ブリッジにすると60%まで咬合力がダウン!歯が1本抜けるデメリット~ちぃ先生の手記第65回~
「奥歯だから見えない」は悲劇の始まり!
歯が入れ歯に変わるだけで噛む力は20%までダウンする
歯が1本でもなくなると、噛み合わせや顔の見た目に重大な影響を及ぼします。そのため、歯科従事者は「歯をなくさない」ことに重点をおいて治療しています。虫歯の治療も歯周病の治療も、ゴールは歯を失わないようにすることなんですよ。
みなさんは、厚生労働省や日本歯科医師会により推進されている「8020運動」をご存じでしょうか?これは満80歳で20本以上の歯を残そうという運動で、自分自身の歯を残すことがどれだけ重視されているかがわかりますね。
ところが、患者さんの中には「歯が1本くらい抜けても何もしなくてもいいや」と考える方も少なくないのか、虫歯や歯周病で歯が抜けているのに何も治療をしていない方もいらっしゃいます。天然歯の咬合力を100%とすると、インプラントでは90%、ブリッジでは60%、入れ歯では20%といわれています……。噛む力が減少すると食べ物の咀嚼がむずかしくなり、せっかくの食事がおいしく感じられなくなってしまいます。おいしく感じられなくなることで、食欲が減退してしまうことも考えられますね。
また、歯がなくなると、隣の健康な歯が空いたスペースに倒れてきてしまう傾向に……。よって、噛み合わせが悪くなったり、発音が悪くなったり、歯みがきがしづらくなり、新たな虫歯や歯周病の発生源につながってしまう可能性が考えられるでしょう。
このように「たかが1本抜けたぐらいで」と軽く考えていると、口の中だけではなくさまざまな身体の不調を引き起こしてしまうため、注意が必要です。
歯を失うと美容面にはどんな悪影響がおこるの?
では、歯を失うことによる美容面への影響はどうでしょうか。通常では、全部の歯がそろっていて左右均等に噛めることで、両側の顔の筋肉が鍛えられバランスが整っています。しかし、歯を失うとバランスよく噛むことができなくなるので、顔にゆがみが生じ、左右非対称の唇になってしまう恐れがあります。
また、歯を失うと実年齢以上にしわが目立って見えることがあります。歯がなくなることで、歯を支えている骨も徐々に吸収されてしまい、口元にしわがよってしまうためです。デフォルメされたおばあさんのイラストはよく口元がシワシワに描かれますが、これは顎の骨が吸収されて皮膚がたるみ、シワになっているという表現にあたります。
さらに、残っている歯が空いてしまったスペースに倒れると、前歯にすきまができたり、歯列の正中線がゆがんでしまったりすることも考えられます。口もとのゆがみや前歯にすきまができてしまった状態を想像すれば、美容に与える悪影響をはっきりとイメージできるでしょう。
失った歯へできる対処法と歯を失うリスクや副作用
ここで、実際の患者さんのケースを紹介します。若い患者さんで、歯を1本喪失したまま放置している方の場合です。その患者さんは、いざ治療を始めようにも、既に隣の歯が倒れてきてななめになっていました。
まずは人工歯を入れることにしましたが、年齢的にも審美的にもまだ入れ歯を入れたくないとのこと。となると次はブリッジを提案しましたが、ブリッジは被せ物をつけるために、隣り合った健康な歯を大きく削るリスクがあります。それに、隣の歯はもうすでに倒れてきているので、一度神経を抜いてかなり大きく削る必要があると説明しました。患者さんは悩まれたあげく、ブリッジの治療は気が進まないとのことでした。
次にインプラントの説明をしました。こちらは審美的に優れていますし、隣の歯を削る必要がありません。しかし、治療完了まで時間がかかることと、治療費が一気に高額になります。ほかに、矯正治療の説明をしました。しかし矯正も治療費が高額です。
もしあなたなら、どの治療をしますか?このように、たった1本歯を失っただけでも、治療計画が難しくなってしまうのです。最初はただの虫歯だったのに..…。治療が困難になってしまう前に、歯が抜けてしまったら早めに歯科での治療を受けることを提案します。もちろん、抜けてしまう前に虫歯や歯周病などの治療をするのに越したことはありません。
抜けた歯や失った歯を放置してしまうことによる、健康や美容に及ぼされる悪影響について解説してきました。このように「たかが1本」と考えていると、機能的にも審美的にも悪影響を被ってしまうだけでなく、いざ治療しようと考えても難しくなってしまうんです。たった1本の歯を放置したばかりに、シワなどに悩まされることになるのは辛いですよね。歯が抜けてしまったら、まずは早めに歯科を受診してください。できれば、抜けてしまう前に治療をするようにしましょうね。
【ライター紹介】 ちぃ先生
歯科衛生士の有資格者でありながら多くの女性メディアで活躍中のライター・編集者。現在は女性向けの美容メディアやJJなどのファッション誌などに寄稿している。コスメコンシェルジュの資格を持ち、コスメ・美容への造詣が深い。また、サッカー好きが高じてアスリートフードマイスターの資格も取得している。美容と健康に高い関心と知識を持っており、Ha・no・neでは利用者のQOLの向上を目指し、ためになる情報を発信していきたいと意気込んでいる。
・ちぃ先生の手記まとめPART1 ~美容ライター兼歯科衛生士の知恵袋~
・ちぃ先生の手記まとめPART2 ~美容テク&お口の健康講座~