯肉が腫れ、歯周病を発症しやすくなります。実は虫歯よりも歯周病の方が歯を失うリスクが高く、且つ大人が罹患しやすい病気なので面倒くさがらず通ってほしいですね。

理想をいうと美容院に行く頻度と同じくらい(3ヶ月程度)で、歯科医院に定期検診に通ってほしいです。私も歯科医院で働いていて、予防に熱心で“デンタルIQ”の高い患者さんも増えてきた印象はありましたが、相対的にはまだまだ少ないと言えます。“キュア中心からケア中心へ”の考え方の移行は、今後も啓蒙し続ける必要がありますね。

予防するうえでの重要な2つのケア

これからの歯科医療がケア中心の時代になりつつあることは、みなさんもご理解いただけたと思いますが、実際にどんなケアをする必要があるのでしょうか?歯科疾患を予防するうえでは、重要なケアが2つあります。1つは歯科医院などで行う「プロケア」、もう1つは自宅で行う毎日の「セルフケア」です。この2つのケアはどちらかではなく両方を実践することが大切です。

プロケアでは歯科医院にて行われる定期検診や歯石取りなどのクリーニング、歯磨き指導などの予防処置になります。自身では気をつけているつもりでも、歯石や着色汚れはすぐについてしまうものなので、忙しくても1年に1回はプロケアを実践してほしいですね。セルフケアは主にブラッシングのことを指すので多くの方が実践していると思いますが、磨き残しが多いのが現状です。歯と歯の間や歯と歯ぐきの間など磨き残しやすい箇所を重点的に細かい動きで磨くようにしましょう。

プロケアのために定期的に歯科医院に通っている患者さんは、こちらから指導することが何もないくらいにお口の中がキレイです。虫歯どころか汚れがついてないレベルで、セルフケアにも力を入れているのがすぐにわかります。こうした予防意識が高い方は将来的にも歯を失うリスクは限りなく低いと考えられます。

予防で実現するQOLの向上

入れ歯

近年、歯科予防において「QOL」という言葉が使われていますが、Quality of Lifeの略であり、直訳すると「生活の質」を意味します。虫歯や歯周病が原因で歯をなくすと、食事も楽しみづらくなります。そのため、歯科領域では、「生涯にわたり虫歯もなく、自分の歯でおいしく食事ができる」というQOL向上を1人ひとりの患者さんが強く意識する社会の実現を目指しています。

実際に自分の歯と入れ歯を比較すると、入れ歯での食事は美味しく感じないのです。それに非常に噛みにくくなり、必然的に柔らかい食べ物しか口にできなくなり、大きくQOLが低下してしまいます。歯を1本失うと隣接する歯も悪くなりやすく、これを繰り返して総入れ歯になる患者さんも多いので、歯を抜かなくてもいいようにセルフケアは常に入念に行ってほしいなと思います。

自宅でブラッシングすることはセルフケアであり、立派な予防歯科になるので、持続的なQOL向上の取り組みを今日から実践していきたいところですね!

❤ちぃ先生から一言❤ 予防定着のために歯科の知識(デンタルIQ)の向上を

30年前には総数で約12万本見つかった子どもたちの虫歯が、平成26年にはわずか2万本にまで減少しました。これは社会全体でお口の予防意識は高まってきており、歯科医院へ通うことはもはや普通になってきていることを表しているかもしれません。しかし、まだまだ治療のために通院する意識が強いのかなと思います。仮に歯を失ったとして、インプラントや矯正治療で機能を補うためには100万円単位の治療費がかかってしまう可能性があります。歯科医院で行うプロケアは保険で行えるので、歯を失わないために予防歯科への意識を高めてもらいたいですね。

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【ライター紹介】 ちぃ先生

ちぃ先生

歯科衛生士の有資格者でありながら多くの女性メディアで活躍中のライター・編集者。現在は女性向けの美容メディアやJJなどのファッション誌などに寄稿している。コスメコンシェルジュの資格を持ち、コスメ・美容への造詣が深い。また、サッカー好きが高じてアスリートフードマイスターの資格も取得している。美容と健康に高い関心と知識を持っており、Ha・no・neでは利用者のQOLの向上を目指し、ためになる情報を発信していきたいと意気込んでいる。

・ちぃ先生の手記まとめPART1 ~美容ライター兼歯科衛生士の知恵袋~

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