1回法と2回法の違いは知っている?専門医が語る失った歯を補う「インプラント治療」の選び方

2019.08.23 interviewHa・no・ne編集部

「抜けたあと放置」はNG!まずは専門医に相談を

歯が抜けたまま放置するとお口全体が崩れてしまうリスクが…

高田尚美先生



Ha・no・ne編集部 リン(以下リン)
先生はインプラント専門医として、さまざまな患者さんの治療をおこなわれています。Ha・no・ne読者のような若い世代の女性がインプラント治療を受けることもあるのでしょうか?

小金井歯科 院長 高田尚美先生(以下高田先生)
原則、インプラント治療を25歳以下の方におこなうことはありません。なぜなら、噛み合わせがまだ安定していない可能性があるからです。

リン
なるほど。ちなみに、歯が抜けたあと放置するのは危険なのでしょうか?


出っ歯になる



高田先生
危険です。例えば奥歯が抜けると、顎がそちらの方向にシフトしていきます。これは顎関節症の原因につながるでしょう。また、奥歯の両側が無くなると、上の前歯が付きあげられて歯が広がって隙間ができ、いわゆる出っ歯になっていきます。

リン
1本抜けるだけで、全体が崩れてしまうのですね。

高田先生
ですから放置はダメですね。

「インプラント専門医」でもその種類はさまざま

インプラント専門医



リン
インプラント治療を専門医から受ける場合と、そうでない場合との違いはあるのでしょうか?

高田先生
違いはありますね。ただ、専門医でなくても、勉強している方はたくさんいらっしゃいますよ。「インプラント専門医」と一口で言っても、実はさまざまな種類があります。その歯科医院でインプラントを専門にやっているだけで「インプラント専門医」などと表記されている場合すらあります。1つ基準にするとすれば「日本口腔インプラント学会」と「日本顎顔面インプラント学会」に属する専門医であるかどうかですね。


口腔インプラント専門医認定証



リン
また治療費の面では、専門医とそうでないところで差はあるのでしょうか?

高田先生
一概に言えないのですが、インプラント治療を普段あまりやっていないところのほうが、高いケースがあります。あとは、やはりインプラントは身体の中に入れるものですから「治療費が安いから」という選び方は避けるべきでしょう。
当院の場合、コストはかかりますが、スイスの「ストローマン」というメーカーの、品番で管理されたパーツを使っています。

リン
それは患者さんが選ぶときの基準にできるポイントですね!

インプラントの手術方法やメーカーはどうやって選ぶの?

手術方法と使用するメーカー



リン
インプラント手術には、1回だけおこなう「1回法」と、2回に分ける「2回法」があります。この2つのメリットやデメリットはありますか?患者さんとしては、やはり1回で手術が済んだほうが嬉しいとは思うのですが……。

高田先生
実は、患者さんが「こっちがいい」という問題ではありません。「1回法」でできるかどうかは部位(見た目に関わる前歯か奥歯か)や骨の量、歯を失ってからの期間、周囲に炎症(歯周病や根の先の病気)など、様々な要素が絡んでくるからです。あとは医師の経験値が必要ですね。歯を抜いたさいに、どこまで骨が減っていくのかを予測しなければならないため、難しい施術なんですよ。

一方「2回法」は、インプラント体を埋め込んだあと、3ヶ月〜5ヶ月前後治癒期間を設けます。そうすると歯肉がしっかり治りますし、骨の量が少なく骨移植が必要な場合も対応できます。ですから私は「2回法」をなるべく患者さんに提案していますね。

リン
「1回法」は医師の経験値や技術面も大きく関わるということですね……。インプラント治療を受ける患者さんは、自分なりに色々調べ、メーカーにもこだわるイメージがあります。実際のところいかがでしょう?

高田先生
確かに、詳しい方もいらっしゃいます。うちで使用しているのは「ストローマン」なのですが、このメーカーは国内シェア率が高いため、転勤などで引っ越した場合も、次の医院が見つかりやすいんですよ。あとは、パーツ供給の安定性もあります。急に変更になると、メンテナンス性が低くなりますから。

リン
メンテナンス性も考えなくてはいけないのですね。

自費治療と保険治療の違い…歯科医院の選び方は?

歯科医院の選び方



リン
先生が自由診療専門でいらっしゃるのは、やはり、保険診療では治療の範囲が限られるからでしょうか?

高田先生
そうですね。枠があると、どうしてもできない治療がたくさんあります。それから、自由診療ですと、患者さん1人ひとりに時間をかけやすくなります。

リン
全額自費で高い治療費がかかっても、質の高い治療を求める患者さんがいらっしゃるのですね。

高田先生
ほかのクリニックでは改善できなかった部分を治療しに来られる患者さんや、初めから「自分のことを大事にしてもらいたい」と思っていらっしゃる方もおられますね。

リン
自由診療と保険診療とでは、治療結果に違いは出るのでしょうか?例えば自由診療のほうが結果的に長持ちする、ですとか…。

高田先生
それは「歯科医師による」としか言えないです。保険診療でもきちんとなさっている先生はいらっしゃいますよ。インプラント治療を受ける場合は、インプラントのメリットとデメリットをきちんと説明してくれたり、そもそも歯を無くした原因から考えるような歯科医師を選んでほしいです。

リン
抜けた部分だけでなく、抜けた原因も考えて診てもらえるかどうかが重要なのですね。

高田先生
そうですね……例えば歯周病や虫歯、歯ぎしりなど「感染」と「力」との掛け算で歯は失われてしまいます。インプラントは、そのような「その患者さん固有のリスク背景」も考えて入れる必要があります。
あとは、自分と似たケースを治療したときの写真を見せてもらうのもいいと思います。勉強熱心な先生でしたら、治療結果を写真に残していますから。担当の歯科医師によく相談してみてくださいね。

リン
そこまで踏み込んで、納得した上で治療を受けたほうがいいのですね。

高田先生
インプラントは高額な治療ですし、身体の中に入れるものですからね。自分の身体を大事にするためにも、慎重に考えて治療を受けて欲しいです。

リン
歯が失われた部分だけでなく、口の中や自分の身体全体のことも考えることが大切なのですね。とても勉強になりました!



取材では、たとえ1本の歯でも、抜けたあとに放置するとさまざまな弊害が起こることがわかりました。インプラントは自由診療で高額な治療費はかかりますが、その分見た目を美しく保て、残っている歯を守ることもできます。
今回、インプラントのメリットやデメリットをしっかり理解した上で、治療を受けることの大切さを知ることができました。高田先生、この度は貴重なお話をありがとうございました!

▼取材協力▼

小金井歯科
〒184-0004 東京都小金井市本町5-7-2 小金井歯科ビル
電話番号:042-381-3350
ホームページ:https://www.koganeishika.com/

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