日本初!マウスピース矯正研修講師 穴沢有沙さんの“笑顔拡散力”の秘訣

2019.02.08 interviewHa・no・ne編集部

マウスピース矯正研修講師が語る研修のポイント

「患者さんは歯科医師に本音をなかなか言いづらい」

穴沢さん

Ha・no・ne編集部 リン(以下リン)
今回はマウスピース矯正研修講師としての穴沢さんにインタビューさせていただきます。さっそくですが、歯科衛生士として臨床の現場に立ちながら、日本初のマウスピース矯正研修講師としても活動するようになったきっかけを教えてください。

株式会社Blanche代表兼マウスピース矯正研修講師 穴沢有沙さん(以下穴沢さん)
32歳の頃に勤めていた医療法人を退職することを決めました。その時、私にインビザラインを叩き込んでくれた先生から「穴沢さんにしかできないことがあるんだから、いろいろとチャレンジしてみたら?」と言われたことが独立しようと思ったきっかけです。私の武器と言えるのは「マウスピース矯正の魅力を伝えること」だったので、実験的に出張研修をやり始めた感じですね。

マウスピース矯正の分野は比較的新しいので、歯科医師向けの勉強会はあっても、コデンタルが学ぶ場はほとんどありません。歯学部や歯科衛生士学校でも学ぶ機会がないのが現状です。現場で困っているスタッフさんに教えてあげることで、やりがいを持ってイキイキと働いてもらえたらと思っています。

リン
穴沢さんからはスタッフさんへの思いやりの気持ちがすごく伝わってきます。穴沢さんが思うコデンタルの役割は何だと考えていますか?

穴沢さん
私が研修でよく伝えているのは、「患者さんは本心を歯科医師には言わない」ということです。たとえばマウスピース矯正は毎日20時間上装着をしなければならないのですが、全員が365日毎日できる、というわけではないんです。年末年始は飲み会も増えるでしょうし、旅行で食べ歩きして歯磨きがあまりできなかったなんてことはよくあるはずです。そうした本音を先生には言えないんですよね。「怒られるかも」と思ってしまって(笑)。

そうした時にキーになるのが歯科助手や受付、トリートメントコーディネーターなどの方々です。なぜなら彼女たちは患者さんと同じ目線で話ができるので、本音を言いやすいんですよね。彼女たちが引き出した患者さんの ‶本当の声“ は治療に役立てることができます。その役割は非常に大きいと考えています。

リン
それはある意味、歯科医師にはできないことですよね。ただ、一般的な歯科医院では先生の言うことは絶対であるケースが多いので、なかなかそういう歯科衛生士や歯科助手らコデンタルの声は届きにくいですよね。

穴沢さん
それは医院によるようです。先生がコデンタルの存在を重要だと思っている場合は彼女たちをきちんと立てるんですよ。そういう医院の場合は彼女たちの発言権もありますし、イキイキと自分たちでトラブルに対して改善点を見つけてPDCAサイクルを回すことができるんですよね。その反面、スタッフをいわゆる“コマ”と考えている医院だと発言権はないですし、正論を言っても耳を傾けてくれないケースもあります。

医院側に多くのメリットがある出張研修スタイルの誕生

出張研修スタイル

リン
穴沢さんは全国各地の医院へ出張研修を行っているようですが、自ら出向くスタイルを貫いている理由を教えてください。

穴沢さん
ほぼ出張研修ですね。日本国内であればどこでも足を運びます!この出張研修のスタイルを行っているのは自分の実体験に基づいているんです。私も歯科衛生士としてセミナーに参加しますが、そこで得た情報を医院に持ち帰ってひとりで実践するのはちょっと難しい面があります。たとえば、歯ブラシ指導について学んだとしても、話を直接聞いていない先生やスタッフにその良さを伝えるためには自分自身のプレゼンテーション能力が高くないと伝わりません。なかなかひとりで伝えようとしてもうまくいかず、受け入れてもらえないこともありました。

どんなに良い学びがあってもうまく活かせない。どうしたらいいのだろう。そんなことを医療法人に勤めている際に感じることが多々ありました。そこで辿り着いた1つの結論が、ひとりで学びに行くと大変なので、「私が直接医院に伺ってスタッフ全員に話を聞いてもらえば良い」というものです!そうすれば全員同じ知識レベルになるし、共通認識があれば自分たちの医院でやることとやらないことをすぐに決めることもできます。そうすると行動に移すのがすごく早いんです。

リン
なるほど!確かにその場にいる全員が納得すれば話が早いですよね。ただ、医院全体向けの研修は、他にはなかなかないですよね。それをやると決めた時の行動力はさすがの一言ですよね。

穴沢さん
そうですか?全然意識していなかったです!今、言われて初めて気づいたくらいですよ(笑)。出張研修は歯科医院のメリットの方が大きいと考えています。外部研修の場合、医院がスタッフの研修費以外に交通費も補助します。たとえば、スタッフ3人を研修に行かせようとすると、3人分の参加費や交通費がかかりますよね。往復の時間も取られますし、1日がかりになってしまうことも多々あります。

でも私が出向けば、私の出張費はかかりますが、ひとり分ですよね。たとえば午前中に3時間研修を行ったとしても、午後から診療ができます。すごく効率的で歯科医院さんにとってメリットが多いと思います。

リン
確かに!だから医院側からしても「穴沢さん来てください!」となるんですね。

穴沢さん
そうですね!「自分たちが行くより来てほしい」という声は多いですね!

自身もマウスピース矯正を体験したから見える視点

研修の際に先生やスタッフに伝えていること

研修内容

リン
研修は歯科医師だけでなく、歯科衛生士らコデンタルも受けるんですよね?どんなことを伝えることを意識していますか?

穴沢さん
多くの歯科医師はカウンセリングも施術も患者さんへの説明も全部自分でやらなければならないと思っているんですよね。なので「スタッフさんにはこれだけの役割があって、その存在が重要ですよ」と伝えています。そうすると「自分のスタッフはいろいろなことができる」という気づきになります。一方のスタッフさんは、先生主導でやっていた治療も自分が主人公になってできるようになるんです。役割を理解することで、自主的に楽しんで仕事を取り組むようになるなど変化を実感しています。

そして研修の中で気をつけているのは、“第三者視点でのメッセージ”を送ることです。先生とスタッフさんの当事者同士だとうまくコミュニケーションが取れないことがよくあります。そこで第三者である私が「先生は治療計画を立てたり経営について考えたりするのでとても大変」ということや「スタッフさんのことを考えて出張研修の機会を提供してくださっている」という話をするんです。そうするとスタッフさんたちにすごく響くんですよね。

逆に「スタッフさんたちがこんな思いで仕事をしているけど、それがうまく発揮できていない」とか「こんなこともできるからもっと仕事を任せても大丈夫」と伝えると、先生もよりスタッフのことを理解してくださるんですよね!

リン
確かに穴沢さんにそう言ってもらえると、先生とスタッフさんの両者にそれぞれ別の気づきがありそうですね。ちなみに研修は1回ですべてが完結するんですか?

穴沢さん
1回、3回、8回と必要な内容に合わせて選べるカリキュラムを組んでいます。以前までは希望を聞いて全部カスタマイズで内容を考えていましたが、それだとお互い大変ですし、「パッケージはないの?」という声もいただきました。そうしたご意見を参考にある程度パッケージ化しました。

1回の研修は簡単なインビザラインの説明や患者さんの気持ちについての話が中心です。3回の研修はカウンセリングの方法や成約率向上の方法、トラブル対応についても指導します。8回については、今までの経験やご希望からすべて詰まったフルコースです。私のノウハウを全部お伝えしています。

リン
8回も研修を受けたら、穴沢さんのノウハウをたくさん吸収できそうですね!ちなみに2018年の7月に株式会社Blancheを起業されましたが、なぜ独立に至ったのでしょうか?

穴沢さん
おかげさまで全国各地から研修の依頼をいただいていて、そろそろひとりでは回らなくなってきたのが大きな要因です。たとえば、ある月のスケジュールが鹿児島→熊本→仙台→金沢→富山→滋賀→東京みたいな感じで日本を転々と移動しているので、毎日私は今どこにいるんだろうと思う日々をすごしています(笑)。こんな感じだとすぐに希望にお応えできないケースも出てくると思って、早めに後任育成をしたいと考えるようになりました。それが会社を設立したきっかけです。

また、以前までは個人事業主としてやっていたのですが、ご依頼される先生の立場で考えた時に株式会社の方が安心感が大きいと思いました。つまりブランディングの面もありましたね!

穴沢さんが考えるマウスピース矯正の利点とは

マウスピース矯正の利点

リン
矯正装置についても話を聞きたいと思います!穴沢さんが推奨しているマウスピース矯正はワイヤーがあるマルチブラケット矯正よりも治療しやすい面があるかと思いますが、実際はどのようにお考えですか?

穴沢さん
従来のマルチブラケット矯正だとどうしても矯正装置が目立ってしまいますよね。矯正治療が嫌だなと思っていた方も、「マウスピース矯正だったらやりたい」という方はたくさんいます。しかもそれが20~30代の若い女性だけではないんですよ。50~60代でも希望される方は結構います。

リン
それは意外ですね。理由はありますか?

穴沢さん
マルチブラケット矯正だとワイヤーが目立つので、50~60代になって矯正治療しているのが周囲に気づかれるとメンタル的に辛い面があるようです。また、加齢や歯周病が原因で歯がグラグラしてきている中で、矯正装置を装着していると本当にケアが大変なんですよ。でもマウスピース矯正なら取り外しができるので歯磨きがしやすいんです。

リン
ちなみに穴沢さん自身もマウスピース矯正を行っているとのことですが、治療を開始した理由とそれがどう仕事に活かされているのかをお聞かせください。

穴沢さん
そうですね!私の場合は5年前に始めて、1年半くらいで完了し、保定期間に入っていましたが、また最近になってインビザラインを始めました。再度始めたのは、「患者さんの気持ちに寄り添いたい」という理由が大きいですね。インビザラインは1日22時間以上のマウスピースの装着を指導するのですが、業務的な感じで無機質に「22時間以上装着してください」と言われてもつらいですよね。

だからこそ私自身が体現して、「こういう風にすれば長くつけていられるよ」「こうすればトラブルを回避できるよ」など実体験を患者さんに伝えています。するとすごく信頼してくださるんです。ふとしたことで相談してくれたり、「先生には言えないけど、穴沢さんには……」みたいなことが結構あったりします。そういう経験がすごく嬉しくて!

リン
確かにインビザラインで実際にマウスピース矯正をしている人の話は信ぴょう性がありますしね。だから穴沢さんの話には自然と多くの人が耳を傾けるのですね。

ユーザーのリアルな声が研修に活きる

SNSでの“#インビザ女子”の活用で広がる人とのつながり

#インビザ女子

リン
穴沢さんはご自身を「インビザ女子」と呼んでいますが、インビザ女子会の開催やSNSでインビザ女子の生の声の掲載もしていますが、どんな目的で始めたのでしょうか?

穴沢さん
Instagramで「#インビザ女子」「#矯正女子」を検索してみると、自分の治療について発信している方々の投稿を多く見かけます。「私、こんな感じで治療しています」とか。「治療がこんな感じで辛かったです」とか。そうした声は治療にも活かせることなので、実際に聞いてみたいなと思ったのがきっかけです。

専門家としてインビザラインとはこういうものだと一方的に話したいわけではないんです。「どうして矯正治療を始めたのか?」「インビザラインをやってみてどうか?」「病院選びは何をポイントにしたか?」など顔を合わせて生の声を聞いてみたい!というのが開催の理由です。SNSにさえ載せにくい情報に直接耳を傾けることができる貴重な機会となります。それを研修の中でアウトプットすると、現場のスタッフさんにも新鮮な情報になってすごく喜ばれるんです。

リン
それこそ医院にいるだけではわからない情報ですよね。

穴沢さん
もうひとつの理由としてインビザ女子同士の交流の場を作る意味合いもあります。インビザラインをしている方々は裏アカウントを作って治療の情報を発信することが多いのですが、“リアルな矯正友だち”もほしいんですね。お互いインビザラインをやっている人たちが顔を合わせることで悩み相談ができたり、マシンガントークが止まらなくなったり(笑)。共感できる仲間って大切だと思います。

リン
治療の悩みを打ち明けられる人はなかなかいないですよね。しかも矯正治療は特にですよね。ちなみにこれまで歯科衛生士の方が情報発信をする動き自体があまりなかったと思いますが、SNSに力を入れている理由についても教えてください。

穴沢さん
2つの理由があります。1つは時代の流れがSNSなので、気軽に情報を見てもらうためにもInstagramが一番使いやすいと感じています。仕事関連に関してはFacebookでの投稿に力を入れていますね。もう1つはお金をかけずにマーケティングできる点が大きいですね。まずはSNSで「どれくらいできるかな?」と今、チャレンジしているところです。

リン
実際にSNSからの反響は大きいのでしょうか?

穴沢さん
驚くくらいあります!InstagramやFacebook単体の発信から仕事につながることは少ないのですが、たとえば、研修先の先生がタグづけされている投稿を他の先生が見て、「このマウスピース矯正研修講師って誰?」といった具合で興味を持っていただくことが多いようです。どのSNSでもよく見かけるというのは非常に重要だと思うんですよ。広告を打っていないのにもかかわらず、見てくださる方はどんどん増えていますね。

唯一無二のマウスピース矯正研修講師が考える今後のビジョン

マウスピース矯正研修講師

リン
会社経営も順調そうですが、矯正女子向けのデンタルグッズ販売も始める予定だと伺いました。なぜそうした取り組みをしようとお考えなのでしょうか?

穴沢さん
なんと言っても「あると便利だから」です。矯正治療中、快適に過ごすためには必須だと思っています。ロット数や金額的な問題もあり、ひとりでは難しく実はまだ手がつけられていないんです。でもやりたいと発信し続けることで一緒の想いの方に出逢えるかも!と信じています。その意味からも株式会社化したかったんです。

リン
デンタルグッズにこだわる理由についても教えてください。

穴沢さん
医療法人にいた時に指導してくれた先生が、矯正治療を始められた方に対してポーチにブラシとかフロスを入れてプレゼントする企画をしていたんです。それをプレゼントされた患者さんは嬉しいじゃないですか。実際に矯正治療を始めてみて思うのが、「どこで歯磨きしよう」とか、「いざ歯磨きをしたいときに持っていない」とかでケアをしたい時に壁にぶつかることがあるんですよね。

私もデンタルグッズを持ち歩いています。折り畳みのコップや手鏡、ウエットティッシュを入れていますね。「矯正装置を外す前に手を拭きたい」などインビザ女子の「あったらいいな」を詰めこみたいと思っています。

デンタルグッズ

ケアに目を向けてもらうためにも基本知識を身につけてもらうためにも、まず基本のグッズを提供したいと思いました。グッズを持って出かけるのを習慣化してもらいたいと思っています。

リン
なるほど。そうした日々のケアは大切ですよね!Ha・no・neでも女性の笑顔を応援しているのですが、穴沢さんは“笑顔のパワー”についてどうお考えですか?

穴沢さん
研修の中でも笑顔が大事という講義をします。口だけ笑っていても目が笑っていないと気持ちが伝わりませんよね。口だけで笑うのではなく、顔全体で笑う。目の周りの筋肉を使って顔全体で伝えるようにすることで、人から興味をもらえる、人から好感を持ってもらえるようになる気がします!

リン
本日は非常に貴重な話をありがとうございました。最後に今後のビジョンについても教えてください。

穴沢さん
会社を大きくしたいですね。会社にする前は自分ひとりでも大丈夫と思っていましたが、多くの需要にお応えするためには組織として充実することが必要だと感じてきました。その人なりの武器を持った研修講師を育成して、周囲に憧れられる存在になってもらうのが今の夢ですね!

インタビュー中もずっと笑顔で、取材陣に常に気を配ってくれた穴沢さん。話を聞いて、彼女は他の誰も真似することができない、唯一無二のマウスピース矯正研修講師であることがよくわかりました。ただ、すでに穴沢さんが見据えるのは次なるステージ。あくまで自分がスポットライトを浴び続けるのではなく、後任を育成してマウスピース矯正の良さをさらに浸透させたいと考えています。穴沢さんが信頼できる後任を育てあげた暁には、彼女がモットーとする素敵な笑顔がより多くの歯科医療の現場に届いていることでしょう。

▼取材協力

株式会社Blanche
ホームページ:http://dh-blanche.com/

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