【歯の白と黒の歴史トリビア第8回】歯の矯正は古代より存在した!?

2018.05.01 healthHa・no・ne編集部M

矯正治療の発想は古代より存在した!

美しい景色

矯正治療の起源は古く、古代ローマ時代(紀元前753年~476年)にまで遡ると言われています。実際、イタリアでは矯正器具を装着したエトルリア人(古代ローマに吸収された先住民族)の少女の頭蓋骨が発見されているのだとか。頭蓋骨に装着されていた矯正器具は、小臼歯から反対側の小臼歯まで連なった金属製のバンドであり、下顎の矯正をするために装着されたのではと言われています。

エトルリアや古代ローマは、非常に発達した裕福な文明を誇っていたされており、洗練された衣服を身にまとうなど、美意識も非常に高かったようです。そんな美意識は歯にも向けられていたようで、金森誠也氏が監修した『一日古代ローマ人』という書籍によると、当時の人たちは歯を少しでも白くするため「ポルトガル人の尿」を歯磨き粉として使用していたのだとか。

実際、尿素は歯の美白に効果があるとされ、現代もホワイトニングなどに使用されていますが、当時からそれを理解していたのだとしたら驚きです。また、ポルトガル人の尿以外にも、口臭を消すための香料ドロップを使用するなど、古代ローマ人はお口のケアに余念がない民族でした。そんな彼らが自分たちの歯並びを綺麗にするため、矯正治療を行っていたのは至極当然なことと言えるでしょう。

矯正治療に多大な貢献を果たした「歯科矯正学の父」

矯正器具まわりの掃除

現在も行われているワイヤーを使った矯正治療の考えが誕生したのは、フランスの歯科医師ピエール・フォシャールが1728年に執筆した『歯科外科医、もしくは歯の概論』がきっかけでした。この著書の中では、矯正方法としてアーチ状の金属板を矯正装置として用いるなどの記述があり、その後の矯正治療に大きな影響を与えたとされています。

このように、歯科矯正学は欧州を中心に進歩していましたが、19世紀ごろになると矯正治療の中心はアメリカへと移っていきます。理由は、度重なる戦争。7年戦争やナポレオン戦争、第一次世界大戦など、欧州では常にどこかで戦争が繰り広げられている状況でした。それによって各国とも疲弊していき、歯科矯正学の発展どころではなくなっていったのです。

そんな中、欧州に比べ戦火に晒されることのないアメリカでは、歯科医療がどんどん発展していきます。とりわけ大きかったのが、歯科矯正学を確立させ、世界最初の矯正歯科専門医となったエドワード・アングルの存在でしょう。アングルは矯正が歯並びではなく嚙み合わせを治すものであるという考えにたどりつき、矯正治療を歯科の中で独立した専門分野として扱うなどした功績から、現在でも「矯正歯学の父」といわれています。

そんな彼が科学的な根拠に基づき、矯正治療の研究を進めた結果、生み出したのが歯列に金属のベルトを巻き、その上からブラケットを溶接する矯正方法「エッジワイズ法」です。現在の矯正治療でもっともポピュラーといってもいいマルチブラケット装置は、このエッジワイズ法を基礎としています。歴史を振り返ってみると、今日の歯科矯正の発展にアングルが果たした役割は非常に大きなものでした。現在西洋の人が皆美しい歯並びを手にしているのも、彼のおかげかもしれませんね。

あらゆる歯科グッズがそろっている現在だからこそ、万全のケアを!

マウスピースを持つ女性

歯並びを動かして綺麗にし、見た目を美しくするという矯正治療の考えは、数千年前から変わっていません。しかし、現在は昔と違い、裏側矯正やマウスピース矯正など、さまざまな治療法を選択することができます。せっかく現代に生まれた以上、費用に余裕があるのであれば矯正治療で美しい歯並びを手に入れたいところですね!

今回の「歯の白と黒の歴史トリビア」はここまで! 次回の更新をお楽しみに!

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【ライター紹介】 M
[[file4]]「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。

Twitter:ムートー
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