歯が溶ける可能性も!過食嘔吐がお口に与える悪影響

2017.10.20 health福本春香

過食嘔吐の主な原因

過食嘔吐とは?

過食嘔吐とは、必要以上に食べ物を摂取した後、自分の意思で嘔吐を誘発(自己誘発嘔吐)する行為のことです。歯を溶かしてしまうだけでなく、生理不順、浮腫、食道炎、肌荒れなどほかにもたくさんの症状が起こることが想定される危険な“心の病”です。

自己誘発嘔吐の代表的な行為は、「口の奥に指を突っ込んで吐き出す」「大量に水を飲むことで吐き出そうとする」などが挙げられます。こうした行為は、摂食障害を引き起こす危険性があります。

また、過食嘔吐は摂食障害が原因となっていることもあります。摂食障害は大きく分けて2つのタイプがあり、それは「拒食症」と「過食症」です。もっと食べるため、食べた分をなかったことにするために嘔吐をする、あるいは嘔吐をするために過食をするといったパターンなどその原因はさまざまです。

・過食症
強い過食衝動により、短時間のうちに大量の食べ物を摂取します。大食いの人と違うのは、過食の後に激しい自己嫌悪や太ることへの恐怖心、罪悪感により自己誘発嘔吐をすることです。

・拒食症
極端に食事の量が少ない「制限型」と「むちゃ食い・排出型」があり、過食症のように過食後に自己誘発嘔吐をすることです。

過食嘔吐をしてしまう人の心理

自分の体型や体重に対して執着しすぎ、「痩せなければならない」という強迫観念的な強いコンプレックスを感じたり、ストレスや精神的な不安、食事への強い罪悪感を覚えたりする人が過食嘔吐をしてしまうと言われています。

過食嘔吐になりやすいタイプ

若い女性・まじめで完璧主義の人・ダイエットに依存している人・低栄養状態/機能性低血糖症の人などがなりやすいようです。過食が起こるタイミングは人それぞれですが、精神的・身体的なストレスが主な原因とされているので、ストレスを自覚している人は対処できるかもしれません。

過食嘔吐を繰り返すと歯が溶ける!?

過食嘔吐を繰り返し続けると、歯のエナメル質が溶けてしまうことがあります。酸によって歯が溶けてしまう症状を「酸蝕歯」と呼びます。

酸蝕歯とは

酸が含まれた食品を過剰に摂取したり、胃酸の逆流によって歯の表面のエナメル質が溶けてしまったりすることを指します。酸が過剰になると再石灰化が追いつかず、エナメル質が溶けて、その象牙質が前面に現れてしまったり、象牙質も侵食されて欠けたような状態になったりといったケースもあります。

過食嘔吐が引き起こす悪影響

過食嘔吐は、胃液も一緒に吐き出すことになります。胃液は酸性度が強く、嘔吐によって歯に胃液が付着する、口内が酸性になることで酸蝕歯が起こりやすくなります。

胃液に含まれる胃酸は塩酸と同じで、通常時の酸性度はpH:1~1.5(※)ほどの強酸性です。満腹時は食べたものによってpH:4~5ほどに薄まりますが、それに合わせて分泌量も増えるため、食後にまた酸性度が強まります。この状態で過食嘔吐をしてしまうと、胃のように粘膜で保護されていない食道や喉、口腔内を強酸性の液体が通過することになるのです。

これにより、食道であれば「逆流性食道炎」を引き起こす可能性があります。前屈姿勢や寝転んだだけでも胃酸が口の中まで逆流してしまうこともあるの注意が必要です。

過食嘔吐をすることにより、歯にダメージが蓄積することによって「虫歯」になるリスクが高まったり、歯が溶けてしまったりする場合もあります。さらに、虫歯の進行が早まったり、再発が早くなったりなどの問題が生じることがあります。

※pH
水素イオン指数。数値は0~14で表記されることが多く、0に近いほど酸性が強く、7で中性、14に近いほどアルカリ性が強いことを示す

過食嘔吐の発生を未然に防ぐことで、胃酸の逆流による酸蝕歯などのリスクは抑えられます。しかし、簡単に治せるものではなく、過食症や拒食症は癖になると自分ではどうすることもできず、症状が続いてしまう人が大半です。たとえ専門の医療機関で治療を始めたとしても長い時間がかかり、その治療中もまた過食嘔吐をしてしまう人もいます。

しかし、過食嘔吐の症状が見られる場合でも、以下の5つのポイントに気をつけることで症状の緩和が期待できます。

ポイント1 胃酸を洗い流す

嘔吐してしまった場合は、しっかりとうがいをして酸を洗い流してください。できれば、酸の味がなくなるまでうがいするのがおすすめです。少しでも酸が残っていると、その後味だけでまた嘔吐を繰り返してしまう人もいます。

ポイント2 時間を空けて歯を磨く

うがいをしたら次は歯磨きです。ここで注意すべきなのが「30分から1時間おいてから歯を磨く」ということです。嘔吐後すぐに歯を磨いてしまうと、エナメル質がはがれやすくなってしまうため虫歯になるリスクが高まります。口の中がもやもやしてすぐに歯を磨きたくなる気持ちもわかりますが、お口の健康のためにはうがいで我慢することが大切です。

ポイント3 フッ素入り歯磨き粉を使う

使用する歯磨き粉は、エナメル質の再石灰化を助けてくれる「フッ素入り」のものがおすすめです。歯磨き粉ではなく、フッ素入りのジェルでもいいでしょう。

ポイント4 炭酸飲料(酸性の飲み物)を避ける

嘔吐後は歯が溶けやすい状態になっているので、炭酸飲料などの酸性の飲み物はできるだけ避け、水を飲むようにしましょう。水なら口の中に味が残ることがないので、二次的な嘔吐を誘発する危険性が下がります。ただし、水の飲みすぎには注意が必要です。多量の水分摂取は、胃腸の調子を崩すことにつながり、嘔吐を誘発する可能性があります。

ポイント5 定期的な歯科検診を受ける

定期的に歯科医院で検診を受け、酸蝕歯のチェックをしてもらいましょう。日々の生活の見直しもかねて、自分の口腔内の健康状態を知ることができます。

まずは自分ができるケアから始めましょう

過食嘔吐が癖づいてしまうと、毎日繰り返してしまったり、時には一日中過食嘔吐を繰り返してしまい、場合によっては社会生活や学生生活などが困難になったりすることもあります。そうなる前に一度病院で診てもらうことをおすすめします。

過食嘔吐は体にとって悪影響となるリスクが高まるばかりです。逆流性食道炎になってしまうと夜眠れなくなる、食べ物が食道を通るたびに痛む、声がかすれる、睡眠中に逆流したものが気道に入り、誤嚥性の呼吸器症状を引き起こしかねません。また、一度酸蝕歯になって溶けてしまった自分の歯は二度と元には戻ることはないので、その前に自分でできるケアからまずは始めることが大切です。

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