LIFULL新規事業「おうちで歯科」設立の経緯 “口から食べるを支えるメディア”を目指して
“あらゆるLIFEを、FULLに。”の考えから生まれた「おうちで歯科」
Ha・no・ne編集部:森下(以下森下)
LIFULLさんは「LIFULL HOME´S」に代表されるように不動産・住宅の事業のイメージが強いのですが、なぜ「おうちで歯科」のサービスを開始されたのですか?
株式会社LIFULL おうちで歯科事業責任者:平原智子さん(以下平原さん)
私たちの会社は以前まで「ネクスト」という社名だったのですが、2017年4月1日から「LIFULL」へと社名が変わったことはご存知でしょうか?
森下
はい。もちろん!以前、「LIFULL HOME’S」のホームページを拝見させていただいていたのですが、名前が変わっていたことにびっくりした記憶があります(笑)。
平原さん
そうだったのですね!今の社名でもあるLIFULLには“あらゆるLIFEをFULLに。”という想いが込められているのですが、社名の変更以前より、新しい事業を生み出そうと社内の新規事業提案制度「Switch」が設けられていました。
森下
なるほど。ではこの「おうちで歯科」もその新規事業提案制度で採用された企画だったのですか?
平原さん
そうなんです!訪問サービスや出張サービスを集めたプラットホームを作りたいと考えていて、提案した企画が「おうちで歯科」という事業として結実させることができました!
森下
非常に素晴らしいことですね!「おうちで歯科」のような訪問歯科診療を扱ったサービスはまだあまりないので、まさに“あらゆるLIFEをFULLに。”を体現するサービスですね!
訪問サービスに着目したきっかけは「安心を届けたい」という想い
森下
ちなみになぜ平原さんは訪問サービスに着目したのですか?
平原さん
私は出身が九州なのですが、やっぱり都市部を離れると車がないとどこにも行けないんですよね。たとえ体が元気だったとしても移動手段がないと何もできなかったり、場合によっては生活に支障を来たしたりするケースもでてきます。今も母が九州で暮らしているのですが、最近は自身で車の運転をするのが辛くなってきたようで……そうした移動手段における悩みを解決したサービスにおいて、何かできることがないかと考えたのがきっかけです。
森下
なるほど。訪問サービスに目をつけた背景には、そういった事情があったんですね。確かに都市部では電車など他の交通手段の選択肢がありますが、地方では車がないと生活が難しいですよね。
平原さん
そうなんですよね。でも「訪問」って少し怖いイメージがありませんか?サービス提供のために、スタッフが家の中まで来ることに抵抗がある方も少なからずいるかと。
森下
たしかに全部がそうとは限らないとは思いますが、訪問販売や訪問営業などの詐欺被害が取り上げられることもありしますし、知らない人を家に上げるってちょっと怖いかもしれません。
平原さん
そうですよね。だからこそ、信頼性が高くて都市部から少し離れた地に住んでいる方にも安心を届けられるようなサービスを作りたいと考えたんです。そのため、「おうちで歯科」に掲載させていただく歯科医院様に対して入会審査を行っています。そして、その審査基準を満たした信頼できる歯科医院様だけをサイトに掲載させていただいています。
森下
ただ情報を掲載するのではなく、そういった審査が行われているのであれば、訪問サービスにおける怖いイメージを払拭でき、安心感が増しますよね!ちなみに今はどれくらいの歯科医院が掲載されているのですか?
平原さん
今は140軒ほどの歯科医院様にご登録いただいています。歯科医院様からお問い合わせをいただくこともありますが、まだ立ち上げて半年にも満たないメディアなので、1軒1軒回りながら少しずつ周知活動を進めている段階です。これからもっともっと安心できる歯科医院様の掲載を増やしていきたいと考えています!
診療訪問歯科診療に取り組む先生方の志の高さに感銘
森下
「おうちで歯科」では訪問歯科診療を行っている歯科医院に特化しているかと思いますが、そのうえで大変だったことは何かありますか?
平原さん
訪問歯科診療は社会において絶対的に必要なものであるとは思いますが、その反面、訪問歯科診療を行っている歯科医院様の数は非常に少ないということですね。
森下
たしかに訪問歯科診療をメインで行っている歯科医院も少ないですし、絶対数はあまり多くないですよね。
平原さん
そうなんです。訪問して診療を行うことは通常の診療に比べて大変ですし、移動などで労力がかかります。そのため、すべての歯科医院で実施されているわけではなく、訪問歯科診療に積極的ではない歯科医院様も多いというのが現状です。また、訪問歯科診療を行っていたとしても周知していないケースもあるので、ご協力していただける歯科医院様を集めることは簡単ではありませんね。
森下
やっぱり訪問ともなると、移動の時間もかかりますし器具を運んだり、慣れていない環境で診療したりすることで余計にエネルギーが必要になりますよね。
平原さん
ただ、訪問歯科診療に取り組んでいる先生方は、非常に高い志を持っている方ばかりなんです!「地域のために、困っている方のために」という社会貢献にかける想いがある方ばかりで。そうした先生方と知り合うことで私もかなり勇気づけられました。だからこそこの事業を成功させて、より多くの方のサポートをしていけたらと思っています。
森下
ものすごく熱いですね!平原さんや訪問歯科に携わる先生方の情熱によって、きっとより社会から必要とされる事業になるはずです。
一般的な認知度が低い点も浸透しない一因
平原さん
訪問歯科診療を行っている歯科医院数が少ないその他の要因としては、一般の認知度が低いことも挙げられます。私も「おうちで歯科」の事業を始めるまでは、訪問歯科診療というサービスがあることを知りませんでした。
森下
知られていなければ求められることもないですし、求められなければ訪問歯科を実施しようとする歯科医院も増えにくいかもしれませんね。
平原さん
はい、そうなんです。訪問歯科診療のサービス自体が充実していても、それを知ってもらう需要と供給をマッチングさせるためのサービスが不足してしまっては意味がありません。「おうちで歯科」を通してまずは訪問歯科を知っていただいて、そのうえで自身に必要なサービスであるかを判断してもらえる環境を作り出すことができればと考えています。
森下
「おうちで歯科」を通して関心が高まれば、訪問歯科診療を始める歯科医院も増えるかもしれませんね!
平原さん
訪問歯科診療は、歯科医院から半径16km以内の範囲内でないと行うことができませんが、その限定されたエリアで訪問歯科を求める方が、訪問歯科診療を行っている歯科医院様を探すことは簡単ではありません。そのため、両者をつなぐ架け橋的な存在になっていければと考えています。
まずはすべての食べ物の入り口である口の健康を
森下
事業としてまだスタートを切ったばかりですが、「おうちで歯科」を今後どのように展開していきたいと考えていますか?
平原さん
今は訪問歯科の情報掲載などがメインになっていますが、おうちで歯科は“口から食べるを支える”をコンセプトにしています。私も多くの先生方と関わることで口の健康を維持することの大切さを学びました。お口はすべての食べ物の入り口ですからね。そのため、歯科という分野を深堀りするのではなく、「食べるを支える」という切り口で、他職種の方々との連携も深めていきたいと思います。
森下
歯科だけにとどまらずに、もっと生活に根差した幅広い広くサポートを目指していく予定なんですね!
平原さん
はい!歯科にとどまらない口腔ケアや食に関しても展開ができればと考えています。歯だけが健康でも咀嚼(そしゃく)するために必要な筋肉や舌などが衰えてしまっては、食べることが困難になります。また、口は栄養が入るところでもありますが、それと同時に菌が入る場所でもあります。病気の治療などに比べると口腔ケアの重要性はあまり気にされてないかもしれませんが、非常に重要なことです。そうしたこともより伝えていきたいですね。
森下
たしかに、歯をキレイな状態に保つことはもちろん大切ですけど、もっと総合的に健康について考えていかなければなりませんね。
平原さん
そうですね。だからこそ「おうちで歯科」では“口から食べるを支える”ために何が必要なのか、そして何を食べればより健康的な生活を送ることができるのかを考えた多種連携を深めていきたいと考えています。「おうちで歯科」を利用してくれる方たちのQOL(quality of life/生活の質)を高めることができるメディアにしていきたいですね。
まずは「知ってもらうこと」。そして生活に根差したメディアに
森下
最後に「おうちで歯科」の今後の目標をお聞かせください!
平原さん
そうですね……まずは多くの方に「おうちで歯科」、そして訪問歯科診療について知ってもらいたいですね。そしてゆくゆくは訪問歯科診療を調べようと思った際に「とりあえずおうちで歯科を見てみよう!」となるような生活に根差したメディアを目指していきたいです。
森下
素晴らしいと思います!まさに“LIFEをFULLに。”するためのメディアですね!
平原さん
ありがとうございます。また診療を求める方だけでなく歯科医院様のサポートもできればと考えています。志が高くて優しい方が多いので、先生方の想いの実現の手助けをしていきたいです。先生方や患者さんに寄り添ったメディアになれるよう頑張ります。
森下
診療を求める方にも診療を行う歯科医院にも、どちらにもメリットがあるサービスを目指しているんですね。
平原さん
まだ始めて数ヶ月のメディアですが、診療を求める人が何に困っているのか、また歯科医院様が何に困っているのかの双方をしっかりと把握したうえで、今後のサービスを展開していけたらと考えています。