世界初「AIスマートミラー」による口腔内ケア ライオン・IMJ共同開発のテクノロジー

2017.11.13 interviewHa・no・ne編集部

業界初のオーラルセルフケアAIスマートミラー、その名は「ウィル」

木枯らし1号が吹く10月某日、森下を出迎えていただいたのは、ライオン株式会社の樫田さんとIMJの田中さん。AIスマートミラーの開発に深く携わっているおふたりから、開発の経緯や機能など、さまざまなお話を伺うことができました。

ライオン株式会社とIMJ

取材のために案内された部屋に姿を現したのが、お目当ての「AIスマートミラー」。森下も実物を見ることができて感激でしたが、実際のサイズはもっと大きく、直接洗面台に取りつけられているのだとか。今回は取材ということで、10月に札幌で開催されたクリエイティブコンベンション『No Maps 2017』で展示したAIスマートミラーと同様のものをご用意してもらいました。このAIスマートミラー、名前は「ウィル」といい、喋り方と声はどことなくあの有名なキャラクター「ベイマックス」を彷彿とさせます。開発にかかった期間は2ヶ月ほど。これほどの製品を2ヶ月で開発したあたりに、IMJさんの技術力の高さがうかがえます。

ウィルとコミュニケーションを取る方法は簡単です。洗面台の前に立つとAIが反応し、それだけでお口の診断をしてもらうことができます。ポイントは鏡へのタッチなどが一切不要であること。「鏡に触れることで汚れをつけたくない人が多いので」と田中さんが語るように、細かいユーザーニーズをきちんとくみ取っている点は脱帽ですね。診断では「口臭」「虫歯」「歯周病」などのコースが用意されており、いくつかの質問に回答するとウィルがお口の状態を把握し、最適なオーラルケアを提案してくれます。テクノロジーの進歩……恐るべし。

AIスマートミラーを開発した背景には、樫田さんが危惧していたように「日本人の予防歯科に対する意識の低さ」があるようです。ライオンさんでは現在、歯科医院で行う「プロケア」と、自分自身で行う「セルフケア」によって予防歯科」を広く浸透させることに注力し、さまざまなオーラルケア製品のブランド展開を行っています。しかし、さらなる予防意識を啓発するためには、何らかの打開策が必要だと考えていたようです。「どうすれば皆が歯の予防をしてくれるのか……」をサービス面、デザイン面などからも考えた結果、開発されたのがAIスマートミラーでした。

テクノロジーの進歩

10月に札幌で開催されたクリエイティブコンベンション『No Maps 2017』でAIスマートミラーを展示したところ、老若男女問わず大きな注目を集め、200人超がウィルとのコミュニケーションを実際に体験。非常に高い評価を得られたとのこと。「さまざまな方から、これまで知らなかった予防知識を得ることができたと好評でした」と田中さんも生の声を聞けたことで自信を深めた様子でした。複雑な操作を必要とせず、ウィルの指示も大変簡潔なため、簡単に歯の予防知識を養える点は大きなポイントと言えるでしょう。

将来的にはさまざまな場所でAIスマートミラーに接することで予防歯科への意識の向上に役立てたいと話す樫田さん。

今のところはまだ家庭や商業施設に設置する予定はないが、試行錯誤を繰り返し、より性能を改善・向上していくフェーズであるとのこと。ただ、すでに日本歯科医師会との間で「AIスマートミラー」が人々の予防歯科識を向上させるためのきっかけとなれたら」という夢を語っていらっしゃり、遠くない将来、予防歯科においてウィルが大きな役割を果たしてくれるのは間違いないでしょう!

ミラーに映像を流し、磨き方をレクチャーしてくれる!

AIスマートミラー「ウィル」

せっかくなので、森下が実際にウィルの診断を体験してみることにしました。ミラーの前に腰掛け、右側に設置されたマイクに「準備完了」と声をかけると診断開始です。「自分のお口のニオイが気になってしまうことはありますか?」とウィルから聞かれ、迷わず「気になる」と回答します。すると、ウィルがTwitterで実施した口臭についてのアンケート結果をミラーに表示してくれました。

アンケートによると、自分の口臭が気になると回答した人は90%以上なのだとか。その後も「お口のケアはしていますか?」「口臭はどこから来ると思いますか?」などウィルからの質問は続きます。たとえ間違った回答をしても、優しく正解を教えてくれるウィルはとても素敵です。

ミラーに映像が流れる

また、「口臭の届く距離はどのくらいだと思いますか?」という質問では、回答後になんとミラーで実際に行った口臭距離を測る実験映像を流してくれました。続いてウィルから「普段自宅以外の場所でも歯磨きをする習慣はありますか?」と質問され、実際に歯磨きをしてみることに。歯ブラシを用意して「準備完了」とマイクに話すと、今度は効果的な磨き方の映像がミラーに流れます。

たしかに正しい歯磨きは言葉で説明されるよりも、実際に映像を見ながらの方がはるかに習得しやすいですよね。予防歯科を考えると非常に効果的だと言えそうです。

AIスマートミラーはお口の健康以外で活躍する可能性も

期待が寄せられている

現在はまだまだ試行錯誤の段階にあるAIスマートミラーですが、市場への流通には大きな期待が寄せられています。樫田さんが「お口の健康を起点に、全身の健康や身だしなみをチェックできるような拡張性の高いツールになる可能性もある」と力説し、田中さんが「今回のAIスマートミラーのように、音声などが加えられたミラーサイネージは今後ますます普及していくだろう」と展望を語ってくれたように、非常に大きな可能性を秘めていることは間違いありません。

また、近年はAI同様に製品をインターネットにつなげるIoT(Internet of Things/モノのインターネット)も急速に発展してきています。IoTをうまく活用すれば、AIスマートミラーのさらなる性能向上が期待できそうです。高齢者から子どもに至るまで、AIスマートミラーが個々に最適なオーラルケアをサポートしてくれれば、日本の予防歯科は大きく変化していくのではないでしょうか。

ライオンさんのセミナーで再びAIスマートミラーを展示!

今回取材をさせていただいたAIスマートミラーは、2017年11月19日にTOC 五反田メッセで開催される「第1回ライオンデンタルフェスティバル」でも展示が予定されています。参加予定の人はぜひウィルの診断を体験して、予防歯科の未来を感じてみてください!

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