【歯の白と黒の歴史トリビア第6回】実はあの偉人も虫歯だった!? Part2
泣く子も黙る新選組隊長・永倉新八も虫歯には勝てず……
新選組2番隊隊長・永倉新八。江戸の試衛館時代より近藤勇や土方歳三と行動を共にし、新選組結成後は数多くの任務を遂行するなど、組にとって欠かせない人物となりました。華のある土方歳三や沖田総司に比べるとやや地味な印象がありますが、永倉の剣の腕前は強者ぞろいの新選組にあって最強との呼び声高く、あの有名な「池田屋事件(新選組が討幕派の重鎮を多数討ち取った事件)」では、他の隊士が離脱する中、最後まで戦い抜いた人物として知られています。
また、新選組の地位が上がり、近藤勇に驕りが見られるようになると新選組の保護者的立場だった会津藩の藩主・松平容保に、同じ隊士であった斎藤一や原田左之助らと共に非行五カ条(近藤、土方の行いを非難する内容だったとされる)を提出。同士であっても、間違っていると感じれば正そうと行動する、永倉は非常に気骨ある人物だったと言えるでしょう。
そんなすごく忍耐強かった永倉新八も、実は虫歯には勝てませんでした。他の新選組隊士の多くが戦死や粛清によって20~30代で命を落とす中、永倉は激動の幕末を生き残ることができましたが、77歳のときに骨膜炎と敗血症によって死去したと言われています。この骨膜炎と敗血症の原因となったのが虫歯です。現代においても、虫歯を放置していると敗血症によって死に至るケースはありますが、数多くの死線を潜り抜けてきた剣豪も虫歯には勝てなかったのです。
『南総里見八犬伝』の作者滝沢馬琴は虫歯で歯がなかった!?
映画やドラマでこれまで何度も映像化されている江戸時代の長編読本『南総里見八犬伝』。日本を代表する古典作品として知られ、巧みな物語編成や個性豊かな登場人物、史実を参考にしながら随所にフィクションを入れ込む技術などは、とても数百年前に作られた作品とは思えないほど完成度の高い作品として伝え継がれています。
作者である滝沢馬琴はこの他に『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』を始め、非常に多くの読本を残しており、間違いなく江戸時代を代表する作家と言えるでしょう。しかし、そんな滝沢馬琴も虫歯には苦しめられていました。滝沢馬琴は日々の出来事を記した『馬琴日記』を残しており、その日記の中には61歳ですべての歯が抜けたこと、大金を払い入れ歯を購入したこと、入れ歯を入れ歯師に修理してもらったことなどが記されています。
滝沢馬琴は甘いもの好きで有名でした。彼が小津桂窓という商人に宛てた手紙の中に「「木挽丁橋前の汁粉もち、流行のよし。その品名目、十二ヶ月ニて十二種あり。十二わん不残たべ候へバ、代七百文のよし」という記述があり、相当な量の汁粉を食べていることがわかります。この連載でも何度か触れていますが、江戸時代当時は現在に比べ歯磨きの文化が薄かったため、馬琴のように甘いもの好きであれば虫歯になる運命は避けられなかったのかもしれません。
どんな人物でも、しっかりお口のケアをしなければ虫歯になる
新選組の隊長として無類の強さを誇った永倉新八も、読本家として財を成しお金には困っていなかった滝沢馬琴も、虫歯に悩まされ、永倉に至ってはそれが死の原因にもなっています。どんな人物であっても、お口のケアをしなければ虫歯になってしまうのがこの2人を見てよくわかるのはないでしょうか。
反対にどんな人物であっても、お口のケアをきちんとしていれば虫歯は防げるということ。予防をしようと思えば、セルフケアや歯科医院でのプロケアによって健康を守れる可能性が高まった現代に生まれた以上、永倉新八や滝沢馬琴と同じようなお口の状態にならないよう、ケアを怠らずに行っていきましょう。今回の「歯の白と黒の歴史トリビア」はここまで!次回の更新をお楽しみに!
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【ライター紹介】 M
「文章を書く仕事がしたい」という想いから、ライター業を志したToo shy shy boy。「人生を無駄遣いしている」と揶揄されるほど、引きこもりがちで内気な性格からは想像できない“執筆への情熱”を併せ持ち、編集プロダクションなどを経てWebライターの職に就く。Ha・no・ne編集部では歴史好きな側面を活かし、歯と歴史を絡めた「歯の白と黒の歴史トリビア」を連載中。趣味は欧州サッカーや海外ドラマを見ることであり、土日は昼夜逆転の生活を送ることもしばしば。
Twitter:ムートー
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