【前編】歯周病専門医が教えるのはコップ1つで「歯周病」のセルフチェックができる方法
口臭のニオイが気になるのは「歯周病」のサイン
気がつかないうちに進行してしまう「サイレント・ディジーズ」
――歯周病は、成人が罹患するイメージですが、子どももかかるのでしょうか?
若林先生 歯周病は大人の病気と思っている方もいらっしゃいますが、実は子どもがかかることも多い病気です。
――そもそも、なぜ歯周病にかかるのでしょうか?
若林先生 まず、人の口の中には細菌が500種類から700種類ぐらいいると云われています。そのうち歯周病に関係する菌は5種類くらいです。それは子どものころから持っているものなんですよ。これらが歯磨きをしない、磨き残しによって歯垢が増え、口の中の菌が繁殖して、結果的に歯茎に炎症をおこします。
ですので、子どもであっても、歯周病にかかることが少なくありません。ただ、歯周病は歯肉だけが炎症をおこしている歯肉炎と骨まで溶けてる歯周炎の両者を総称したものです。子どもはその中でも「歯肉炎」の症状が出る傾向にあるのですが、酷い場合は、歯茎が腫れて血が出ている状態の子もいます……。
――子どもだからといって歯周病について油断はできませんね。
若林先生 ですから、歯周病は「いつ発症する」というのではなく「毎日進行していくもの」だと考えてください。20代で少しずつ骨が溶け、40代~50代になる頃にはかなり骨が溶けているという方も多いです。年齢を重ねるにつれて、だんだん進行していくのでパッと見ても分からないし、自覚症状もあまりないので気づかない人も……。そういった方の場合は、そのまま進行していくと骨が溶けて歯がグラグラして、50代~80代の間に急激に歯が抜けていくことになります。
――歯周病は歯が抜けるまでわからないものですか?
若林先生 歯周病の症状には、たとえば以下のように、さまざまな症状が見られます。
(1) 歯茎の腫れや赤み、出血、歯がグラグラする
(2) 歯茎が下がって歯並びに隙間ができる
(3) 見た目が悪くなる以外にも口臭が強くなる
最初に気が付くのは歯がグラグラしてうまく食べ物を噛めない、急に歯茎が腫れてきて痛くなることでしょうか……。中には歯がグラグラしていても気が付かず、骨が半分以上〜3分の1くらいまでなくなってしまってから、ようやく発覚する人もいます。骨がある間はあんまりグラグラしないので、分からないまま進行していることが多いですね。
――歯がグラグラし始めてから気づくのはすでに手遅れでしょうか?
若林先生 そうなると手遅れになることもあります。だから、歯周病というのは「サイレント・ディジーズ(静かなる病)」と呼ばれているのですよ。骨は一度溶けてしまうと基本的にはもう回復しません。そうなる前にちゃんとケアしていくことが重要です。
歯周病かどうか知りたいときのセルフチェック方法とは
――歯周病の初期症状として判断するサインはあるのでしょうか?
若林先生 歯茎の状態が正常であれば、出血はしません。しかし、普段通りの歯磨きをしていて出血したら、それは歯茎が炎症を起こして腫れているサインだと考えられるでしょう。
――デンタルフロスを使うと血が出てしまうことが多いのですが、それは正常ではないということですか?
若林先生 そうですね。健康な状態の歯であれば血がでることはありません、もし出血するのであればのであれば歯周病を疑い歯科医院で診てもらうようにしましょう。
――歯周病による口臭は独特なニオイとよく聞くのですが、実際いかがでしょう?また、気になるニオイは自分で気づくことができるのでしょうか?
若林先生 独特のニオイは“メチルメルカプタン”という、たまねぎの腐った生臭いニオイをイメージしてください。そもそも自分ではそのニオイに慣れてしまうこと(順応反応)から、口臭は自身で気づきにくいものです。鼻の穴の奥の嗅球にある嗅神経がニオイを感じとり、脳に伝えているのですが、ニオイを感じとる嗅神経のある鼻腔と口腔は繋がっているので、口の中の臭いが鼻腔の嗅神経を麻痺させるため臭いと感じなくなります。
――自分の口臭を確認するための方法はあるのでしょうか?
若林先生 空のコップにハアーっと息を吐いて、そのニオイが逃げないように手で蓋をしましょう。その状態でスーハースーハーと深呼吸して嗅神経をリセットします。そして、ニオイに順応した嗅神経を元に戻した状態で蓋をとって嗅いでみると、自分の口のニオイがわかります。
あとは、デンタルフロスを歯と歯の間を通してとれた歯垢とかを嗅いでみて、もしそれが臭ければ要注意です。健康な人からは基本的には歯周病のニオイはしません。生理的な口臭や、口の中の乾燥、朝起きた時のニオイはありますが、たまねぎの腐ったニオイがしたら歯周病を疑いましょう。
――セルフケアで症状が良くなることはありますか?
若林先生 もちろん、セルフケアを丁寧に毎日やることは重要ですが、それだけで100%よくなることはありません。どんなに丁寧にブラッシングをして、デンタルフロスを使ったとしても、100%歯垢を取り除くのは難しく、取り残した歯垢は歯周病菌のすみかになってしまいます。
歯周ポケットが深くなった奥の所は自分では清掃できないところなので、一度歯周病を発症してしまったら、歯科医院で歯周病の治療をしてもらいましょう。治療が終了したら定期的にクリーニングに通院しきれいな歯と歯茎を維持しましょう。
いかがでしょう?歯周病かどうか確認できるセルフチェックの方法は、誰でも簡単にすぐにできるので、ぜひお試しください!そして記事の後編では、女性が歯周病にかかりやすいタイミングや、全身に及ぼす影響についてなど、さらに詳しく取材をおこなっています。こちらもお見逃しなく!
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